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太陽光発電の普及で銀価格が上がるのか?

太陽光発電は、代表的な再生可能エネルギーのひとつです。

この太陽光発電に必要な装置には、配線に「銀」が使われています。

銀は、金属の中でも最も電気伝導率が高いため、送電効率を高める上で重要なのです。

現在、世界は環境問題の解決に向けて、再生可能エネルギーの普及に取り組んでいます。

再生可能エネルギーをより多く利用するには、発電装置を増やさなければなりません。

そのため、ネットの一部などで、銀需要の増加、そして銀価格の高騰を囁く声があります。

果たしてそれは本当でしょうか?





1,自然エネルギー需要上昇の原因は、異常気象

最近日本では異常気象が目立っていますが、これは世界規模の現象です。

アメリカでも、ハリケーンがたて続けに上陸しており、南西部アリゾナ州では気温50度を超える場所があちこちに発生しています。

また、世界各地で頻発する巨大地震により、多くの人々が犠牲になっています。

こうした悪質な自然災害は、地球温暖化現象が引き金となっている説が有力です。

地球温暖化現象は、人間の生活から生じる温室効果ガス(二酸化炭素)が、集積して大気圏にオゾン膜を作り、

通常なら発散されてなくなるはずの熱が大気圏内にこもることで気温上昇が引き起こされる現象のことを指します。

温室効果ガスの排出経路は様々です。

つまり、これまで社会主義の採用等で遅れていた中国、インド、ロシアなどの国が資本主義に包摂されていく中で、

工場の排気ガス、エネルギー使用量の増加などの要因から、温室効果ガスの排出が増加している現実があります。

こうした温室効果ガスの増大に歯止めをかけるべく、エネルギーの見直しが実施されているのが今というわけです。


2,地球温暖化抑制への各国の対応

こうした中、各国政府は温室効果ガスの排出削減に積極的です。

まず規制の対象となったのは、自動車です。

自動車には、現在主流のガソリン車と新世代の電気自動車、またその中間のハイブリッド車があります。

世界全体のトレンドとしては、ガソリン車を電気自動車に置き換える方向に向かっています。

なぜなら、この電気自動車は、電気によるモーターの回転で走行するため、ガソリン車のような排気ガスを伴わないのです。

さらに、モーターの回転がコインを回して、自家発電してくれるので、たいへん環境に優しい作りになっています。

この電気自動車の導入に向けて、フランスは2040年までにガソリン車、ディーゼル車の販売を終了する方針を表明。

英国も同じ40年までに同じ規制を実施する方針を表明。その他の欧州各国も似たような政策を検討しているようです。


いまや世界最大の自動車市場の中国でも、政府は18年にも環境規制を導入し、自動車メーカーに一定台数の電気自動車の生産を義務付ける方針を表明しています。

またインド政府は、2030年までに販売する自動車の全てを電気自動車に限定する宣言を発表しています。



こうしたマーケットの動きに反応して、スウェーデンの自動車メーカー大手ボルボは、2019年には生産する全ての自動車を電気自動車にする方針を表明しています。

2019年といえば、いま2017年ですから、たった2年先の話です。

来るべき電気自動車時代に向けて、メーカーの熾烈なシェア競争が始まりつつあります。


3,電気はどうするの?

ここで疑問が生じます。

「電気自動車に必要な電気はどうやって調達するの?運転から汚染物質がでなくても、必要な発電が増えるなら、環境に与える影響は変わらないのでは?」

これは当然の懸念です。政府も並行して対策を進めています。

注目されているのが、自然エネルギーの活用です。

中でもエネルギー効率に優れる太陽光発電に熱い注目が注がれています。

日本でも地方自治体からの強い要請もあり、2030年までに自然エネルギーの30%実現を目標に改革が進められつつあるようです。

(自然エネルギーの導入によって削減した炭素使用量の収益化を狙っているとのこと。)




