Ossan's Oblige "オッサンズ・オブリージュ"

文化とは次世代に向けた記録であり、愛の集積物である。

楽しかったマラッカの記憶

クアラルンプールからマラッカへの移動には、バスを使った。
バスの内装は快適で、エアコン付き、座椅子の質もグッド。
座椅子同士の間には十分な間隔があって、日本の高速バスみたいな窮屈さは一切ない。
これで1000円超なのだから日本のバス会社も見習ってほしい。

ここマラッカは、イギリスの海峡植民地として発展した都市である。
1511年、ポルトガル人はマレー半島に拠点を作った。
いわゆる「ペナン・マラッカ・シンガポール」の一角だが、ペナン島ほどイギリス色は強くなく街も発展していないように感じた。
料理もペナン島とは若干異なっていたように感じる。
この違いは、やはり都市の基盤を築いたのがポルトガル人であることに由来するのだろう。
マラッカは、大航海時代初期の息吹を伝える街である。

港湾都市の富に目をつけられ、マラッカは侵略が相次いだ歴史を持つ。
日本の戦国時代にやってきたフランシスコ・ザビエルもマラッカで布教を行っており、セントポール教会の前にいくとフランシスコザビエル像があり、日本で見られる禿げ頭の絵とはまた違った彼を見ることができる。
ポルトガル、オランダ、イギリスと推移した占領時代が、1957年のマラヤ連邦の成立を持って終了すると、かつての宗主国が遺した建造物は歴史遺産としてみなされるようになった。

代表的なものに、セントポール教会(ポールはパウロ[Paul]の英語読み)、オランダ由来の赤煉瓦の建築物が残るオランダ広場、ポルトガルの残したサンティアゴ要塞、セントポール教会、イギリスの残したコーンウォリス要塞などがある。


マレーシアで日本人に人気高い都市はペナンだそうだが、自分はこのマラッカにセカンドホームのような親しみを感じている。
静かで、歴史が豊富で、ご飯が美味しく、親日的なこの都市になぜ注目が集まらないのか、未だによく分からない。
ちなみに、このマラッカ州にもスルタンはいない。ただ、2016年に中国政府の開発計画を受け入れたそうで、今後軍港都市化する恐れがあるようだ。
これまで、海上交通の要衝にあるマラッカは超大国の侵略に晒されてきた。これからもマラッカの地政学的重要性はかわらない。超大国はここを抑えようと努力を払うだろう。
マラッカがこの先どの道を進むかは未知数である。



ドミトリーのフロントを務めていた23歳位のマレー系女性の思い出

バスが到着したセントラル・バスターミナルは、駅地下のショッピングモールのような佇まいが内部にあって綺麗とはいえず、
規模も小さく混雑していたため、あまりいい思い出がない。
バスターミナル周辺も閑散としており、10km近く歩いてやっと開けたエリアにたどり着いた。
バスターミナル付近の田舎道を抜けて、ようやく栄えた場所が見えてきたかと思うと、遠くに大きなAEONのモールが見えた。
当然、ここを目指す。
モールまでたどり着くと、中流層と見える人々の群れが出入りを繰り返す様子が目に入った。
中に入ると日本のAEONとそっくりだ。デパートの中を歩くと、日本のAEONと99%同じ仕様であることが分かった。
商品だけでなく品出しの仕方まで日本仕様で、食品売り場に出されている品もどうしたことか配列まで日本のイオンとほぼ同じだった。
ゲームセンターでは、現地人向けに改造された日本の遊具目当てに集まる子供と母親たちの賑わいが確認された。

彼女の働くドミトリーはこの付近にある。
彼女の名前もドミトリーの名前ももう記憶にはない。
だけど、彼女の働くドミトリーの隣には、中華料理とイスラム料理の両方を扱うマレーシアらしい料理店があり、
付近にはハングルの看板を堂々と掲げた焼肉店あったことは記憶している。

それはさておき、無謀にもバスターミナルからさまよい、酷い疲労の中にいた私を受け入れてくれたのは、このドミトリーだった。
値段はとても安かった。
ドミトリーなので宿泊場所の個人スペースは小さいが、料金の安さは魅力的だったし、出会いの場でもある。
ドミトリーに入るとフロントには、中国系マレー人らしい女性が立っていた。
年齢は23歳くらい。TシャツにGパンという格好で、サイズはピッタリ。ピッタリジーンズは、体型を強調する。
人によってはマイナスに作用するのだが、彼女の場合は生まれ持った美しいシルエットが強調されてファッションモデル顔負けの美しさを演出していた。
1つ2つの募集では無理でも10,20,100と頑張ればきっと彼女を使ってくれる先進国のファッション雑誌は見つかると思う。能力はあるのだから、彼女のような女性に機会を与えてやりたいと心から思う。

