気になったことなど

文化とは次世代に向けた記録であり、愛の集積物である。

南アフリカ共和国のBRICS加盟に覚える違和感から加盟の理由について考えてみた

BRICsからBRICSの呼称変更に伴い、新興国の仲間入りを果たした南アフリカ共和国


豊かな鉱山資源を擁し、アパルトヘイト撤廃後の新しい体制に投資家の期待が高まっています。

f:id:Illuminated29:20170925210154p:plain

とはいえ、他新興国に比べて人口規模の小さな南アフリカBRICSの名を冠することに違和感を覚えませんか?

私は、覚えます。ロシア、インド、中国、ブラジルらに比べて、南アフリカは明らかに規模も歴史も弱い。

資源は、豊かだけど人口は日本の半分以下などマーケット規模は明らかに小さい。

人口は上昇傾向にあるものの、平均寿命は57.182歳(2014年 : 世界174位)。

一方で、殺人発生率は世界8位(2014年 : 34万2700人)、またHIVの感染率17.90%(世界第4位)など、

はっきりいって、途上国にありがちな治安の悪さを引きずった犯罪国家です。


どう見ても、新市場としてふさわしいと思えないこの国に、なぜスポットライトが当てられているのでしょうか?

今回は、南アフリカ共和国BRICS加入の理由について考えてみたいと思います。





1 他新興国に比べて脆弱な南アフリカ共和国のスペック

以下の表は、wikipediaの「BRICs」記載のBRICSの国の一覧です。

この表を見て、違和感を覚えませんか?

新興国は、一般に国土面積の広さ、人口規模の大きさ、豊富な資源の条件を備えた国が選ばれます。

しかし、南アフリカは、世界の白金の産出の70%以上を担うなど、豊富な資源埋蔵量を誇る一方で、

国土面積は121万9,090km2(第24位)、人口は5591万人(2016年 : 第24位)といまいちパッとしません。

また冒頭で述べたように、治安、衛生問題に課題が残り、殺人発生率は世界8位、HIV感染率は世界第4位です。

また、歴史的にも1994年の廃止まで民族分離政策(アパルトヘイト)が続いていた国で、犯罪発生率の高さからも、国内の統一性に欠ける印象を受けます。


民族構成は、黒人のバントゥー系民族(79.4%)、白人(9.2%)、カラード(8.8%)、印僑系中心のアジア系(2.6%)とされています。

しかし、アパルトヘイト廃止後の白人への逆差別を背景に白人の流出傾向が続いたり、近年は中華系人の流入が相次ぐなど、民族構成の割合は流動的です。

言語は、11の公用語を持つとされますが、実質的に機能しているのは英語だけのようです。

宗教は、36.6%がプロテスタント、7.1%がカトリック、1.5%がムスリム、36%がその他のキリスト教とされるほど雑多で、
国内の不統一の原因の一つになっていることが予測されます。



2 南アフリカ共和国の特徴

南アフリカ共和国は、大航海時代のアジア交易の拠点となった喜望峰を擁する土地で、ケープ植民地を起源に持ちます。

西洋諸国との関わりが長いことから、その影響も強く、公用語の英語は、植民地時代に普及しました。
国民の多数派を占めるバンドゥー系民族にとっては、第二言語ですが、民族の出自を問わず学校教育で習います。

南アフリカ共和国自由貿易協定への積極さには、この英語普及率の高さや外国との関係の深さが関係しているのでしょう。


現在、南アフリカ共和国は、世界各地との自由貿易協定を推進しており、時勢に応じてその範囲を拡大しつつあります。

アフリカの自由貿易協定には、2つの主体があり、南部アフリカ関税共同体と南部アフリカ開発共同体に分かれます。
このうち、南部アフリカ関税共同体(SACU)は、1910年に発効した自由貿易協定で、1世紀以上に渡る歴史を持つ、世界最初の関税同盟とされています。
加盟国は、アフリカ南端の5カ国(南アフリカレソトスワジランドナミビアボツワナ)です。

一方の南部アフリカ開発共同体(SADC)は、アフリカの統一市場化に向けた第一ステップとして作られた地域ブロックの1つで、最終的にはアフリカ内に作られた他ブロックとの統合が予定されています。
加盟国には、南アフリカアンゴラボツワナコンゴ民主共和国レソトマダガスカルマラウイモーリシャスモザンビークナミビアセーシェル南アフリカ共和国スワジランドタンザニアザンビア、ジンブバエの15カ国が加盟しています。

