Ossan's Oblige "オッサンズ・オブリージュ"

文化とは次世代に向けた記録であり、愛の集積物である。

世界の地域ブロック化(EU化)に思うこと

各ブロックの首都機能をBRICS諸国が担うようになる。

「ブラジル」「ロシア」「インド」「中国」「南アフリカ共和国

BRICS諸国が所属する全ての地域に、地域統合の動きが確認できます。


・ブラジルの「ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体」
・ロシアの「ユーラシア経済連合」
・インドの「南アジア地域協力連合」
・中国の「東アジア地域包括的経済連合」
南アフリカ共和国の「アフリカ連合

これらの地域ブロックは、地域、民族、歴史背景などを共有する国家の集合体です。

欧州のEUをモデルケースとし、同様の統合を南米、アフリカ、東欧、インド圏、アジア圏で行なっていくコンセプトです。

これらの地域ブロックを主導することもまた、BRICSの役割になるでしょう。

なぜなら、それぞれが所属するブロックの中で、域内国最大のGDPを持つためです。

さらに、最大のGDPだけでなく、最大の金融都市を備えている点でも共通します。

例えば、ブラジルにはサンパウロ、ロシアにはモスクワ、インドにはムンバイ、南アフリカ共和国にはヨハネスブルクというように、

BRICSの国々は、それぞれが所属するブロックの中で最大の金融都市を抱えています。

中国ブロックの場合、東アジア最大の金融センターは東京であって上海ではありません。

しかし、現時点でもほぼ同レベルであり、大陸に位置する上海は地理的にも利があります。

金融市場の対外解放の動きも追い風となり、

アジア金融の中心地は、今後、東京から上海に移動していく可能性が高いでしょう。


BRICS諸国が、各地域ブロックにおける経済、金融の中心地を抱えている現実は無視できません。

東京、大阪が日本の中心地であるのは、経済・金融の活動を行う機能が最も優れているためです。

それと同じように、地域最大の経済・金融機能を担うBRICS諸国が、各地域ブロックの首都機能を担うことになるのは、おそらく間違い無いでしょう。



今起きているのは、国境の拡大

EUに加盟する国々は、元々は別々の国家でしたが、今やEUに所属する「一都市」になり下がりました。

例えば、フランスのパリ証券取引所、オランダのアムステルダム証券取引所、ベルギーのブリュッセル証券取引所ポルトガルリスボン証券取引所

これらは、元は独立した別々の証券会社だったのです。

しかし現在では、ユーロネクストの下での統合が進み、

ユーロネクスト・パリ」、「ユーロネクストアムステルダム」、「ユーロネクストブリュッセル」、「ユーロネクストリスボン」と名称も変わっています。

元は独立していた各国の金融市場が、EUの下に統合しているのです。

金融は、社会の最上位に位置します。なぜなら経済主体への資金調達を担う、経済活動の源泉であるためです。

したがって、統合の動きは当然のように政治、社会の領域にも及ぼされています。

EUの域内国では、政策にもEUの影響力が強まり、国家は事実上、決定権を喪失しています。

雇用制度も見直され、域内国の住人には、平等に一様の就労権が付与されるようになっています。

それまで別々の民族や宗教観を持っていた人々を同化させているのです。

こうしたEUで見られる平準化の試みは、今後、模範例として各ブロックで再現されることになるでしょう。


地域ブロックにおいて、かつての国家は、包括的なブロックの1都市に変貌します。

これまで適用されていた国境はなくなり、ブロックが新しい障壁の役割を果たすようになります。

それまで外国同士で展開された国際競争は、「同じ域内国」として、競争から協力の関係に移行するのです。

その形成過程は、既に法則化されています。

つまり、始めに自由貿易、続いて経済協力(サプライチェーンの構築)、域内移動・雇用の自由、そして共通通貨の導入、最後に政策協調というステップを踏みます。

これらは、外国人同士を同じブロックの構成員としてまとめるステップですから、国境の拡大とまとめることができるでしょう。

こう考えれば直感的に理解できます。

現在の日本が採用する「中央政府都道府県の関係」の更にもう一つ上に、新しく「地域ブロック」を設置するのです。

つまり、各国政府を地域統合の下位秩序に置くことで、国家が都道府県のような立場に降格するわけです。

現在の日本でも、様々な都道府県の人間がごちゃ混ぜになっていますが、これからは同じことが国家同士の間で起きていくのです。

地域統合を踏まえるなら、中国の覇権もあり得る。


これまで私は、中国の覇権を否定してきました。

しかし、それは中国一国で試みた場合の予測に過ぎません。

国家対国家の視点を地域統合に移してみると、中国ブロックの覇権は決してデタラメな話ではなくなります。

もちろん、他ブロックも統合を進め、対抗してくるでしょう。

しかし、それでも世界の覇権は、現状の米国から「東アジア地域包括的経済連携」に移行する可能性が高いのではないか、と私は予想します。

ただ、それが短期に終わるか1世紀以上続くかは、別問題ですが。

理由を説明します。

まず、国家が覇権を握るために必要な資質を、「軍事力」「研究力」「経済力」と定義します。

国家が優位を作り、それを守るには「軍事力」が欠かせません。

そして「軍事力」は、科学技術を形成する「研究力」なしには、持ち得ません。

また「研究力」を支える研究者の維持には、「経済力」が必要です。

さらに、「経済力」が弱く軍事費も捻出できない国では、「軍事力」も脆弱にならざるをえません。

このように3つのパラメータは、相補的な関係を持つのです。

例えば、「実はロシアは、世界最強の軍事力を持つ国だ」などと語る人がいますが、経済力の脆弱なロシアが最強の軍事力を持つことは有りえません。

なぜなら、研究者が高所得を求めて国外に流出してしまうからです。

さらに優秀な兵器を生み出せても、軍事負担に耐えられないと維持できません。したがって、ロシア最強説は全くのデタラメだと分かります。

つまり、「軍事力」、「研究力」、「経済力」は、「どれかが突出しているが他は劣っている」といった状態は有り得ず、しばしば平均化されます。

すわなち、「この3つのパラメータを最高水準で揃える国」が最強国家の指標となるでしょう。



これまで私が中国の覇権を「ありえないもの」と判断したのは、中国には、高度な「研究力」も「軍事力」もないためでした。

要するに、中国は軍事的に弱い国なのです。

まず、そもそも「研究力」がないので、強い「軍事力」が育ちません。

いつになっても中国から新しい技術は生まれておらず、「世界を揺るがす新発明」はいつも日欧米から生まれます。

一時期、世界を震撼させた「世界の工場」化というのも、中国という大きなモールで日欧米の外資系企業に製造を行わせたに過ぎず、

そこから技術を盗んだ国有企業に成長を担わせたのでした。

つまり技術も企業も借り物の中国は、外資なしには、生存できない国なのです。

研究力がないから、「軍事力」も「経済力」も付いてきません。


しかしここにきて時代が変わりつつあります。

長年の市場開放の結果、中国は世界第二位の経済力を獲得しました。

「軍事力」、「研究力」、「経済力」のパラメータは平均化されるので、今後は「軍事力」と「研究力」が「膨張した経済力」に接近することが考えられます。

当然、各国は、自国の「研究力」を担う人材が青田買いされる未来を懸念すべきでしょう。

それを後押しするのが、地域統合なのです。

先述の通り、地域ブロックの社会システムは、人材の移動と雇用を自由化します。

ブロックの域内に属する国であれば、従来の規制なしに好きな国で働けるようになるのです。

そうなれば、いち労働者に過ぎない研究者でさえも、最も高い給与を出してくれる国で働きたいと考えるようになります。

こうして最も経済力の高い国の下に、地域の優秀な頭脳が集まります。

優秀な頭脳が集まれば、当然優れた研究成果、イノベーションが生まれる事になるでしょう。

中国が所属するアジアブロックで見た場合、なんと日本とインドが含まれているのです。

これらの二国は、世界最高水準の研究者を抱えていますから、こうした優秀な研究者が協力すれば「世界を揺るがす新発明」が誕生しかねません。

そして、その成果はお金を出した「中国の仕事」になるのです。

イノベーションの開発担当者がインド人や日本人であっても、それは中国発の技術である「メイド・イン・チャイナ」として扱われるのです。

こうした傾向は、既に経済の面で顕著です。

今後は、研究や軍事の面で同じような光景が見られるようになるのです。

もちろん、言語、文化の違いといった障壁も残るでしょう。

しかし、経済にとって重要なことは大抵テレビ番組などで社会常識化され、定着化のプロセスを辿ります。

経済にとって雇用の自由化が重要なら、それを支える政策やテレビ番組等が作られ、やがて文化と化しいくでしょう。

