Ossan's Oblige "オッサンズ・オブリージュ"

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東南アジア5ヶ国の富裕層Top10が華僑だらけな件について

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鈴木傾城さんの記事で「インドネシア経済の90%は華僑が掌握している」との内容を目にしました。
それは本当でしょうか?

その事実性を検証するために、2017年のフォーブス資料を参考に検証を行います。
フォーブス記載の最富裕層の顔ぶれを見ることで、インドネシア経済を動かす主体を判別できるでしょう。
さらに、東南アジアの主要国の状況と比べることで、東南アジア地域全体の傾向に関しても仮説を立ててみたいと思います。

※過大推計とならないように、"出自不明"の人物は「中華系人材」の枠から外しています。

インドネシアの比率は76.7%(2017)

インドネシアの富裕層上位10名

最富裕層10名の資産合計(558.億ドル)のうち、華僑人材の資産額は428億ドルです。
これは割合にして76.7%であり、最富裕層上位10名のうち8割近くが華僑系人材の手に掌握されていることになります。

Indonesia’s 50 Richest

順位 名前 資産額 業種 民族
1 R.Budi & Michael Hartono 17.1B Djarum 中国系インドネシア
2 Susilo Wonowidjojo 7.1B tobacco 中国系インドネシア
3 Anthoni Salim 5.7B diversified 中国系インドネシア
4 Eka Tjita Widjaja 5.6B palm oil 中国系インドネシア
5 Sri Prakash Logia 5B polyester インド系インドネシア
6 hairul Tanjung 4.9B diversified インドネシア
7 Boenjamin Setiawan 3.3B pharma 中国系インドネシア
8 Tahir 3.1B diversified 記載なし
9 Murdaya Poo 2.1B diversified 中国系インドネシア
10 Mochtar Riady 1.9B diversified 中国系インドネシア


合計資産額(B : 10億ドル) 華僑資産 合計資産 : 華僑比率
インドネシア 55,8(B) 42.8(B) 76.7(%)
(Forbes Indonesia’s 5 Richest : Indonesia’s 50 Richest List)


インドネシア経済の90%が華僑人材の支配下」というのは、調査を末端の市民にまで掘り下げて行わないと答えは出せません。
もちろん、インドネシア人の大半は現地系の人々ですから、「経済資本の9割が華僑に所有されている」ことは有り得ないと思います。
しかし、資本の配分に決定権を持つ財閥系企業の枠組みでは、半ば華僑独占に近い状態が成立しているのかもしれません。

インドネシアは、過去に華僑弾圧を繰り返してきました。
また最近ではインドネシア国軍司令官が「中国人をサメの餌に」と発言して問題になりました。
こうした事件も、高すぎる華僑依存度に対する警戒から来ているのでしょう。


それ以外の国でも華僑人材が支配的

調査で明らかになったインドネシアの傾向は、東南アジア主要国の中で例外的なのでしょうか?
他の国々の調査結果と比較してみたいと思います。

シンガポールの富裕層上位10名

順位 名前 資産額 業種 民族
1 Pobert & Philip Ng 9.4B real estate 中国系シンガポール
2 Eduardo Severin 9.3B Facebook アメリカ系シンガポール
3 Goh Cheng Liang 7.8B paints 中国系シンガポール
4 Kwek Leng Beng 7.1B real estate 中国系シンガポール
5 Khoo family 6.3B Maybank 中国系シンガポール
6 Wee Cho Yaw 5.8B banking 中国系シンガポール
7 ,Kwee family 5.3B Real Estate インドネシアシンガポール
8 Kuok Khoo Hong 2.7B palm oil 中国系シンガポール
9 Raj Kumar & Kishin RK 2.6B real estate 記載なし
10 Sam Goi 2.2B frozen foods 中国系シンガポール


資産合計(B : 10億ドル) 華僑資産 合計資産 : 華僑比率
シンガポール 58.5(B) 41.6(B) 71.1(%)
(Forbes singapore’s 5 Richest : Singapore's 50 Richest List)


最富裕層上位10名の資産合計(585億ドル)のうち、華僑人材の資本は416億ドル。
これは割合にして71.1%

第2位にランクインするアメリカ系シンガポール人のエドゥアルド・サベリン氏(Facebookの設立者のひとり)が例証する通り、シンガポールは代表的な租税回避国の1つです。
そのため華僑以外の富豪も集まるので、調査した東南アジア5カ国の中では最も低い華僑寡占率となっています。


フィリピンの富裕層上位10名

Philippines’s 50 Richest

順位 名前 資産額 業種 民族
1 Hennry Sy 18B Investments Corporation 中国系フィリピン人
2 John Gokonawel Jr. 5.5G Surmit 中国系フィリピン人
3 Enrique Razon Jr. 4.3B International Container Terminal Services 中国系フィリピン人
4 Lucio Tan 4.2B LT Group 中国系フィリピン人
5 Jaime Zobel de Ayala 3.7B Ayala Corp スペイン系フィリピン人
6 David Consunii 3.68B Construction 中国系フィリピン人
7 George Ty 3.6B banking 中国系フィリピン人
8 Tony Tan Caking 3.4B Jolibee 中国系フィリピン人
9 Andrew Tan 2.5B Alliance Global 中国系フィリピン人
10 Ramon Ang 2.3B San Miguel スペイン系?


