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インド投資、いつやるの?今でしょ 1

インドへの注目が高まっています。

米国は、トランプ大統領の出現で先行き不安が拭えません。

中国も、バブルも過ぎ去り、低成長の局面に突入しています。


こうした中、新たな成長市場として熱い注目を集めているのが、インドです。



インドは、もともと"BRICS"と呼ばれ、2000年頃から成長を有望視されていた国です。

しかしながら、高いポテンシャルとは裏腹に、

格差問題、衛生問題、行政の官僚主義、インフラの問題など、

経済成長の妨げとなる悪要因を多く残していました。

後進国の成長パターンとして、まず製造業が発展する必要があることは、中国が示す通りです。

強い自国資本を持っていなくても、外国の大企業を迎えれば、雇用を増やせます。

雇用が増えれば、所得も増え、国内マーケットが更に豊かになる好循環です。

おまけに、外資が持つ技術吸収のきっかけにもなります。



しかし、これまでのインドは、外資系企業が進出したくなる環境では、とてもありませんでした。

格差は伝統として正当化され、道端には糞尿が散乱、大都市での停電も茶飯事であり、ネット回線も脆弱、行政手続きも官僚的で煩雑

こうした問題が、外資参入の大きな妨げになっていたのです。


そんな中、2014年に「経済改革」の公約を掲げ、ナレンドラ・モディ首相が登場します。

モディ首相は、経済発展のために、規制緩和を伴う改革を提唱しました。

そんなインド投資を

モディ首相の改革を踏まえつつ、示していきたいと思います。





インドの課題

1 インドのこれまで

インドにはカースト制度が根付いています。

これは、中央アジアからやってきたアーリア人が、支配を正当化するために作った身分制度に起源があります。

今でも、インド大陸の北と南で人種の系統は、白色系と黒色系に分かれていますが、

2つの人種に混血が進まなかった理由も、このカースト制度に原因があるといえます。

インドに進出したアーリア人は、原住民との混血を嫌い、人種に基づく身分制度を、当てはめたのです。

つまり白い肌を持つ純系アーリア人を、神の代理人として最高位(バラモン階級)に割り当て、肌の黒い原住民を悪魔と結びつけ、最下層に固定したのがカースト制度の始まりです。

歴史を見れば、進出地の支配権を握った白人層が階級制度で現地民を最下層に落とした例は、

南アのアパルトヘイト(人種隔離政策)などに例がありますが、インドのカースト制も同じ種類のものでしょう。


そんなインドも西洋諸国の植民地主義が押し寄せると、これに飲み込まれます。

インド統治といえば、イギリスと記憶されていますが、あくまでインドをめぐって争ったヨーロッパ諸国の勝ち組というだけです。

むしろイギリスのインド統治が本格化するのは、イギリス東インド会社の勝利が決まった18世紀後半であり、イギリス産業革命の時期と重なっていました。

資本主義には市場と原料供給地が必要です。イギリスのインド植民地統治は、資本主義的な枠組みから展開されます。

西洋的な価値観において、労働者は奴隷です。奴隷階級に落とされた現地民の不満は、1858年のインド大反乱で噴出します。

西洋人が自由を獲得した、つまり絶対王政からの脱却を果たし、近代化を迎えたきっかけは、イギリス名誉革命フランス革命でした。
そうしてみると、インド人の近代化のきっかけは、このインド大反乱に端を発したと言えるでしょう。