つまり、研究者の移動も一般化すると考えられます。

だとすれば、「東アジア地域包括的経済連携」では、域内の優秀な研究人材が、こぞって金払いの良い中国に集まるでしょう。

そして「中国産」の優れたイノベーションを世界に披露していくことになるのです。


さらに物資の面でも、中国は14億人に迫る人口を持ち、地下には世界のレアアースの約3割を埋蔵しています。

この物量に日印の科学技術が結びつくのですから、「東アジア地域包括的経済連携」の国力は一気に加速し、世界トップに駆け上がる可能性すら視野に入ってきます。


現在の覇権大国にとっては、超大国の出現と同時に、覇権維持に欠かせない日本の喪失を意味します。

そうなれば、現在の米国覇権が揺らぐ可能性は高いのではないでしょうか。


アジアに勝つには、地域ブロック同士を統合させるしか手がなくなる。

さらに経済の面でも、「東アジア地域包括的経済連携」には他の地域には無い優位があります。

その優位とは、加盟国の「比較優位構造」にバラツキが多いのです。

この「比較優位」とは、自由貿易のために作られた概念です。

ある国にとって、最も得意な生産分野のことで、最低コストで最大の生産を狙える分野がこれに該当します。

したがって、自由貿易に参加する国の比較優位構造は、ズレが大きいほど良いことになります。

比較優位構造のズレが大きいほど、違った生産品ができるので互いの需要を埋めやすいからです。

違いに需要を埋めやすいと、適度な依存関係ができ易く、自由貿易を活発化させやすいのです。

例えば、インドが所属する「南アジア地域協力連合」では、域内自由貿易が思うように進展しません。

「南アジア地域協力連合」の域内輸出は、長年の努力にも関わらず、域外輸出に対して5%ほどの割合で停滞したままです。

これは、地域統合内の国々の比較優位のバラツキが小さいためです。

「南アジア地域協力連合」の加盟国は、もともとインド圏だったこともあり、基本的に縫製業や皮革産業が盛んなことが多く、相互に生産品が似通り、自国で作れる製品をわざわざ輸入する必要が生まれないのです。

そのため、輸入する必要のある必需品を域外に求めて、対外貿易比率が極めて高くなってしまうのでした。


いっぽう、「東アジア地域包括的経済連携」は、所属する国々の産業構造が多様です。

製造業の日本、テクノロジーのインド、資源国の中国・オーストラリア、様々な産業資源を持つASEAN

こうした国々では、比較優位(得意な産業分野)の隔たりから自由貿易は大いに活発化するでしょう。

各国で得意な分野の生産に特化し、それを自由貿易で融通し合えば、自由貿易は一気に加速し、全体として生産性の向上が見込めるのです。

これに比べると、他のブロックは、比較優位構造の多様性に欠けます。


EUは、高度にサプライチェーン化された先進工業国の集まりです。資源の対外依存が深刻です。

ロシアブロックは、ロシアの石油を中心に資源国の集まりです。工業力の不足が深刻で、ソ連時代の工業都市であった東欧の国々は、EUに奪われてしまいました。

南米ブロックは、ほとんどが資源依存国で、工業国といえるのはブラジル、アルゼンチンといった数国しかなく、その工業力も十分ではありません。

インドブロックは、先述の通り、縫製業や皮革産業に偏っており、インドへの工業力の一極集中が問題です。

アフリカブロックは、農業依存の傾向が強く、南アフリカ共和国以外に高度な工業国がありません。

アジア以外のブロックに比較優位構造の多様性が見られないのは、

ローマ帝国なり、ソ連なり、英領インドなり、おそらく歴史的に起源を持つ統合体が基盤であるために、伝統的な産業構造が類似していること。

また、ブロックが一つの地理的に集中しているため、気候、自然条件に類似性があり、資源や生産方式が類似し易いことが考えられます。

経済価値は、「原料にいくら付加価値を与えられるか?」で決まります。

そのため、資源依存の強い南米、アフリカ、インド、ロシアといった国の集合体では、アジアブロックには到底太刀打ちできないでしょう。

そうなると、競走馬はEUと北米ですが、比較優位性のバラツキや人口規模で比べると、アジアには敵わないかもしれません。


そんな中、アジアの覇権に対抗するなら、地域ブロック同士を統合させるしか手はありません。


例えば、アメリカの「NAFTA」と南米の「ラテンアメリカ・カリブ諸国連合」は、互いにメキシコを共有しており、接続の可能性があります。

EUには、「地中海連合」という、アラブ、マグリブを加えた包括的な地域統合を進める構想があります。

さらにEUはインドの「南アジア地域協力連合」と自由貿易協定を結んでおり、すでに経済統合の最初のステップが確認できます。

南米の「ラテンアメリカ・カリブ諸国連合」と、アフリカの「アフリカ連合」は、ともに欧米の「NATO」に敵意を持っており、軍事同盟の構えを示しています。


またアジア側でも、「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)」のメンバーには、インドが含まれており、

「南アジア地域協力連合」とインドを共有しています。ここにも統合の可能性が伺えます。

このように、地域ブロック同士の統合も示唆されています。

このように、一旦は、東アジア地域包括的経済連携に優位が発生するでしょうが、

やがて、その対抗として新たなブロック同士の統合が進み、覇権を狙ってくる地域が現れるでしょう。

終局的には、世界は二分され、地球覇権を巡って争う時代に行き着くのかもしれません。

ブラジル経済を調査する過程で見えてきたこと。世界統一政府だと?

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豊富な天然資源に恵まれながらもレンティア経済を回避したブラジルは、ラテンアメリカ最大の工業国として、中南米最大の人口とGDPを誇っています。

そんなブラジルも、「ブラジル」という1国単位の視点から眺めることは、すでに意味をなさなくなっています。


例えば、ブラジルの貿易協定の大半は、ブラジルという一国単位ではなく、「メルコスール」という経済ブロックを単位に締結されています。

これは、EUを模範とする地域統合の動きが南米においても進行中であることを示しています。

南米では、地域統合に先立って、経済統合の取り組みが進められてきました。

南米地域での共通市場の創設を目標とした「ラテンアメリカ自由貿易連合」が創設されたのは、1960年のことです。

これに続き、経済統合の推進主体として「メルコスール」と「アンデス共同体」という2つのブロックが作られます。

この2つのブロックのそれぞれで、域内の自由貿易を進めると同時に、域外との共通関税が設定されます。

そして、最終的には2つの地域統合を統合することで、南米の統一を達成する計画が描かれているのです。

地域ブロックは「国家」同然の性格を持つようになる

南米の地域統合のひとつ「アンデス共同体」に属する国民は、域内の国境を通過する際にパスポートを提示する必要がありません。
それとともに、2001年にはアンデス共同体のパスポートまで作られています。

一方の「メルスコール」も、アンデス共同体の準加盟国として、アンデス共同体と似た実態に近づいていくでしょう。

既にアンデス共同体とメルコスールの間には、自由貿易協定が結ばれ、ブロック対ブロックでの統合に向かっています。


ブロックの経済統合には、政治統合が続く

2004年に、南米12カ国の首脳により政治、経済分野の統合を目指す「南米共同体」が発足すると、2007年には「同一通貨、同一パスポート、一つの議会」を目指す「南米諸国連合」に改組されました。

防衛に関しても、単一の「南米防衛評議会」が設置されるなど、「南米諸国連合」が国家同然の存在に変貌しつつあります。

さらに2011年4月には、地域統合の範囲を中米のメキシコから南米、カリブ海の島々まで拡大することを協議する外相会合が開かれています。

この案が実現すれば、中南米とカリブ海を包摂する巨大な共同体が出現することになります。

そして実際に、外相会議から3ヶ月後の2011年7月には、「ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体」が正式に発足しました

すなわち、「アンデス共同体」で起きた「共通パスポート、域内移動の自由化」の動きが、中南米地ーカリブ地域の全域に広がると見てまず間違いないでしょう。

対外貿易や協定も国家ではなく、ブロック単位で行われるようになっている以上、それは「国家」の先にあるものなのかもしれません。

アフリカでも、南部アフリカ開発共同体(SADC)と南部アフリカ関税同盟(SACU)という2つの地域ブロックによって統合に向かいつつあることは、以前の記事で紹介しました。

南アフリカ共和国のBRICS加盟に覚える違和感から、加盟の理由について考えてみた - Ossan's Oblige ~オッサンズ・オブリージュ~


ブラジルはアンデス共同体の首都になる?