日本政府も自然エネルギーの活用に向けて準備を整えつつあり、その中心をエネルギー効率の高い太陽光発電に据えているのです。

この太陽光発電によって得た電気を、電池からパネルに送電する際に使われているのが、電気伝導率が最も高い銀なのです。


こうした動きを織り込んで、一部の投資家の間では、「太陽光発電の拡大とともに、銀の価格高騰は必至である。だから銀を買っておけ!」

という言論がまことしやかに広がっているようです。

これに対する私の意見は、「多分そうならないんじゃないかなあ?」です。


なぜかというと、太陽光発電の配線の材料が銀という説明は、あくまで現状を説明したものに過ぎません。

大量生産の必要が生じた未来の状況を踏まえたものではないからです。

すでに太陽電池のパネルの配線には、銀から銅への移行の動きが出ているようです。
(http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20131108/314830/?rt=nocnt : 2013/11/13 太陽電池もCu配線の時代に 河合基伸さん)

この記事を書いた方は、元半導体の技術者として活躍され、電子回路製造の内情に詳しい河合基伸さんという方です。

河合氏によると、現状の銀を使用した太陽光パネルはコスト上の問題があるばかりか、電気抵抗が高くなり、出力が安定しない課題を抱えているとのこと。

しかし、配線の材料を銀から銅に切り替えることで、コスト削減ばかりでなく、性能の向上にも寄与するとのこと。

実際に、既に銅パネルの開発を進めているカネカを中心に、銅を使った太陽光パネルの開発を検討、導入を進めている企業が増えつつあるようです。

氏は、かつて半導体技術者だった頃を振り返り、電気抵抗の問題のために、アルミニウム配線から銅配線への切り替えが起きたこと。

業界の切り替えが一瞬のうちに進んだことを回想し、

現在の太陽電池を巡る動きでも「同じことが起こりそうな予感がする」と述べて記事を結んでいます。

専門家から見ても、電池配線の銀から銅への移行は自然な流れのようです。


ここで銀と銅の特性を比較してみましょう。


銀と銅は、電気伝導率の最も高い金属として知られ、金属全体のランキングでは、1位と2位です。

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しかし、その差はたったの2ほど。

銅は、銀と比べても、電気伝導率に2ほどの差しかない大変通電効率の高い金属だということが分かります。

またベースメタルと呼ばれるように、埋蔵量での銅の優位性は明らかです。

これまで人類が掘り出した銀の総量は約100万トン。残りの埋蔵量は53万トンだといわれています(2011)。

一方の銅は、これまで人類が掘り出した量はヒットしませんでしたが、確認埋蔵量だけで9億4000万トンに上ります。

銀が地球上に153万トン程度しか存在しないのに対し、銅は埋蔵量だけでも銀の総量の614.4倍が地球上に存在していることになるのです。

もちろん、採掘済みの銅を加えれば、銀に対して圧倒的な量となるはずです。

このボリュームの違いを反映して、価格の開きも明らかです。

銅 1kgあたり約5.75ドル
銀 1kgあたり約558.47ドル

と銅は銀に対して約100分の1の価格で市場に出回っていることになります。

この安価な銅を材料として使えるようになれば、太陽電池の製造コストを大きく抑えることができるはずです。


実際に、その動きは実現しつつあるようです。
東北大学ベンチャーのマテリアル・コンセプトが太陽電池の配線に銅ペーストを使う技術の実用化に世界で初めて成功した
ことが日本経済新聞2017年2月7日の「東北大発VB、太陽電池の配線に銅ペースト 」で紹介されています。

記事によると、「銀を使った製品と比べても発電効率を同等に保ったまま使用することができ、2018年から銅ペーストのの量産を始め、台湾や中国、東南アジアなどの太陽電池メーカーに納入する。」とのことです。


つまり太陽光発電の配線の材料が銀というのは、もはや「過去の時代」となりつつあります。

今の流れだと、銀は、太陽光発電の広がりを受けて高騰するどころか、役割を失って需要を失いかねません。