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電気自動車の普及で後退する産油国と金・プラチナ価格への影響

1 世界を襲う地球温暖化問題への対策は主要各国で共通


基本的に、電気自動車の動力は、電気を使ったモーターの回転です。

ガソリン車やディーゼル車では、ガソリンを内部点火させて生じた爆発をタイヤの回転に利用していたのですが、この爆発により発生する温室効果ガスの影響が深刻化しつつあります。

アメリカでは、南部アリゾナ州で気候50度を超える地域が出現すると、それが原因での停電や空の便の欠航など経済活動を妨げる事態に直面しています。

世界を襲う自然災害に対して、各国政府の対応はほぼ一致しています。


イギリス・フランスはじめ、ユーロ圏の国々は、2040年までにガソリン車とディーゼル車の販売を終了することを宣言しているほか、人口規模の多いインドや中国も自国の汚染を深刻に受け止め、電気自動車の導入に積極的な姿勢を示しています。

つまり、地球を脅かす環境問題に対して、各国政府は団結して取り組む準備を始めています。

現在主流のガソリン車を撤廃して新しい車種に切り替えるのですから、当然、利権構造の刷新が起こるでしょう。
それは既得権の解体行為に他なりません。にもかかわらず、各国の重鎮が電気自動車導入に積極的なのですから、事態は予想以上に深刻なのでしょう。

主要国の政府が急速にエコ意識に目覚めたのですから、大局的には、ガソリン車、ディーゼル車は衰退に向かうと見て間違いないでしょう。


2 ガソリン車の撤廃がもたらすもの

しかし、本当に全ての国が電気自動車への切り替えに賛同しているのでしょうか?

私にはそう思えません。

なぜなら、車が「ガソリンのエンジンで走る」という条件の下で食いつないできた国が世界にはたくさんあるからです。

つまり、エネルギー資源の輸出で食いつないできた産油国にとって、電気自動車への切り替えは死活問題です。

特に資源輸出依存に陥った「レンティア国家」にとって、エネルギーの転換がもたらす影響は無視できません。
代表的なレンティア国家としては、サウジアラビアクウェートアラブ首長国連邦カタールベネズエラバーレーンオマーンブルネイなどが挙げられます。
資源国として有名なロシアもレンティア経済に片足を突っ込んでいます。

このうちのほとんどが中東圏の所属であるように、レンティア国家には産油国が目立ちます。
産油国への需要には当然自動車のガソリン需要が多く含まれていました。
しかし、自然エネルギーが主流になり、自動車の運転にガソリンが使われなくなると、こうした国は輸出先を失います。
資源以外に強い産業を持たないから「レンティア国家」と揶揄されるのであって、エネルギー需要の欠落はレンティア国家を国家存続の危機にすら陥らせかねないでしょう。

以下は、2016年の「世界の石油輸出額」ランキングです。


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自然エネルギーの活用を進めるとはいえ、自然エネルギーだけでエネルギー需要の全てを満たせるわけではありません。
石炭や石油や燃焼させて電力を得る火力発電などの分野で、未だ石油需要は根強いでしょう。

石油からしか作れない製品もたくさんあります。

また、自然エネルギーへの転換は1年後、2年後に突如起こるものでもなく、政府が電気自動車化の期限とする年度も、2030年や2040年など10~20年以上先のことです。
したがって、レンティア国家の後退も短期の期間に一気に進むわけではなく、電気自動車の浸透に沿ってなだらかなに進行することが予測されます。

しかしながら、動力の転換は、業界にとってパラダイムシフト同然であり、レンティア国家の多くが衰退に向かうことは避けられないでしょう。
この変化は、世界にどのような影響を及ぼすのでしょうか?
全て掘り出せば100や200では済まないのでしょうが、自分で考えたいくつかを公開しておきたいと思います。


1)イスラム原理主義者への影響

ガソリン需要の停滞は、世界中で暴れ回るイスラム過激派の息の根を止める可能性が高いです。
ISISは、これまで石油の販売代金やイスラム諸国を中心とする海外からの寄付金、中央銀行支店からの収奪などの方法で資金調達を図ってきたとされます。
しかし、自動車向けガソリン需要の低下によって中東の産油国が打撃を受ければ、ISISの資金調達のハードルが一気に上がることは間違いありません。
石油も以前ほど売れませんから、残された方法は銀行からの収奪です。
しかし、銀行側も略奪を警戒して武装済みでしょうから、強力な武器なしには威嚇することすらままなりません。

そもそも、ISISの問題が電気自動車導入が本格化する2030年頃まで残っているかすら疑問です。
しかし、この勢力の存続にとって、電気自動車と自然エネルギーの普及が致命的な打撃を与えることに疑いはありません。

2)金価格への影響

Let’s GOLDさんによると、
2016年の金産出量上位を占める国は、
1位  中国(15%)
2位  豪州(9%)
3位  ロシア(8%)
4位  米国(7%)
5位  カナダ(5%)
6位  ペルー(5%)
7位  南アフリカ(4%)
8位  メキシコ(4%)
9位  インドネシア(3%)
10位 ウズベキスタン(3%)
となっています。

(出典 : 世界の金産出量の国別シェアと推移 | 金プラチナ相場情報 Let's GOLD)

これらの中から、先ほどの石油輸出量額ランキングに該当する国を抽出します。
すると、これに該当するロシア(8%)、アメリカ(7%)、カナダ(5%)の3国だけで世界の金産出の20%を占めることが分かります。
つまり、この3国が原油需要の低下によって打撃を受けると、金生産の20%に停滞の恐れが出てきます。

金供給が停滞した場合、価格の押し上げ要因となるでしょう。

しかしながら、国家経済が後退するからといって、必ずしも金の生産が全面的に停止するわけではありません。

鉱山からの金産出が20%減少するといった極端な変化は期待できそうにありません。


3)プラチナ価格への影響

プラチナの産出の7割は南アフリカ一国によって担われています。この南アフリカ共和国産油国の含みには入らないため、自然エネルギー化によってガソリン需要が減退しても、財政危機に陥る危険性は低いと思われます。(貿易相手国が倒れることで共倒れする可能性はあり)
しかし、世界のプラチナ生産の約2割を担うロシアは、輸出の半分近くを資源輸出に依存する、主要な産油国のひとつです。
したがって、ガソリン需要減退によってロシア経済が打撃を受けた場合の懸念が指摘できます。

その時までに、ロシアがガソリン需要分を補填できる産業を育成していれば大きな問題には至らないでしょう。
しかし、もしもロシア経済に混乱が生じた場合、プラチナ生産の2割が停滞の危険に晒されることになります。
その場合、供給量の減少は価格の押し上げ要因となるでしょう。

一方、電気自動車はガソリン車のような触媒を必要としないため、触媒の材料であるプラチナ需要を押し下げます。
現在、プラチナ需要の4割ほどは自動車触媒用だとされています。この需要が抜け落ちれば、プラチナ価格は下降に向かう可能性が高い。

そうなると価格に両方向から力が働くことになりますが、「プラチナ価格がどの方向に向かうか」については、未知数としか言えません。

ガソリン需要の減少によってロシア経済が倒れるとは限らないし、もし混乱に陥ってもプラチナ供給の全てがストップするわけではありません。

個人的には、ロシアが担うプラチナ供給の全てが停止したとても、40%を占める自動車触媒の需要を失うことによる価格下落圧力の方がはるかに大きいと考えています。

資源国ロシアの混乱に伴う価格押し上げ効果が期待されるものの、
大局的には、需要の冷え込みとともに、下落の方向に向かうのではないでしょうか?

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