上の記事では、経済の脆弱な南アフリカ共和国がなぜ「BRICS」に加盟できたか?を考察しました。

将来的なGDPの規模を示す人口規模の大きさなら、BRICS5か国よりも、インドネシアなど優れた国があります。

それでも南アがBRICSに選出され、また選出国が世界各地に散らばっているのはなぜか?
というのが私の問題意識でした。

その結果、見えてきたのは次のような要因です。

南アフリカ共和国がアフリカ最大のGDPを持つ
アフリカ最大の金融都市であるヨハネスブルクを持ち、金融センターの条件を備えている

つまり、世界で進行する地域統合の動きに合わせて、地域統合の盟主ともいえる役割を期待されているのがBRICSではないかという仮説に行き着きました。

ブラジルもまた、中南米最大のGDPを持つ国です。

金融においても、南米最大の金融都市であるサンパウロを擁します。

このように、GDP、金融ともに優れた能力を備えるブラジルもまた、「アフリカ連合」における南アフリカ共和国のように、地域統合の首都の役割を期待されているのではないでしょうか。

そのために、ゴールドマンサックスはBRICSを提唱し、世界のマネーを地域ブロックの首都になる5か国に集めたのだと私は推測します。


つまり、ブラジルは、広大な「ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体」の首都機能を果たす国(地域)になるのだと思います。

(ちなみに、ブラジルの電力供給の9割は水力発電依存。

全体の3%程度に過ぎない原子力発電の増設の動きもあり、今後の更なる発展を示唆しています。)


日本もまた地域ブロック化の動きに巻き込まれた

日本も民主党時代に強行された「留学生の学費無償化」が尾を引いています。

これは「高額な学費が、外国人には無償」ということであり、国民にとっては理解不能な制度ですよね。

しかしそれもまた、世界的なトレンドに乗ったまでなのかもしれません。

つまり、将来的な地域統合の成立のためにも、強引にでも外国人材を入れて「実態を作る」必要があったのでしょう。

望むと望まぬに関わらず、世界は1つの統一国家を目指しています。

その1段階として、我々の世代は、世界のブロック化に直面することになるでしょう。

中国経済の崩壊と占領のシナリオ【トランプ政権の対中政策】

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1 中国の発展は外資主導

2000年以降の中国の爆発的な経済発展は、外資に支えられたものでした。

日欧米の技術力を渇望する中国と、コストカットのための低廉労働者を求める多国籍企業の欲求が合致した結果、中国の「世界の工場化」が短期間のうちに進展したのでした。

巨大市場のポテンシャルが認知された瞬間、多国籍企業から投資が殺到し、沸き立つ生産需要に応えることで中国は技術と外貨の蓄積に成功します。

さらに外資流入の勢いが軌道に乗ったところで、ローンのバブル効果を発動。

これにより世界第二位のGDP、世界最大の自動車市場にまで上り詰めます
しかしながら、この状況をもって「China as No.1」と呼ぶにはふさわしくありません。

なぜなら、中国経済の土台は外資に支えられているからです。

内需の成熟が著しいとはいえ、GDPに占める割合を見ると、やはり外資比率が優位です。

2008年の時点で、中国の輸出に占める外資企業の割合は、55.4%と過半数を越える数値を占めていました。

2008年から10年が経過した現在においても、この割合は大きく変わっていないでしょう。

もし外資がこぞって流出すれば、輸出統計に大きな空洞ができ、中国経済は土台から崩れ落ちるでしょう。


シャドーバンクの問題性

お金を血液に例えることがあります。

人間の体を経済にたとえ、「身体中を巡るお金の流れが滞ると病気になる。お金を同じだから一ヶ所に留めずに使え。」といったことを主張したい人がよく使う表現です。

この主張になぞらえると、経済における「心臓」は通過発行を担う銀行です。

中国経済は、この「心臓」に慢性的な疾患を抱えています。

お金は順調に循環していても、心臓の造血細胞に異常を抱えているのです。


中国の通過発行は、日欧米のように公式の中央銀行だけが執り行っているのではありません。

非公式のシャドーバンクが政府の規制の外で暗躍しています。

シャドーバンキングとは、正規の銀行業から外れた出資母体によって営まれる金融業者を指します。

主に、ヘッジファンドや証券会社といった組織の設立した子会社が出資母体となり、利回りの大きさを担保にレバレッジ経済を動かしてきた中心母体です。

5~20%という破格の利回りが、中国バブルの原動力と呼ぶにふさわしい存在感を放っています。

しかしながら、非公式のファンドゆえ、正規の銀行業に対する厳しい審査も規制も適用されません。

ですから、仮に債務者が破産した時の対策も用意されておらず、場当たり的です。

さらに、融資に対して返済が行われる信用を証券化して再販売するなど、アメリカ金融危機の引き金となった過剰債務の焼き直しが横行しています。


無理な融資が破綻に陥ったところで政府からの扶助は望めません。
仮に取り付け騒ぎが起きた場合は、連鎖倒産は避けられず、GDP世界第2位まで掛け上った伸び幅と同じか、それ以上の急落が予測されます。