インド人が戦った相手、西洋人の絶対王政に該当する対象は、イギリス東インド会社

つまりインド人は、植民地主義、および資本主義への抵抗からアイデンティティを確立したのです。

第二次世界大戦に、ヨーロッパ人と戦った日本を高く評価してくれるのも、

自らのアイデンティティに基づく共感を呼んだためでしょう。


そして時代がすすみ、冷戦時代に入ると、インドは西側の資本主義と距離を置きます。

かといって、東側陣営にもつくこともなく、非同盟外交により国内産業の保護を貫きます。


冷戦期のインドが目指したのは、大国からの抑圧を排した自主独立路線。

つまり、内需の保護と育成を目指した点で、20Cのインドは、鎖国時代の日本のような時期でした。


しかし、市場を外国との競争から閉ざすと、内需は成長しますが、技術革新からは遠ざかります。

異文明の知識が入ってこないし、競争機会を失うためです。このことは、日本史が証明しています。

いざ冷戦が終わってみると、インドは官僚主義の横行する、遅れた後進国になっていました。


独力で行き詰まり、資本主義の受容を求められているインドですが、

イギリスの植民地支配から脱却していく過程で、自主独立の精神が芽生えました。

そのため、外資依存を控えるべく、中国のような大々的な外資解放は敬遠されたままです。

マイペースに市場化を進めているのが今日のインドといえるでしょう。

2 格差問題

インド人の差別意識は、彼らの宗教観と結びつくため、一概には消し去れません。

カースト差別は憲法でこそ禁止されていますが、今日でもインド人の無意識に強く刻み込まれています。

カースト制度の成立は、前1500年ごろに作られた身分制度(ヴァルナ)を起源に持ちます。

有史以降、インド人の宗教は、バラモン教ヒンドゥー教と大きく変遷してきましたが、

根底を貫くヴァルナ制度に変化はありません。(仏教が多数派を占めた時代もあったが、結局はヒンドゥー教に負けた)

つまり、インド人にとって「差別」とは自らのアイデンティに根ざすものなのです。

このヴァルナが形成する階級区分が差別の根源となっています。

つまり、ヴァルナはバラモン(司祭)、クシャトリア(武人)、ヴァイシャ(商工業者)、シュードラ(賎民)の4階級から構成されており、階級ごとに独自の生活規範を持ちます。