資産合計(B : 10億ドル) 華僑資産 合計資産 : 華僑比率
フィリピン 51.18(B) 40.88(B) 79.87%
(Forbes Philippines’s 5 Richest : Philippines' 50 Richest List)


最富裕層上位10名の資産合計(511.8億ドル)のうち華僑人材の資産は408.8億ドルです。
これは割合にして79.9%であり、経済に占める影響力の高さを伺わせます。
フィリピン人御用達のSMモールもジョリビー華人経営です。


マレーシアの富裕層上位10名

Malaysia’s 50 Richest
順位 名前 資産額 業種 民族
1 Robert Kuok 11.4B palm oil, shipping property 中国系マレーシア人
2 Quek Leng Chan 6.8B banking, property 中国系マレーシア人
3 Ananda Krishna 6.5B telecoms, media, oil-services 中国系マレーシア人
4 Hong Piow Teh 4.75B banking 中国系フィリピン人
5 Lee Shin Cheng 4.7B palm oil, property 中国系マレーシア人
6 Lim Koh Thay 4.45B casinos 中国系マレーシア人
7 Yeoh Tiong Lay 2.1B construction, property, power 中国系マレーシア人
8 Lau Cho Kun 2.08B palm oil, property 中国系マレーシア人
9 Tiong Hiew King 2B timber, media 中国系マレーシア人
10 Syed Mokhtar AlBukhary 1.8B engineering, energy, construction イエメン系マレーシア人


資産合計(B : 10億ドル) 華僑資産 合計資産 : 華僑比率
マレーシア 46.58(B) 38.28(B) 82.1%
(Forbes Malaysia’s 5 Richest : Malaysia’s 50 Richest List)


最富裕層上位10名の資産合計(465.8億ドル)のうち、華僑人材の資産は382.8億ドルです。
82.1%の占有率は、域内でも最大の部類です。
華僑系人材が離れていく形でシンガポールと分離した国ですが、富の大半は未だ華僑人材によって掌握されていることが伺えます。


タイの富裕層上位10名

順位 名前 資産額 業種 民族
1 Brothers Chearavanont 21.5B food 中国系タイ人
2 Charoen Sirivadhanabhakdi 15.4B drinks, real estate 中国系タイ人
3 Chirathivant family 15.3B retail 中国系タイ人
4 Chalerm Yoovidhya 12.5B drinks 中国系タイ人
5 ,Vichai Srivaddhanaprabha 4.7B duty-free タイ系?
6 Krit Ratanarak 3.9B media, real estate タイ人
7 George Ty 3.8B insurance, beverages 中国系タイ人
8 Prasert Prasarttong-Osoth 2.6B hospitals 記載なし
9 ,Santi Bhirombhakdi 2.3B bear 記載なし
10 Aloke Logia 1.75B petrochemicals 中国系タイ人


資産合計(B : 10億ドル) 華僑資産 合計資産 : 華僑比率
タイ 83.75(B) 70.25(B) 83.9(%)
(Forbes Thailand’s 5 Richest : Thailand's 50 Richest List)


最富裕層上位10名の資産合計(837.5億ドル)のうち、華僑人材の資本は702.5億ドルです。
これは割合にして83.9%であり、調査した主要5カ国では、華人に最大の占有率を持たれている国といえます。

ちなみに、最富裕層のBrothers Chearavanont氏(華僑系)の資産額は、同年の日本の孫正義氏の資産額(204億ドル)を上回る215億ドルを示しています。
さらに、第2位のCharoen Sirivadhanabhakdi氏(華僑系)の資産額154億ドルをみても、中進国のはずのタイがすでに日本の富裕層を追い上げつつある状況が読み取れます。


東南アジア主要国に占める華僑人材のプレゼンテージは圧倒的

調査した東南アジア5カ国の全てで、富裕層上位10名の資産合計の少なくとも70%以上が華僑人材の手に握られていることがわかりました。
もちろん最上位10名の資産合計は、経済活動全体には過半数も占めません。

しかしこの階層は、資本関係により現地経済を支配下に置き、お金の流れに支配権を持っている人々です。
だとしたら、最富裕層に華僑人材が並ぶインドネシア、マレーシア、フィリピン、タイの経済は、華人の主導下にあるといっても過言ではありません。
香港やマカオ、台湾といった、中国に近いアジア各国の華人比率の高さは語るまでもありません。
だとしたら、アジアの経済活動は、華僑の支配下に降りつつある、と見ても間違いではないのではないでしょうか?

経済のパイの枠組みでは現地マネーが有力だとしても、ロビー活動を通して政治的移民政策が踏み切られた場合、数世代を経て現地民が華人と同化・交代していく恐れは十分にあるでしょう。

まとめ

今回調査した「東南アジア主要5カ国と華人経済の関係」についてまとめると、

・タイ : 華人比率83.9%
・マレーシア : 華人比率82.1%
・フィリピン : 華人比率79.9%
インドネシア : 華人比率76.7%
シンガポール : 華人比率71.1%

です。

フォーブス2017記載の「東南アジアの富裕層上位10名」で調査した結果、東南アジア主要では、経済活動に占める華僑人材の支配比率が高まりつつあることが確認できました。
それは、調査の動機となったインドネシアだけでなく、シンガポール、フィリピン、マレーシア、タイにおいても結果は同様です。
これらの国々には、将来的な「中国化」の恐れがあります。