中国経済が崩壊した場合の影響は甚大であり、サブプライム級の混乱が世界経済を覆うことになることが予測されます。


さらに中国の社会融資の約半数が、このシャドーバンクを使った資金調達であることを認識するべきです。

つまり、心臓から排出される血液の半分が蝕まれているのであり、中国経済への極めて小さな刺激でもドミノ倒しが起こりかねない状況です。

つまり、当局は常に好況を演出しなければ経済を保てない状況にまで追い込まれているのです。


再度確認しますが、中国経済の核心は外資です。

外資の資本力が土台を支えているからこそ、苛烈なレバレッジ経済を奮起しても耐えてこれたのです。

しかし、外資という生命線が消えた時、中国経済はレバレッジ経済を支え抜く前提条件を失います。

いちど「中国はもうダメ」と世界的な認知が確率した瞬間、国内外から取り付け要求が殺到するでしょう。

つまり、外資の撤退は、シャドーバンキング問題を抱える中国経済を崩壊させる刺激として十分です。

このトリガーが引かれた時、中国経済は地獄のように下り坂を転げ落ちていくことになるでしょう。


2 「中国市場から製造業を呼び戻そうとする」トランプ大統領の狙い

トランプ大統領といえばポピュラリズムで選挙戦を勝ち抜いた無能な右系政治家だとする声が強いですが、その対中政策は至極真っ当です。

アメリカの行き詰まりの原因は、日本と同じです。

つまり、後進国への生産移転が進んだことにより、アメリカから雇用が失われたのです。

トランプ大統領は、中国をはじめとする諸外国からアメリカ企業を呼び戻そうとしています。

世界へ離散した大企業の国内回帰によって、アメリカ国内に雇用を取り戻そうとしているのです。

これがトランプ大統領の主張する自国民救済策です。

そこで早速、2017年9月27日に法人税減税(35%から20%)に踏み切りました。

法人税の減額は、利益を税金を目減りできるので、内需市場の旺盛さも備えるアメリカへの国内回帰の流れが生まれます。

これはもちろん、世界に散らばったアメリカ企業を呼び戻すだけでなく、世界中の大企業をアメリカへ誘致する狙いが込められています。

アメリカの新しい法人税率20%に対し、中国の法人税率は25%です。

税率5%の差は、数億千規模の利益に対して莫大なコスト差となり、移転の動機になり得ます。

国家のイデオロギー的にも、中央当局の規制が強い中国よりも、民主主義と資本主義に根ざすアメリカが好まれるのは自明です。


さらに、中国は先端技術の漏洩リスクもあります。

これまで中国に進出した外資系企業は、市場の果実を得る代償として、先端技術の供与に耐えてきました。

数億~数兆円の予算をかけて編み出した技術をタダ同然で引き渡していたのです。

それでも中国市場に残り続ける理由は、旺盛な現地の消費市場の魅力に他なりません。

しかし、外資企業の米国移転によって中国の消費市場が落ち込めば、製造業が中国に居続ける唯一の理由が無くなります。

進出当初は安かった人件費も、すでにインフレを遂げてしまいました。

この製造業は、中国人に最大の雇用を生んできた母体であり、その喪失は中国のGDPを確実に毀損します。

つまり、外資系製造業の一斉撤退が起きたとき、ドミノ倒しにシャドーバンキング崩壊の引き金が引かれ、中国経済の崩壊が現実のものとなるのです。


3 中国市場からの撤退は、アメリカ経済にも大打撃

中国経済の繁栄に終止符を打とうとするトランプ大統領。

しかし、中国経済の死はアメリカの多国籍企業にも打撃を与えます。


なにせ、アメリカは輸出の7.97%、輸出の21.4%を中国に依存しており、これを崩すことで立ち行かなくなるアメリカ企業も少なくないはずです。

特に中国の自動車市場は、世界最大規模に成長しており、アメリカのメーカーにとっても富の大きな柱となっています。

現地に進出済みの、ゼネラルモーターズ、フォード、フィアット・クライスラー、シボレーなどの米国自動車メーカーは、中国での人気も高く、売り上げに欠かせない市場となっています。


それでも、トランプ大統領が本気であることは、閣僚の顔ぶれを見れば一目で分かります。

「通商製造業政策局」委員長には、反中過激派で知られ『中国による死(Death by China)』という著書も著しているピーター・ナバロ氏が抜擢されています。

予想通り、製造業の政策担当です。

ピーターナバロ氏以外の人事も反中派で占められており、強攻策を実施する構えを見せています。


4 これから中国に起こることは、80~'00年代の日本の焼き直しか?

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日本と中国は、先進国企業の生産移転先としての立場を発展の土台とした点で共通しています。
日本の方が先輩な分、これに続く中国も日本の二の舞をたどることになるのでしょうか?

日本の経済支配が完成していったプロセス

第二次世界大戦の敗北の結果、戦後日本の内政は、アメリカ追従を余儀なくされてきました。

もちろん、アメリカの傘の下に入ることは、経済的にも国民生活的にも利益の大きなものであったことは間違いありません。

しかし、高度経済成長からバブル期、そして21世紀の構造改革まで、アメリカの外圧に屈し、いつのまにか自治性を放棄してしまったことも戦後日本の1つの姿です。

60年代から欧米からの技術導入の下、高度経済期が始まると、「世界の工場」として世界市場へ日本製品の供給を担うようになり、米国との距離を縮めます。

日本の追い上げはアメリカの対日貿易赤字として表れ、1985年には500億ドルを突破。

「バランス・オブ・パワー」の伝統を持つ欧米先進国は、「自由貿易の中立化」を理由にドル安誘導を強行。プラザ合意が結ばれます。

これにより円高に直面した日本は、更なる貿易の進展を阻まれ、戦後以降の輸出志向の経済発展モデルに終止符が打たれます。


さらに、通貨高により国外に向かわなくなった資本が国内にはけ口を求め、土地投機が過熱。バブル経済を醸成します。

91年には大蔵省の規制により崩壊期に突入するも、投機によって膨張したマネーは、日本経済から失われることなく、その後の投資ブームを支えていく土台となります。

しかし、その後、国内に分散した資本を株式市場へ集約していく途上、2001年に現れた小泉政権の下、金融の外資規制が緩和。

その後2003年に訪れた日経平均株価の7,000円代暴落によって、暴落した日本株を外資系ファンドに一斉取得される事態に陥ります。

この時点を以って日本株の主要なプレーヤーは外国人に移り、経済の主導権を明け渡す格好となりました。

事実、今日の日本株の売買は、その6割以上が外国人による取引です。


こうした動きの中で、日本はほぼ一貫してアメリカの主張に譲歩を重ねました。

もちろん、敗戦と戦後の国家再建におけるアメリカの貢献を評価してのものと思われます。


中国は日本と性格が異なる

一方、中国は日本と異なる性格を持った国です。

確かに欧米植民地に下った歴史はあるものの、相手はアメリカではなくイギリスでした。

冷戦終結後の発展は、アメリカの多国籍企業の進出に裏打ちされた経済成長でした。

中国が抱える安い労働力を背景とした生産拠点の移転をベースとしたため、日本のときと同様に、アメリカの対中貿易赤字が膨らむことになります。

それが近年起きている米中貿易摩擦の原因ですが、日米貿易摩擦とは若干の違いが認められます。

中国は、アメリカの安全保障の傘下に入っていない
アメリカの要請に対して中国側に拒否・報復の行使が行われている

中国はまだ、アメリカに対する敗戦を経験していないからです。

それでも中国経済は米国中枢人の手に落ちる

日本経済の主導権が剥奪された瞬間は、ひとえに株式の外資取得が契機でした。

それが行われたのは、投資の外資規制が実践された小泉政権の下です。

つまり、株式所有権の放棄は、国家主権の譲渡にも等しいのです。

政治手腕に長けた中国の重鎮は、これまで外国人の投資活動を規制によって縛ることで、国内経済の主導権を保ってきました。

これは、1997年にアジア通貨危機が起きたときに中国への打撃を微小に留めることのできた主要な要因の1つとなります。


ところが昨今、中国の外資規制に撤廃の動きがあります。

2017年11月には、日中首脳会談の結果、中国の習近平国家主席は、金融分野における外資規制の緩和に合意しています。
2020年以降に証券部門、22年以降に生命保険分野で、中国国内における外資100%出資の現地法人を設立できるようになるのです。

この措置によって、外資100%の金融法人の設立が可能となります。

外資系資本の銀行業務が行われるようになるなら、投資部門の外資規制緩和がなし崩し的に続くことになるでしょう。

繰り返しますが、国家の主導権は、暴落した企業債権を外資系ファンドに取得された時点で失われます。

つまり、前言のシャドーバンキングのリスクとトランプ政権による外資撤退の動きに十分な予兆を読み取ることができるのです。

またアメリカと中国の間に軋轢が生じた場合、中国を武力制圧することは、アメリカにとっても軍需企業の活性化に繋がり、合理的な判断となります。(ただし、軍事支出の増大を嫌ってアメリカ軍の投入は避けてくると思う。)

いずれにせよ、結果として起こる中国株の暴落は、欧米系ファンドたちに中国株の一斉取得に絶好の機会を与えることになるでしょう。

それが実現したときが、中国の終わりです。

「中国の金保有量世界一」は、あまり意味をなさない情報

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巷では中国の台頭が叫ばれて久しい。

対外開放の外資熱で成長した中国は、米国覇権打倒の先鋒であり、21世紀の覇権大国なのだそうだ。

某鬼塚氏の著書を読むと、世界2位のGDPを持つ中国の中央銀行には、世界の金塊が集積されているのだという。

「そんなことはどうでもいい。」というのが私の率直な感想です。

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清朝皇帝に学ぶ少子化対策【康熙帝の地丁銀制】

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歴史上の推定地域人口 - Wikipediaによると

中国の人口は、16世紀まで1億人前後で頭打ちでした。

17世紀の清朝の安定期には、人口も上昇傾向を示しますが、17世紀を通して人口1.6億人を超えることはありません。

ところが、18世紀を境に人口増加に拍車がかかっています。

1750年には人口2億人、1800年には3億人を突破。

さらに1850年には4億人と、人口増加の勢いは右肩上がりに加速していきます。

なぜ、17世紀まで2億人を超えることのなかった人口が、50年ごとに+1億人もの上昇を達成できたのでしょうか?

それは、中国皇帝の出した政策と密接に関連しています。

人口拡大といっても、移民政策ではありません。

漢民族の人口爆発を可能にしたのは、もっと間接的なものです。

なんと中国の人口爆発のきっかけは、税制改革だったのです。

では、康熙帝が導入した地丁銀制とは、一体どのような施策だったのでしょうか?