ヴァルナの上位に属するほど、その人の「浄」の度合いは高いとされます。

つまり、生まれながらの階級に従って、バラモン、クシャトリア、ヴァイシャ、シュードラの序列が出来ているのです。

しかし、4階級の最下位であるシュードラが最下層というわけではない点に注意が必要です。

インドの差別が問題視される理由は、このヴァルナ(4階級)に属さない「アウト・カースト」と呼ばれる人々に向けられる差別・蔑視の辛辣さに原因があります。

この階層は、生まれながらに「汚れた」存在として、蔑視、虐待、迫害の対象にされます。

就くことのできる職業も、ヒンドゥーの価値観で「不浄」にあたる血、死、排泄などに関わるものに限定されます。

今日でも、不可触民出身者への差別、暴行などが記事に上がることがありますが、

背景には、彼らが思想規範にも等しい「ヴァルナ」に属していないことに原因があるのです。


しかしながら、西洋人との関わりから、インドも近代化を迎えます。

その影響で人権思想が広がると、カースト制度の差別的な側面に、批判が集まるようになります。

インド独立に深く関わったガンディーも、不可触民制度を批判した一人でした。

1950年に定められた憲法は、不可触民を含むカースト差別そのものが禁止する内容になっており、

公職にも不可触民出身者の採用枠が作られました。

こうした努力が功を奏し、1997年には不可触民出身のナラヤナン氏が大統領に就任。

2017年にも不可触民出身のラム・ナス・コビンド氏が、歴代2人目の不可触民出身の大統領として、大統領に就任しています。

こうした動きは一般層にも広がり、高位カースト出身者よりも豊かな経済力を持つ不可触民も増えました。

またインドでIT産業が盛んな理由は、ヴァルナの職業区分に該当せず、実力第一の世界であることも関係しています。


とはいえ、保守的な都市を中心に、低位カースト者への差別がなくなっているとは言い難いのが、現在のインドの状況のようです。

ゴミ拾いや糞尿処理など、最下層の仕事に従事しているのは、やはり不可触民出身の人々がほとんどのようです。


2 インフラ整備

インフラの脆弱性も、インドの経済発展を妨げています。




インドの道路は、ひび割れ、崩れ、戦闘でもあったのかと思うくらい損傷していることが多いです。

そもそも道が舗装すらされていない場所も頻繁に見られます。

雨が降った時、道が舗装されていれば雨水は平らな道を通って、排水溝に流れます。

しかし、コンクリートがひび割れていたり、道が舗装されていなかったりすると、

土やコンクリートの隙間に水が溜まってしまうのです。

湿気の多い場所では、殺菌も繁殖しやすく、悪臭の原因になります。

また、インドの都市を歩き回る牛は現地民から神聖視されているので、牛糞も処理されません。自然処理です。

おまけに、舗装されていない道が多いので、牛糞は雨水や土と一緒に飛散し、衛生問題に拍車をかけてしまいます。

雨水や糞尿を吸収し、ぬかるんだ臭い道を歩きたがる旅行者はいません。


送電網の問題も山積みです。

インドは根強い電力不足の問題を抱えており、都市での停電は日常茶飯事です。

筆者は、バンガロールにある「ブリゲードロード」という大型のショッピングストリートで停電に遭遇したことがあります。

夕方だったので、辺りは真っ暗したが、ストリートに並ぶお店は、外国人向けの高級品の取り扱いがある店ばかりです。

そのような場所ですら停電が起きるのでは、リスクが高すぎて外資系企業も投資できません。

また停電が起きると、ネット回線も止まってしまいます。

各国がお金持ちの投資家を呼び込むべく、しのぎを削っていますが、

突然の停電、ネット回線の断絶があるような国で、仕事をしたがる投資家はまずいないですよね。

このように、インフラが弱い国に、資本は集まりません。


3 衛生問題

インドの衛生問題は、道路インフラの不備だけが原因ではありません。

市民の衛生観念の欠如は、明らかな問題です。

インドでは、市民のゴミのポイ捨て、立ち小便は、日常の光景と化しています。

こうした行いは先進国では市民から睨まれるのですが、インドでは常識なので、誰も疑問を差し挟みません。

人の糞尿は、ヒンドゥー教的に「不浄」なので、茂みに隠れてやるのがOKなのです。

さらに、ゴミのポイ捨ても日常で、自然に還らない工業製品のパッケージ、缶などが次々と投げ捨てられるので、街はゴミで埋め尽くされていきます。

市民の日常食であるフルーツの皮や食品の食べ残しなどが、腐敗して悪臭を発するケースもよく目に付きます。

近代的な衛生観念がインド人にはないのです。


さらに、近年は経済成長を遂げたことで、自動車やバイクを利用する人が増えてきました。

インド人が乗り回す自動車やバイクは、たいていが先進国産の中古品です。

安さをいいことに、排ガス規制をクリアしていないものもありますが、衛生観念がない市民は平気で使います。

おまけに、13億人の巨大人口が、大気汚染を深刻なものにしています。

ある調査の報告によると、ニューデリーでの1日間の滞在は、喫煙10本分に相当するそうです。

そんな健康被害の心配のある都市に、外国人が訪れたがるわけがありません。


インドの特異点

多くの問題を抱えるインドですが、やはり、ただの遅れた途上国ではありません。

謎めいたインドが持つ特異点について説明したいと思います。

製造業ボーナスなしでの経済発展

インドは、資本主義国イギリスに蹂躙された歴史を持つ国です。