さて、私が入ってきた時、彼女は驚いたような顔をしていた。
そして私が1泊泊まりたい旨を伝えると彼女はパスポートの提出を求めるので、彼女の求めに従う。
料金を支払うと、彼女がホテルの案内をしてくれた。
ロビーを奥に抜けて通路に入る。
通路の先ではドミトリーの部屋が男性用と女性用に分かれていて、さらに進むと奥にシャワー室とトイレがあるらしい。
建物は外からは鉄筋かコンクリート式に見えたが、中は木造の造りになっていた。
部屋に入ると、日本のセブンイレブンくらいの大きさの部屋に12個くらいの2段ベッドが並んでいて、私は手前から2列目通路側のベッドを割り当てられた。
到着したのは15時ごろだったが私以外に客はいない。小さな蛍光灯ほどの電気がついた薄暗い部屋に2人だけの状況。
私に割り当てられたベットの位置まできて、ベット周りの充電器やシャワーの使い方などを聞く。
しかしなぜか説明が長い。そればかりか、私から彼女とベットが一直線に重なって見えるようなロケーションに入ろうとする。私が性犯罪者だったらどうするのだろう。
などと思いつつも、私は汗でベトベトだったし、彼女もon dutyなわけで性的な誘惑という線は考えないようにした。
インド女性から恋愛対象外の目線を向けられて自信喪失真っ最中での出会いだったので、自分が海外女性の恋愛対象に入ることが信じられなかったのである。
タイでは堕落した空気が嫌で、自分から距離を置いていた。


しかし翌日、彼女の変化を確認して私は確信する。

翌朝、当時勉強していたプログラミングの理論を整理しようと、ロビーの壁にあるデスクまでMac Book Airと参考書を持って向かった。
美しい彼女のことを意識していなかったわけでもないが、個人スペースの小さな部屋を嫌ってのことである。
あの後、深夜に1人の客が来ていたらしが、日中にチェックアウトする予定だったので、とくに声をかけることもなく気まずい空気が発生していた。

ロビーに出ると、彼女が昨日と同じ場所でフロントを務めていた。
ロビーにはインド系のマレー女性がいて彼女と話をしていたが、私は学習に集中したかったので意図的に視線に入れないようにした。
参考書を開き、実際にプログラムを作らないと定着しないような知識を、必死にノートにまとめていた。無駄な努力を払っていたような気がする。
そんな最中に、何度も視線を感じる。さっきのマレー女性はもういなくなっていたので、方向からしても、視線が彼女のものであることは明らかだった。
とはいえ、彼女からの好意を想定するのは自分にとって認知不協和だったし、今すべきことはそれではない。
早く一人前になりたいと強く思っていた。女を探すのはそれからでよいと。

そして、チェックアウトの定刻まで近づいてきたので彼女に一度も視線を向けることなく、ロビーを後にした。
何度か自分の視線に入ろうとする様子が感じ取れたが、あえて視線から外していた。


部屋に戻り、荷物をまとめ、忘れ物の確認をし、予定を確認し、準備が万全であることを確かめてから部屋を出る。

そしてチェックアウトのためロビーに向かうと、やはり彼女がいた。
会うのは今日2度目だが、顔を見るのは初めてだ。
彼女の顔はどんなだっけ?
相手のことを好きになったり気になっていたりすると、人はその人の顔を忘れる心理傾向があるという。
また会うためだとか。

そして顔を上げて彼女の顔を見ると、なんか白い!
まるでMLBの選手が通算500号ホームランを打って同輩から顔にケーキをぶちこまれた時のように、罰ゲームで小麦粉をかぶった人のように、彼女の顔はファンデーションで真っ白に覆われていた。
白人に侵略された土地では白色至上主義が流行るというが、やりすぎだよってレベル。
日本だとお化け屋敷でみるようなメイク。

日本でも、女性が異性に興味を持つと、翌日からメイクや髪型、ファッションが変わることがある。
これもそれなのだろうか。

彼女から目線を外し淡々とチェックアウトする旨を伝える。
彼女はアピールに気づこうとしない私に、半分怒りを顕にしていた。
とはいえ、私も悪党ではない。彼女の好意がたとえ国籍取得目的の歪な目的であっても、その行動はインドで受けた心の傷を癒すには十分だった。
事前に感謝を伝える準備くらいしていた。
そのまま無表情で彼女の手続きを待ち、承諾を受け、踵を返して出口に向かう直前で彼女に手紙を渡した。
そのまま振り返りもせず出口を抜けて次のホテルに向かうのだが、手紙を渡す瞬間に見えた彼女は、驚き半分、感動半分といった様子で、会えてよかったと心から思った。


Thank you giving me a good time!
I’ve come to like Malacca more that had raised you.
Good bye!