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南アフリカ共和国のBRICS加盟に覚える違和感から、加盟の理由について考えてみた

2011年に、「BRICs」は「BRICS」に変わりました。

複数形のsからSへの変更です。

この名称変更に伴い、新しく新興国の一員に加わったのが、アフリカの「南アフリカ共和国」です。

(BRIC「S」のSは、South Africaの頭文字)

南アは、豊かな鉱山資源を擁し、アフリカでは最大の工業力を持つ国です。

近年は、アパルトヘイトも撤廃し、新たな体制のもとで市場化を進めるこの国に、投資家からの注目が集まっているのでしょう。


しかしながら、南アフリカ共和国の人口は、5591万人に過ぎません。

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人口は、市場にとって大事な数値です。

なぜなら、消費者の数を意味するからです。

新興国の中で一番人口の少ないロシアでも1.4億人の人口を持っています。

ブラジルは2億人、インドと中国は13億人です。

こうした国々と比べると、人口5691万人に過ぎない南アが新興国の名を冠することは、素朴な違和感を覚えてしまいます。


工業生産力や歴史においても、ロシア、インド、中国、ブラジルに比べると、南アフリカは乏しい印象があります。


新しく新興国に加えるなら、人口2.6億人のインドネシア、1.9億人のパキスタン、1.3億人のメキシコ、9,600万人のベトナム、8,000万人のトルコなど有望な候補国はたくさんあります。

それにも関わらず、人口5691万に過ぎない南アがBRICSに加入できた背景はいったい何でしょうか?

今回は、南アフリカ共和国のBRICS加入の理由について考えてみたいと思います。

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今、インド投資が熱い?その理由をまとめてみた。

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インドが中国の次の市場として注目を集めている

中国は低成長局面に突入した

政治重視に徹するトランプ大統領の登場で先行きが見えない米国。

中国の経済成長率もバブルが峠を越え、なだらかな下降を辿っています。

二大経済大国の行き詰まりは、互いの製品に関税を掛け合う熾烈な貿易戦争へと発展。

資本主義が飽和状態に達しつつあることはもはや誰の目にも明らかです。

そんな中、新たな成長市場として熱い視線を集めている市場が存在します。
それがインドです。

インドの魅力

インドが中国に続く経済大国への道を歩んでいることは間違いありません。

なぜなら、2000年頃に登場した有望国"BRICS"の一員に名を連ねているからです。

人件費削減を求める多国籍企業は、国境の向こう側にいる途上国の安い労働力を起用することでコストカット需要を満たしてきました。

冷戦終結後、真っ先に「世界の工場」のポジションを手にした中国経済の躍進は周知の通りです。

しかし、1992年の改革解放路から27年が過ぎた現在。

賃金インフレが、多国籍企業から中国に居続ける合理性を奪いつつあります。

政治的にも、中国共産党による米国覇権への挑戦や周辺国への拡大主義は目に余るものがあります。

賃金高騰と政情リスクを背景に、中国を離れていく多国籍企業が増え続ける中、多国籍企業の新たな製造拠点として注目を集めているのがインドなのです。

13億人の人口を誇る”BRICS”の国、インドは、世界屈指のIT大国に成長したとはいえ、発展の恩恵を享受できたのは国内の能力あるエリートだけです。

伝統思想であるカースト意識は現地に根強く、豊かになっていく富裕層を尻目に、取り残された貧困層は未だ劣悪な生活条件の狭間を漂っています。

つまり、インドは改革解放が始まってまだ間もない頃の中国と同じ条件を備えているわけです。


インド投資を妨げてきたマイナス要因

膨大な人口を持ちながらインドが中国の後塵を拝してきた理由は、国内の悪条件に尽きます。

格差問題
衛生問題
官僚主義の腐敗
インフラの未整備

格差が当然視される地域の経済圏は爆発力に欠けます。

下層階級に上昇思考が伴わないからです。

現地の衛星状態も生活ラインぎりぎりという過酷なもので、先進国の恵まれた環境で過ごしてきた多国籍企業の社員が過ごしたくなるような場所ではありません。

インフラも先進国経済の需要に応えられる状態になく、整備なしに持ち込めば、生活、移動、流通などの面で支障をきたすことになるでしょう。

こうした現実に対して、これまでも諸外国が手を差し伸べてきました。

しかし官僚主義の腐敗が発揮され、予算として計上される前に官僚一族の懐に納められるので、なかなか成果は実りません。

インドにとっても外資の力が必要

インドもまた多国籍企業の力を必要としています。

たしかにインドは平均経済成長率を達成してきた成長国です。

世界のアウトソーシング需要の%を一国で担い、アメリカのIT業界はインド系人材なくしては成り立ちません。

しかしながら、インドの経済発展を牽引してきたのは十分な教育と機会を享受できる上流層であり、発展の恩恵を受け取れる層は一部に限られていました。

中流以下の階層は、取り残されたまま放置され、村の飲食店や第一次産業への従事を余儀なくされています。

もはや、インド人の機会の不平等は、インドの伝統的な論理では解決できません。

日本人が上下意識を捨て去れないように、インド人から階級意識を取り上げることは不可能だからです。

インドの下層階級へチャンスを与えるには、世界の多国籍企業が下層工程を持ち込むしかありません。

多国籍企業が持ち込む業務は最下層の人々に最適化されたマニュアルワークで、教育を受けていない人でもこなすことができます。

先進国基準の指揮の下、最下層階級の人々に平等に仕事を割り振れば、経済的に国民の底上げを図ることができます。

冷戦時代、インド人は資本主義と社会主義の中間に立ちながら世界情勢を眺めてきました。

そんなインド人も、社会主義が国民を幸せにしないことを知っています。

中国を毛嫌いしつつも近年の経済発展によって、豊かになった中国人の姿を見ているからです。

実際にインドが、多国籍企業の受け入れに踏み切ろうとしていることは、2014年にナレンドラ・モディ首相の掲げた経済政策を見ることで見えてくるでしょう。

ナレンドラ・モディ首相のモディノミクス

これまでのインドは、とても外資系企業が進出したくなる環境ではありませんでした。

格差を正当化する伝統
動物の糞尿が散乱する道路
大都市でも頻発する停電
脆弱なネット回線
行政の汚職

日本の安倍晋三首相がアベノミクスを提唱した2013年の翌2014年、インドのナレンドラ・モディ首相は大規模な規制緩和を含む経済改革、いわゆる「モディノミクス」を発表しました。

この政策では、インドの発展を妨げていた諸問題の解消が掲げられています。


一例をあげるなら、「クリーン・インディア」では、インドの劣悪な衛生環境を改善することに貢献するでしょう。

これまでのインドは、浄と不浄を分けるヒンドゥー思想から、「汚れた」トイレを自宅に置いていない家庭がほとんどでした。

しかし、欧米企業の協力(※1)もあり、インド全域に、誰でも使用できる最先端の公共トイレが設置されていく予定です。

また、この動きに合わせて、他人の「野グソ」を発見した場合は、写真を撮って報告すれば、褒賞品がもらえるといった村まで現れているようです。

ここで撮影された写真は、村長によってコピーされ、村の掲示板に掲示されます。

つまり、「野グソ中」の写真を掲示板に貼るという恥をかかせることで、野外での排泄行為を抑制しようという試みです。

並行してインドのいたる場所に清潔で「閉鎖的な」公共トイレを設置することで、衛生状態の悪化に歯止めをかけられる見込みです。

これはモディノミクスの一例に過ぎません。



また同時に外資の出資比率100%の容認によって多国籍企業にも門戸が開かれることになります。




このように、インドは多国籍企業のエネルギーを借りながら、立ち後れた自国の発展に本腰をいれて乗り出そうとしています。

この方針は中国に代わる新しい進出先を求める多国籍企業の需要とも一致しており、おまけに世界のGoogle、Microsoftなどの重鎮の少なくない割合はインド系人材によって占められています。
このことからも、インドの経済発展はもはや予言された未来であることが分かります。



これはモディノミクスの一例に過ぎませんがインドのインフラの改善が大きく前進することは間違いないでしょう。

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電気自動車の45%を占める中国の攻勢の裏にあるもの【したたかな日本】

1. 電気自動車化への対応は、国家の資源状況が決める

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電気自動車の終局的な目標は、ガソリン車に置き換わることです。

この事態は、既存のガソリン車メーカーにとっては脅威ですが、競争に遅れをとっている国々にとっては大きなチャンスです。

中国やインド、ユーロ圏の国々が電気自動車の普及に積極的なのは、2つの理由が考えられます。

非産油国であること
自然エネルギー産業に欠かせない資源を持つこと

中国、インド、ユーロ圏の国々は、産油国ではありません。
これらの国々は、原油の国内需要を自国だけで賄えないため、外国からの輸入によって補っています。

つまり、ガソリン車が主流であるうちは、動力である原油を輸入し続けなければなりません。
しかし、自然エネルギーを利用できるようになれば、輸入の負担を減らすことができます。