その反省から冷戦期は保護主義で通しましたが、冷戦が資本主義陣営の勝利に終わると、インドも世界経済に包摂されます。

しかし長年の保護政策により、保守的な法律、慣行、またインフラ整備の遅れなどが目立ちます。

また植民地時代に根付いた産業構造のせいで、世界で戦える大企業を育てることもできませんでした。

そうなれば、中国のように市場開放策をとるしかありません。

しかし、インドが持つ保護主義の伝統と外資企業との相性は悪く、おまけに国内環境の悪さは、とても外資を誘致できませんでした。

窮地に立たされたインドは、「0の概念」を生み出した数学的才能と、イギリス統治下で獲得した英語能力でした。

その能力は、人口規模の大きさと相乗的に働き、大きな成功を収めていくのでした。


冷戦が終結した1990年代以降は、ちょうどITが世界的に普及していく時期にあたります。

ITを世界に普及させるには、ITインフラを支える優秀なエンジニアが大量に必要だということです。

インド人は、持ち前の能力をいかんなく発揮して、このトレンドの中で成功を収めます。

インドといえば、「IT大国」の呼称が定着していますが、それはインド国内のITインフラが成熟したのではなく、

大量の優秀なインド人エンジニアを世界市場に供給することで勝ち取った称号といえるでしょう。

もともと数学的素養が高く、英語も理解できるインド人は、ITへの適性が高かったのです。

インド政府がITを重視する教育を始めると、優秀なエンジニアが大量生産されます。

市場は優秀な才能を無視することはありません。

2000年以降のインドには、世界企業からのBPO(ビジネスプロセス・アウトソーシング)、開発拠点の設置などが相次ぎました。

全ては、安くて優秀なインド人材を囲い込むためです。

2012年の時点で、インドのIT-BPO(IT系開発プロセスの受注)は総額10兆円規模だとされており、これは世界全体の58%に達します。

また、インド国内で受注を受けるだけでなく、インド人も先進国の富を求めて、出稼ぎに出て行きました。

アメリカでは、2000年から2008年までの間、インド人技術者に発給されたビザの数が毎年10万人を超えていたとされます。

それだけではありません。

使い捨ての出稼ぎであるはずのインド人エンジニアは、先進国を代表する名門企業の中枢を占めるようになっているのです。

例えば、以下のような人たちが有名です。

サンダー・ピチャイ - Googleの現最高経営責任者(CEO)
ニケシュ・アローラ - 元グーグルの上級副社長、元ソフトバンク代表取締役副社長
アミット・シングハル - 元Google上級副社長、元Uber幹部
ヴィック ガンドトラ - 元Google最高責任者

グーグル(現アルファベット)といえば、アップルに次ぐ世界第2位の時価総額を持つ多国籍企業です。

アメリカを代表するグーグルの中枢に多くのインド人材が就いているのです。

上級幹部だけでもインド人材が目立つのですから、末端まで含めるとインド人雇用者の数はさらに多くなるでしょう。

またマイクロソフトでは、全社員の36%がインド系人材だとされています。

ラクルは、インドの最高学府であるインド工科大学の学生に対して、初任給で年収1300万ルピー(約2200万円)のオファーを提示したといわれます。

アメリカで成功を収めたインド人の海外送金が、大きな額になることは疑うまでもありません。

このように、インドの発展は、人材の能力に牽引されたものであり、

中国がとったような外資系製造業による内需拡大」は十分に発揮されていないのです。

つまり、これまでのインドは重い道着を着て戦っていたに等しいのです。

これが外された時、インドの真の発展が始動することになります。


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製造業ボーナスを使わずにこの曲線を描いてしまう




モディ首相の掲げるモディノミクス

インドの諸問題は貧困問題が原因

インドが抱える問題の根底には、貧困問題があります。

衛生問題も、貧困が常識だからです。「所得の低い層は汚い環境で済むのが当たり前」という了解があるのです。

インフラの崩壊が無視されるのも、同様の了解のためです。

実際、憲法で禁止されたはずのカースト差別が残ってしまうのは、所得の分断に原因があるのではないでしょうか?

家柄と教育機会に恵まれた層は、経済成長の恩恵を受け、先進国水準の中流並みに成長していますが、

極貧層は、下層階級を認めるヒンドゥー教の論理も災いして、発展から取り残されてきたのです。

衛生や栄養の問題を被っているのは、貧しい農村の人々です。

つまり、国民所得を底上げすれば、インドの諸問題は解決に向かいます。

これまでのインドの発展は、人材の能力に牽引されてきました。

出稼ぎに出たインド人材が先進国企業の歯車になるか、海外からアウトソーシングを受注することで、国富を増やしてきたのです。

この輝かしい成功を支えたのは、大学教育まで受けることのできる限られた層でした。

学校にすら通えない貧困層は、常に発展の枠外に置かれ、取り残されてきたのです。

しかし、これからのインドは学校に通えない貧困層にもチャンスが与えられます。

なぜなら、モディ首相が、外資規制の緩和を推進しているためです。

外資規制が緩和されれば、インドの安い金労働者を求めて、インドに生産拠点が作られます。

こうした世界企業がインド人に、差別なく働き口を提供していくのです。

長くなるので、続きは次回に回します。