あなたを育てたマラッカが好きになりました。
楽しい時間をありがとう。
またどこかで。


実際はもう少し違っていた気がするが、自分を癒してくれた彼女に何か返したいと強く思った。
好意レベルでは不十分で、彼女が欲しいのはバッサリいうと金なのかもしれない。それなら自分でなくても良い。
マラッカは重要都市。これからも多くのエグゼクティブが世界中からやってくるはずだ。
そんな時に、私との経験が彼女がうまく振る舞うための助けになるなら幸いだ。今でも彼女の幸せを心から祈っている。



料理がめちゃくちゃ安くてうまい

世界一リーズナブルな飯屋はどこか?
人それぞれだが、俺はマラッカだと答えたい。

マラッカの中華系料理店には、日本の天下一品とほぼ同じような味のラーメンを200円程度で提供してくれる店がある。
量は、天下一品の並ほどで、スープも天下一品ほど熟成されていない。しかし200円で食べられるラーメンであそこまでの完成度に達しているものはそうないと思う。
インドネシアにもおいしい100円ヌードルがあったが、日本基準でみると両方ありえないコスパだ。
インドネシアの100円ラーメンも「コスパ最高」の部類なのだが、いかんせん屋台で衛生面の不安があることがマイナス点だ。

カオマンガイという米の上にタレのかかった鶏肉の切り身が置かれた伝統料理も、同じくらいの値段で食べることができる。
これらを2つ同時に食べると満足感が強すぎて、お勉強はできなくなるだろう。骨抜きにされる味だ。
それでも500円しないという恐怖。依存症が進むことは間違いない。

その他にも肉骨茶などの美味しいお店と出会うことができた。

インド系のお店は、日本人の好みとは少しちがう味。
でもまあ異文化の味ということで楽しませてもらった。


マッサージ師を父に持つインドネシア人留学生にエロマッサージを学ぶ

マラッカ市街には、市内を一望できるマラッカタワーというものがある。
空に向かって高く伸びたポールの周りを円状のキャビンが囲み、回転しつつ高度を上げていく仕組みだ。
乗客はこの最長110mまで登るキャビンから市内を展望する。

一見、遊園地にある乗り物が市内に置かれているように見えるが、上昇速度はゆっくりなのでジェットコースターのようなものではない。
自分も利用したが、古い歴史建造物が点在するマラッカの街並みの上空からの眺めに、一定の感動があったことは確かだ。
特に、オランダ式の赤い家々が並んだエリアの眺めは最高だった。

このマラッカタワーでは、どの場所に何があるか俯瞰できるため、まだ来て間もない旅人は、タワーの上空から目的地を決めるのもよいかもしれない

さて、俺にエロマッサージを教えてくれたインドネシア人の男は、ここで事務のアルバイトをしていた。
マラッカタワーの利用を終えて、もうじき就業時間に差し掛かろうという時、外で休んでいると、彼がやってきた。
服装は制服で一目で従業員とわかる格好。自分に出会うと一度事務室に戻り、また戻ってくる。戻ってきた彼の手には、油で炒めたようなコーンの入った紙コップが握られていた。自分に食えという。
インドなら睡眠強盗を疑うところだが、見るからに従業員という服装の彼に猜疑心は沸かなかった。顔つきにも悪意はない。
むしろ顔つきと真っ直ぐに伸びた姿勢からは、実直な人間の印象を受けた。
とはいえ、彼の行いは不自然で何らかの意図があることは明らかだった。見知らぬ人間にタダで飯をやる奴はいない。

そんな違和感を感じながらも、当時は危機管理が弱く、財布の手持ちも少なく、パスポートも泊まっていた部屋の中にあることを確認して、彼の誘導に乗ることにした。
第一面白そうだし、旅の孤独を癒すいい機会だった。

ちょうど仕事終わりのタイミングということで、帰宅の手配を終わらせてくるといって事務室に向かう彼を外で待つ。
出てきた彼は、自分がいなくなっていないことを確認して安心した様子だった。
こいつには絶対に何か狙いがある。

通りを外れ、近くの川のほとりに座り込み話を始める。

彼は、近所の大学の留学生で、日本人も通う近くの大学で学んでいるらしい。
父親はマッサージ師で、ジャカルタの隅っこで小さなマッサージ店を営んでいるとのこと。顔にどこか西洋系の面持ちがあったので尋ねるとフランスとのクォーターだと答える。

何を話したか覚えていないが、彼の自己開示が激しかったのは覚えている。それに頷く。

突然、マッサージしてやろうか?と彼。プロマッサージ師の息子の技術に興味を持ち、応える自分。
彼のマッサージは上手だった。肩こりはなかったが、局部をピンポイントで狙えているのがわかる。
また慣れないはずの東洋人の身体構造にも一瞬で対応するのだから流石プロの息子というところか。