もう1つの理由が、自然エネルギーに関わる産業資源を持つことです。

現在、最も積極的に電気自動車の導入を進めている国が中国です。

"Global EV Outlook 2019"によると、世界全体の電気自動車に占める中国車の割合は約45%。

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濃緑が中国
(参考 : https://www.iea.org/gevo2019/



中国が電気自動車の導入に積極的なのは、世界最大の自動車市場を持つことや、国内の環境汚染の解決のためといった理由が考えられます。

しかし、それだけではありません。

この問題は、中国が電気自動車の製造に不可欠なある原料の産出国であることと切り離せません。

それは、電気自動車のバッテリーに使われる「リチウムイオン電池」に他なりません。


このリチウムイオン電池は、次の理由から、スマートフォンやラップトップのバッテリーとして定着している電池です。

エネルギー密度が高く、高出力


今後、電気自動車が普及した場合、リチウムイオン電池の需要が増加します。
リチウムの産出国である、南米のチリ、中国やアルゼンチンといった国々が経済的恩恵を受けると予測されています。

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http://resource.ashigaru.jpより

一方、アメリカのトランプ大統領は自然エネルギーの活用に関して、「地球温暖化などでっちあげ」という発言を残しています。

この発言からも、アメリカは電気自動車の導入を進めているとはいえ、(アメリカ国内の電気自動車台数は世界の約22%)上記の資源国と比べると、やや渋々感が否めません。

原油輸出国のアメリカにとって、ガソリン車の消滅は、エネルギー収入を途絶えさせる脅威です。

すでに成熟したガソリン車メーカーへの打撃も避けられません。

自動車のEV化、自然エネルギーの利用といったトレンドが、国益に必ずしもプラスでないのが、アメリカの立場です。


2. リチウムイオン電池に日本から強力なライバルが出現

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https://periodictable.com/Elements/003/index.htmlより

電気自動車普及の大きなボトルネックは、充電時間の長さです。

電気自動車の充電に要する時間は膨大です。

例えば、新型の日産リーフの場合、80%充電に要する時間は高速充電で40分。
多忙な現代社会で、車の充電のためにわざわざ40分も時間を削られるのは、全く実用的でありません。

しかし2017年の7月、日本のトヨタから業界のブレイクスルーを起こしかねない研究が発表されました。

それは、現行のリチウムイオン電池の代替を狙う、新型バッテリーの開発計画です。

この「全個体電池」の画期的な点は、電解質に個体を用いる点です。

電気自動車の抱える諸問題は、液体の電解質を用いるバッテリーのリチウムイオン電池に由来しました。

この改良により現行の様々な問題の解消が見込まれます。

低音・高温に弱いため大電流を流せない
電解質の液体が極端な低温・高温に晒されると、バッテリーの寿命が縮む


この問題は、電解質が液体であることによる限界点です。
そこで、電解質を個体に切り替えることで、次のようなブレイクスルーを見込めるようになります。

1. 大量の電流を流せるようになる充電時間の短縮
2. 温度による制約がないバッテリー寿命が長持ち


大量の電流を流せるようになる=充電時間の短縮

個体電解質が実現すれば、電気自動車のボトルネックである充電時間の短縮を大きく前進させるでしょう。

揮発性で熱に弱い液体の電解質へは、大量の電流を流すことはできません。

しかし、個体の電解質なら、いくら電流を流しても電解質が劣化してしまう恐れはありません。

通電する量を問わなくなれば、高入力(高速充電)高出力(高エネルギー出力)が可能になります。

トヨタ自動車によると、「全個体電池」によってリチウムイオン電池の3倍の出力が期待できると報告しています。

この電池をEVに搭載した場合、フル充電までにかかる時間を3分に短縮する可能性が開けます。


バッテリーの寿命が縮まない

現行のリチウムイオン電池が劣化してしまうのは、電極の劣化に原因があります。

これは、電解液と負極の黒鉛(炭素)の化学反応です。

電解液に含まれる、EC(エチレンカーボネート)という物質と、負極の炭素系成分が化学反応を起こすことで、負極表面にSEI(固体電解質相)と呼ばれる薄い皮膜を形成してしまうのです。

さらに、アレニウスの式(化学反応の速度を予測する公式)に従うと、化学反応は高温状態で促進されます。

したがって、バッテリーは高温状態に晒されると劣化が早まるのです


しかしながら、電極の改良が進み、シリコンを用いた新しい電極の開発も進められています。

負極の素材に非炭素系の素材を用いることで、エチレンカーボネートが化学反応しなくなり、SEIを作らずに済みます。

これにより、約50%のバッテリー容量の増大が見込めます。

実際、試作電池は、従来のリチウムイオン電池よりも40%高いバッテリー容量を示しています。

こうした改良は、確実に電池の性能を向上させていくはずです。

バッテリーの劣化のしやすさは、充電時間の長さに加え、ユーザーの不満の種になりがちな問題でした。

しかし、次世代電池が実現すれば、ユーザーはバッテリー劣化を気にすることなく、快適に電気自動車を利用できるようになります。

ユーザーも安心して購入できるようになり、普及を後押しするでしょう。


3. 全固体電池の実装は2022年以降の未来

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とはいえ、全固体電池はいまだ研究段階です。

実用化は早くとも2022年頃と試算され、電気自動車への搭載となると2030年頃となる見込みです。

市場に出回るまで長い時間を要します。

現時点では、あくまで計画段階であり、成功が確証されているわけでもありません。


4. ナトリウムやマグネシウムを使った電極の開発

また日本のメーカーは、電解質の改良にも着手しており、電解質の成分をリチウムからナトリウムに置き換えることを目指しています。

ナトリウムは海水からも採取できる資源であり、これが実現すれば、膨大なリチウム埋蔵量を背景に市場拡大を狙う中国の野心にも抵抗できるでしょう。

トヨタは、ガソリン車の廃止により衰退企業とされますが、時代の推移を、ただ黙って見ているだけではないようです。

業界再編を巡る動向に注視していきたいものです。

2000年以降の金・銀・銅・プラチナの価格の比較

今回は、金・銀・銅・プラチナを、「2000年以降の価格の伸び率」と「採掘ペース」の観点から比較してみたいと思います。



1、 2000年時点を基準にした、値上がりのピーク時と2017年現在の伸び率の比較

( 掲載データは、「世界経済のネタ帳」http://ecodb.net/)を参考にさせて頂きました。)

ここでは、金・銀・銅・プラチナの各価格を、
「2000年時点の価格とマネタリーベースの増えた2000年以降のピーク時の価格の伸び率」、「2000年時点の価格と2017年現在の価格の伸び率」
この2つから比較してみたいと思います。

基準の価格を2000年に設定したのは、区切りのよさと、世界的な株バブルの開始直前の年度であるためです。

(1)金

金価格は、2000年の時点で1g 8.98ドル。2000年以降は、2012年に1g 53.64ドルのピークに達し、2017年現在は1g 39.84ドルに落ち着いています。
伸び率は、2000年-2012年で最大597%、2000年-2017年現在で444%となります。

(2)銀

銀価格は、2000年の時点で1g 0.16ドル。2000年以降は、2011年に1g 1.13ドルのピークに達し、2017年現在は1g 0.56ドルに落ち着いています。
伸び率は、2000年-2011年で最大706%、2000年-2017年で350%となります。

(3)銅

銅価格は、2000年の時点で1g 0.00177ドル。2000年以降は、2007年に1g 0.00812ドルのピークに達し、2017年現在は1g 0.00588ドルに落ち着いています。
伸び率は、2000年-2007年で最大458%、2000年-2017年現在で331%となります。

(4)白金(プラチナ)

白金価格は、2000年の時点で1g 17.56ドル。2000年以降は、2011年に1g 55.30ドルのピークに達し、2017年現在は30.99ドルに落ち着いています。
伸び率は、2000年-2011年で最大315%、2000年-2017年で176%となります。


2000年からピーク時までの伸び率が最も高いのは、銀の706%。
次いで金の597%、銅の458%、そして白金(プラチナ)の315%と続きます。
とはいえ、2000年の時点ではまだ現物ETFが導入されていなかったので、一般の投資家が銀や銅に手を出すことは難しかったと思います。
そう考えると、やはり手堅かったのは、メジャーな金ということになるでしょうか。

2000年から2017年現在までの伸び代が最も高いのは、金の444%です。
次いで銀の350%、銅の331%、そして白金(プラチナ)の176%となります。

あくまで2000年を基準にした曖昧な比較ですが、金価格の伸び率の良さと価格の安定感が示されたかと思います。


2、 採掘ペースの比較


(1)金

金はおよそ7万トンの埋蔵量が確認されています。
一方、年間の産出量は2011年で2822トン。
これは、埋蔵量に対し、年換算4.03%のペースで採掘を進めていることになります。

(2)銀

銀はおよそ53万トンの埋蔵量が確認されています。
一方、年間の産出量は2015年で2.51万トン。
これは、埋蔵量に対し、年換算4.74%のペースで採掘を進めていることになります。

(3)銅

銅はおよそ9億4000万トンの埋蔵量が確認されています。
wikiによると、そのうち可産鉱量は2005年の時点で4億7000万トンとされていますが、2011年の報告では6億9000万トンに増加するなど、技術革新を背景に可産鉱量は年々上昇しています。6年間で2億2000万トンの伸びですので、最終的には埋蔵量の9億4000万トンに限りなく近づくことが予測されます。
一方、年間の産出量は2015年で1910万トン。
これは、埋蔵量に対し、年換算2.03%のペースで採掘を進めていることになります。

(4)白金(プラチナ)

白金はおよそ1万6000万トンの埋蔵量が確認されています。
一方、年間の産出量は、およそ190トン。
これは、埋蔵量に対し、年換算0.01%のペースで採掘を進めていることになります。


根拠とした数字は年度ごとにバラバラであるため、比較を行う上では正確性に欠けると言えます。
しかしながら、あくまで傾向を示すには、十分だと考えられます。
計算によると、採掘ペースが最も早いのが銀の4.74%。
次いで金の4.03%、銅の2.03%、そして白金(プラチナ)の0.01%となります。

プラチナの採掘ペースが他金属と比べて格段に遅れているのは、生産拠点の少なさが関係しているのかもしれません。
あるいは、希少価値の高さから資源メーカーが小出しに流通させていることも考えられます。

この点は、不明だったので、今後の課題としたいと思います。

電気自動車とプラチナ価格暴落の予兆

と書くとセンセーショナルに見えますね。

しかし、今後確実に進む電気自動車化の流れは、プラチナ価格にマイナス圧力をかけるでしょう。


1 地球規模の温暖化現象

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現在、自然災害の頻発などを受け、世界的にエコ意識が高まりつつあります。

日本では、大地震の頻発や降雨量の増加など、近年目に見えて自然災害が深刻化しつつあります。

アメリカでも、ハリケーンの頻発、南部アリゾナ州での気温50度を超える猛暑など、

異常気象が各地で見られ、猛暑の影響で大停電が発生するなど、産業界としても無視できない状況になっています。

こうした中、世界は、環境問題の解決に向けて、各国で取り組みを進めています。

その対策の一つが自動車産業の見直しです。

ガソリン車が撒き散らす排気ガスが、世界人口の増大にあわせて、許容範囲を超え始めているのです。

特にインドなどの巨大人口国では、利用人口の多さに加え、浄化作用に難のある中古品が整備されることなく使用されているため、その汚染は深刻です。

インドのニューデリーでの1日の滞在は、喫煙10本分に相当するとされます。

2 地球を襲う温暖化への各国政府の対策

こうした中、大気汚染の深刻なインドが、2030年までにガソリン車、ディーゼル車の販売を中止する規制を発表しました。

世界最大の自動車市場となった中国でも、政府が18年にも環境規制を導入し、自動車メーカーに一定台数の電気自動車の生産を義務付ける方針を表明しています。

こうした動きは途上国でだけでなく先進国にも見られ、

フランス、イギリスをはじめ、欧州各国でも、2040年までにガソリン車の販売を終了する方針が発表されています。


こうした各国政府の規制が、電気自動車の普及を後押しすることは間違いありません。そして同時に、汚染度の高いガソリン車の衰退を導く事も確実です。

すでに各国メーカーも電気自動車の開発を進めており、

スウェーデンの大手自動車メーカーボルボは、2019年までに販売する全車種を電気自動車に転換する計画を発表しています。


環境汚染は、日本でも国が工業国化(先進国化)していく過程で起きた現象です。

しかし、当時の日本の人口は1億にも達していませんでした。

しかし現在の新興国では、10億人規模の人口大国が一気に工業化することで、排ガスや温室効果ガスが環境に与える影響が甚大なものになっています。

アメリカのアリゾナでは、気温50度越えの猛暑が頻発しています。これが世界に広まった場合、人類は陸上には住めなくなります。

そうなる前に対策を打つ必要があるのです。

電気自動車の普及は、人類の未来を賭けた改革といっても過言ではないはずです。


3 プラチナ価格の今後

電気自動車の普及は、プラチナ価格をおし下げるでしょう。

これまで、プラチナ価格は、自動車需要に大きく牽引されてきました。

なぜなら、車内の排ガスの無毒化のために、プラチナを使った触媒が必要だったためです。


しかし、新興の電気自動車は、そもそも排ガスを出さないため、無毒化の作業は不要です。

電気自動車では、電気でモーターを回転させ、その回転力を動力とするため、ガソリン車のように燃焼を起こす必要がありません。

つまり、有害物質が発生しないのです。

この仕様がもたらすのは、ガソリン車時代に車体のクリーン化を務めた、触媒のリストラです。

同時に、触媒の材料であるプラチナ需要は低下を余儀なくされます。


そのため、電気自動車の普及は、プラチナ需要の減退を伴わざるをえません。

プラチナ需要のうち、その40%以上は、自動車の触媒需要だとされます。

一方、投資需要はわずか7%に過ぎません。

もし、電気自動車への代替が進めば、半数近くを占めるプラチナの需要が空洞化します。

需要の40%以上が消えれば、わずか7%程度に過ぎない投資需要で支えようにも無理がありますよね。

これまでのプラチナ価格を支えていた自動車需要がごっそり抜ければ、プラチナ価格は暴落せざるをえません。


とはいえ、繰り返し申し上げる通り、プラチナは金を超える希少性を持つ金属です。

産業的にも優れた特性を持っています。

そして貴金属ゆえ、債権のような0価値化の恐れもない。

したがって、下落すれば間違いなくプロによる買い占めが起こりますし、一時的に自動車需要を失っても、

新しい産業需要を見つける事は間違いありません。(ガソリン車の触媒需要と同等量を満たすのは難しそうだが)

したがって、今後プラチナ価格の暴落が起きた際は、買い占めておいて損はないと思います。(ただし長期保有が前提)

太陽光発電の普及で銀価格が上がるのか?

近年、資源問題を背景に、自然エネルギーに注目が集まっています。

それに伴って、送電網の材料である銀価格の高騰を予測する声がネットに散見されます。

たしかに、太陽光発電の需要が高まれば、それだけ使用される銀の量も増えるでしょう。

銀は、金属の中で番目に送電効率の高い資源です。

実際、代表的な自然エネルギーである太陽光の発電ケーブルの配線には、送電効率の高い銀が使用されています。

太陽光発電の規模が大きくなるという事実は、一見すると、銀の価格上昇を連動させるという見方を導きがちです。

しかし、私はこの予測に対しNoと反論します。

なぜなら、送電ケーブルの銀を別の貴金属に代替する研究が進められているからです。

太陽光発電は、自然エネルギー投資の48%を占めており、32%の風力発電とともに全体の8割を構成します。(参考 : isep https://www.isep.or.jp/archives/library/10685

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電気自動車の普及がもたらすプラチナ価格への影響

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自動車の電気化の動きが世界的に広がっています。

世界規模の経済発展は環境汚染を悪化させ、温室効果ガスがもたらす異常気象など、人類の脅威を生み出しました。

こうした中、電気モーターの回転で動き、排気ガスを出さない「クリーンな」電気自動車に白羽の矢が立っています。

フランス政府は2040年までにガソリン車、ディーゼル車の販売を終了する方針を宣言。

高い人口規模を持つインドや中国も、電気自動車の販売比率を高める取り組みを進めています。


電気自動車は排ガスを出さないので、ガソリン車に不可欠な排ガス浄化の触媒を必要としません。

プラチナは、ガソリン車の触媒に使われる主要な材料でしたので、ガソリン車の需要が減れば、間違いなくプラチナ需要も減少を余儀なくされるでしょう。

こうした状況の中、次のような疑問が生じるのではないでしょうか?