軽いマッサージを終えると感想を聞かれたので肯定する旨を伝えた。
すると、もっとマッサージしてやろうか?と聞いてくる。
せっかくなので、そっちがよければお願いと答えた。
じゃあ移動しようと彼。

彼が指定したのは近くに置かれていた収納コンテナ。
マッサージを行う場所が個室なのはわかる。しかし、コンテナの中の狭いスペースで男二人がマッサージというのは、さすがに違和感全開だった。
とはいえ、会話を通して悪人ではないと分かっていたので、鍵をかけないという前提でとりあえずOKを出した。
鍵もかけていないのだから、いざとなればどうにかできる自信はあったし、睡眠強盗に遭っても貴重品はホテルにあるため被害は小さい。
本当はここでクスリを警戒しなければならなかったのだが、まだウブな僕はそこまでの危機管理ができなかった。

彼の全身マッサージは最高だった。指の筋力も強く、タイマッサージの姉ちゃんでは出せないパワーがある。
体全身の筋肉がほぐれ、血流がよくなるのが分かった。
彼の父親から学んだのであろうマッサージを一通り終えると、彼の手が自分の股間スレスレの場所にまで入り込む。

もちろん、その辺にツボがあるのは承知の上だ。
しかし、箇所が箇所だし、俺たちは男同士。また1日の汚れを落としていないのでそこは汚い。
というか、マッサージの途中から気づいていたが、この男、力が強い。
体格は自分より小さいが、もしこの男があっちの人で襲われた時、果たして自分は抑えられるだろうか?
そう考えると、初めてのアッ−!!!を奪われる恐怖が浮かび、冷や汗が流れるのを感じた。

当然大きめの声を上げて抗議するが、彼は落ち着いた様子でマッサージの一環だと返す。
たしかに指圧に性的なものは感じなかったし、ツボを押されて一定の気持ち良さがあったのも確か。

ちなみにこの時点で互いに上半身は裸である。マッサージのためらしい。
しかし、そう言いながらも彼の手は自分のお稲荷様を包み始めており、彼の言うマッサージがノーマルのものでないことを悟った。
しかし彼の手つきは淡々としていて、性的な興奮を伴わせている気配はない。
すでに自分のヤシの木と2つの実を取り出して5分ほどの指圧を終えた彼の指は、今度は何と後ろに向かって伸びようとしていた。
(ちなみに、ヤシの木を指圧しながら、ツボを教えてくれた。何のツボなのかは分からないが、竿の中央からやや上部、竿の根元から65%ほどの位置にツボがあるのだそうだ。左右の親指で交互にそこを押す。)

こればかりは、ありえないので、ノーと強めに言うが、彼は聞こうとしない。
パンツの上からとはいえ、そのまま尻の穴周辺を刺激された俺は屈辱感を感じていた。
すると、全工程を終えたらしく、彼はフーと息をついた。

この男なにがしたいのか?

まず、マッサージ料金の高額請求を危惧したが、詐欺的だし、財布の中に高額請求に応えられるような金額は入っていないため、被害は避けれると思った。
プロマッサージ師を目指していて東洋人の経験が積みたいという線も考えたが、何か別のものを志望していると言っていた記憶がある。

そんなことを考えていると、彼が切り出した。

今度はお前が俺をマッサージしてくれ。


そこは、むろんオッケーなのだが、今通ったールートを辿れというのは無理だ。
とりあえずお返しは必要なので、彼の体を指圧することは認める。
自分の指圧に比べて不十分な私の指圧に彼は不満そうだった。素人だから仕方ないのに、それが気にくわないということは、おそらくただでマッサージを受けることが目的だったのだろう。

案の定、彼は、竿と玉、そしてケツのマッサージを求めてきたが、そこは全力で断った。
必要としていた下半身マッサージを受けることができずに、彼はひどく残念そうだったが、とくに強要されることもなかった。
彼に対して感謝したらいいのか、怒ったらいいのかよくわからなかった。
とりあえずすべきなのはここを出ることだ。服を着て収納コンテナの外に出た。

彼はなんともなさそうにケロっとしているが、自分はかなり気まずかった。

一言二言交わして別れてから後、二度と彼と会うことはなかった。

彼は今も、マラッカタワーの客を連れ出して、自分のケツをマッサージするように促しているかもしれない。


セカンドホームのように思っています

その他にもマラッカは、
シングルのいい部屋なのに800円くらいで貸し出しているバスターミナル付近のホテルオーナー、落とし穴同然にボッコリ空いてる路上のコンクリート、ジャパニーズ?と笑顔で話しかけてくれるおばさんたち、
ホテル滞在中に一番いい部屋を用意してくれたり、本場のマサラティーを煎れてくれたりとよくしてくれたインド系のホテルオーナー(元医者)、などなど忘れられない思い出を与えてくれました。
セカンドホームのように思っています。ありがとう。