プラチナ需要の減少は、どの程度が見込まれるのか?

ガソリン車の減退に伴うプラチナ需要の減少は、プラチナ価格を長期下落に向かわせるのではないか?

投資家はプラチナ市場の先行きをどのように見ていく必要があるのか?

こうした疑問を掘り下げてみたいと思います。


1 これまでのプラチナ需要の内訳と先行き

プラチナは自動車製造の過程でどのように使用されているのでしょうか?

2016年のプラチナの供給量は249.8トンでした。(産出量・193トン+リサイクル量・56.8トン)

これに対して、2016年のプラチナの自動車関連の需要は103.8トン。

これは、プラチナ需要の約41%を、自動車関連の需要が占めていることを意味します。

自動車の触媒1つにつき使用されるプラチナは2~5g。また触媒だけではなく、点火プラグや酸素センサーといった部品にもプラチナが使用されているそうです。

(参考 : 2016年プラチナ需給と2017年の需給見通し | Gold News

2016年のプラチナ需要自動車関連 103.8トン(40.8%)
宝飾品   77.5トン (30.4%)
工業    53.7トン (21.1%)
投資    19.6トン (7.6%)

したがって、仮にガソリン車が全て電気自動車に置き換わった場合、プラチナ需要の約41%が消滅することになります。

その場合、現在の価格を維持するには、約59%を占める投資・宝飾品・工業の需要でカバーする他ありません。

つまり、これまでのプラチナ高を牽引してきた自動車関連に代わる新たな需要が創起されない限り、プラチナ価格は値崩れを起こす可能性が高いということです。


さらに、ガソリン車が使われなくなるということは、現在市場に出回っているガソリン車からのプラチナ回収の動きが相次ぐということです。

廃棄されたガソリン車からの回収の動きが強くなると、リサイクルにより、プラチナの供給量が増加するので、プラチナ余りに拍車がかかります。

こうした動きは、確実にプラチナ価格の値下げ圧力として働くでしょう。


2 プラチナの資源的特性

プラチナは、工業需要が総需要の約20%を占めるほど、優れた資源的特性を持ちます。

例えば、以下のような特徴は、プラチナが持つ優れた特性です。

高い融点(1,768°C)
高い沸点(3825°C)
触媒活性
腐食防止
血液を酸化しない
体内への伝導性

こうした特性が評価され、自動車以外にも、石油、ガラス、燃料電池、ペースメーカー、ハードディスクや抗がん剤といった分野でも活躍しています。


2 貴金属としてのプラチナの特性

プラチナは地球上に存在する総量において、金や銀を凌駕するほど、希少性の極めて強い資源です。

そして、貴金属なので酸化にも強く、債権のように、価値がなくなることは絶対にありません。

したがって、絶対価値を持つ安定資産として資産保全に役立ちます。

つまり、投資家からの一定の需要が確実に見込めるということです。


3 プラチナ需要の減少をどう評価すべきか?

プラチナの優れた特性を踏まえれば、仮に値崩れを起こしても、低値のまま放置される可能性は極めて低いです。

例えば、下落後に新たな産業需要が誕生すれば、すぐさま買い占め競争が起こり、価格を取り戻す可能性が高いといえます。

一過性の暴落はむしろ買占めのチャンスと捉えるべきでしょう。

もちろん、フランスのガソリン車販売停止も2040年からなので、目線は長期で捉えておくべきです。

少なくとも、新たな需要が創起されない限り、2040年まで下落圧力が続くことは記憶の片隅に置いておくべきでしょう。

埋蔵量と需要から見た、投資資産としての金、銀、プラチナの違い

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現物資産の利点。
それは、資源そのものに価値があるため、暴落のリスクが低いこと。
それに比べると、株式は企業の業績に左右されるため、常に株価崩落のリスクが伴います。

特に昨今は、度重なる量的金融緩和政策により、株高が顕著です。
しかし有史以来、弾けなかったバブルは存在せず、今後もそれは変わりません。

バブルの終焉によって投資家の熱狂が冷めたとき、慌てて動き始めたのでは避難が間に合いません。

逆に金融危機の前に避難が完了すれば、資産の保全だけでなく、先行投資者としての恩恵に預かることができます。
だからこそ、バブル崩壊時に資産逃避先の候補となる金・銀・プラチナの性格を知っておくことは重要なのです。

それでは現物資産の中で、資産保全の役割に最もふさわしい資産は何なのか?
今回は、金、銀、プラチナの「存在量」と「需要」という側面から探ってみました。

大不況の時に「資産を減らすのではなく倍増させたい」という方は是非最後まで読んでください。

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物価の安い国に海外移住は現実的か?【日本脱出計画】

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日本は魅力あふれる先進国ですが、特有の住みづらさがあることも事実です。


日本特有の問題
1 物価が高い
2 住居費が高い
3 完ぺき主義

世界第3位の日本のGDPは、労働者の血のにじむ長時間労働によって支えられています。

低賃金、サービス残業、低昇給、満員電車、派遣労働、有給消化のタブー視・・・。

豊かさって何?

そんな哲学的な問いが頭をよぎる先進国民の日常。

上記のような日本の条件は、戦後の復興期に作られたものでしょう。

戦後の焼け野原からの先進国の仲間入りを果たすには、血のにじむ努力と忍耐が必要でした。

国民の末端に至るまでの全力コミットが求められたのです。

それでも、努力したぶん国が栄え、連動して給与も上がっていくから、当時の人たちは苦としなかった。

今日よりも素晴らしい明日が待っているから、少々の不満には目をつぶることができたのだと思います。

今の日本はそのような状況にありません。

すでに国内の発展が頭打ちし、高齢化が進み、社会保障費が税負担として跳ね返り、政治は腐敗し、資本主義の本格化により派遣社員(奴隷階級)まで現れる始末。

国家の将来性が危ぶまれる中、国民の大半が将来を悲観しています。

かといって生活のためには労働に従事しなければならず、ニートにでもなろうものなら苛烈な社会圧力と生活費とで二重の疲弊を強いられます。


そんな社会で生活していると、こう考えてしまっても仕方ないのではないでしょうか?

「もう海外に逃亡(亡命)したろかな」

現実として、国外(特にアジア南部)には日本で求められる生活費の数分の1で暮らせる発展途上国がたくさんあります。

たとえば、個室のホテルが1,000円から宿泊できるベトナム、不衛生な代わりに何でも安いカンボジア、また都市の完成度が高いタイの物価でも日本の半額程度。

東南アジアの国なら、安いローカル店に入れば、100円や200円で空腹を満たすことができます。

居住費も、ローカルアパートを借りれば10,000~20,000円で過ごせる国もたくさんある。

そうした国でなら、今ある貯金だけで過ごしていけるのではないか?



こうした疑問について、その現実性について語ってみたいと思います。

ちなみに私は、大学時代のインド留学経験から、アジア放浪までを経験したことがあり、現地の物価などは一通り経験しているので、信憑性もクリアしていると思います。

※ただし、東南アジアから西に出た事はないため、アジア限定という視点でよろしくお願いします。

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【オナ禁初心者へ】オナ禁の方向性を見誤ると泥沼にはまる件【回避方法も】

自分にはオナ禁の長い蓄積があり、ネットで囁かれているような”スーパーサイヤ人”的な恩恵を得た事もあります。

しかし、10年近い経験の先に待っていたのは、オナ禁をしたからといって、必ずしも人生が好転するとは限らないという教訓でした。

オナ禁はあなたを救ってくれる魔法の裏技ではありません。

オナ禁で成功を掴む人は当然いるでしょうが、それは最初から正しい方向性を進めていた人です。

オナ禁は、加速度に過ぎないのです。

逆に、あらぬ方向にオナ禁を発動してしまうと、効果が出ないどころか、「こじらせ」が深まる結果に終わるでしょう。

では、オナ禁を成功裡に終わらせるには、どのような条件が必要なのでしょうか?

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