アフリカ以外の地域と自由貿易協定を結ぶ場合は、この2つのいずれかの主体との間に締結されることが多いです。


現在、南アフリカ共和国が参加している貿易協定としては、以下のようなものがあります。

1 COMESA-EAC-SADC

f:id:Illuminated29:20170925202857p:plain:w200

アフリカ大陸の経済統一に向け、2015年に東アフリカ共同体(EAC)、東南部アフリカ市場共同体(COMESA)と南部アフリカ関税同盟(SADC)の間に締結された自由貿易協定です。
これは、最終的にアフリカの統一市場化に向けた域内統合政策の一つです。これまで各ブロックごとに分かれて進めてきた自由貿易を、統合された市場のもとで進めていきます。


2 EUとの自由貿易協定

2016年にSDCAとEUの間にEPAが署名されています。EUにとって、南アフリカ共和国はアフリカ最大の貿易相手国だとされています。


3 欧州自由貿易連合

f:id:Illuminated29:20170925202949p:plain:w200

欧米4カ国で構成されるEFTA(スイス、リヒテンシュタインアイスランドノルウェー)と南アフリカ共和国の間に2008年に発足した自由貿易協定。


4 SACU-メルコスール特恵貿易協定

f:id:Illuminated29:20170925203027p:plain:w200

南米地域(SAU-EFTA アルゼンチン、ウルグアイパラグアイ、ブラジル、ベネズエラ)とSACUの間に2016年に発効された自由貿易協定。

5 AGOA(アフリカ成長機会法)、TIDCA

アメリカとの間には2種類の協定があります。

AGOA(アフリカ成長機会法)は、アメリカの国内法で制定されたアフリカ諸国の産業育成を図る法律です。締結国で生産された製品のうち、一定の基準を満たしている製品は関税なしで米国に輸出できるというもの。有効期間は2025年まで。

もう一方のTIDCAは、貿易と投資、開発協力に関する協定とされ、相互協力の促進を目的に、SACUとの間に2008年締結されています。


これらの協定は、今後さらに適用する分野や地域が拡大される可能性があります。

また、現在審議中の貿易協定としては、インドとSACUのPTA (特恵貿易協定)があります。
 (PTAとは、特恵貿易地域 : 特定の国の製品に対して優遇的な扱いを与える貿易ブロックのこと。関税について完全に廃止しないまでも税率を下げるようなことが行われる。)


南アフリカ共和国にある喜望峰は、かつて大航海時代の海運の要衝として重要視されました。
この喜望峰を経由してヨーロッパや新大陸とアジアの都市が交易を行っていたのです。
南アジア共和国は、その地の利を生かし、世界中の国々との間に自由貿易協定を進めています。



3 南アフリカ共和国BRICSに選ばれた理由(私見)

SADC(南部アフリカ開発同盟)の説明でも触れましたが、アフリカ経済は域内統合に向かって進んでいます。

1991年の「アブジャ条約」によって、2028年までの大陸統一通貨「アフロ」の導入、アフリカ経済共同体の創設が宣言されると、

推進団体である「アフリカ統一機構」は、より強い権限を与えられた「アフリカ連合」に改組されます。

この「アフリカ連合」が目指す最終的な目標は、EU(欧州連合)をモデルとした、アフリカ大陸での経済統合です。

そのためにアフリカ大陸は、1991年のアブジャ条約によって、ブロックに区分けされました。このブロックは最終的な統合を前提にしています。

すなわち、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)、中部アフリカ諸国経済共同体(ECCAS)・東アフリカ共同体(EAC)・ 南部アフリカ共同体(SADC)・アラブ・マグレブ連合(AMU)・東南部アフリカ市場共同体(COMESA)です。


2019年には、各共同体が統合され、ブロック内での統一通貨が導入されます。

2023年にはアフリカ大陸全域の共通市場を創設。

最終段階の2028年には大陸統一通貨を導入し、アフリカ経済共同体(AEC)を創設することを目指しているようです。


現在でこそ部族ごとの住み分けができているアフリカも、最終的にはEUのような地域ブロックに向かうようです。



南アフリカ共和国の役割も、こうしたアフリカ大陸が直面している地域統合の流れからを考えなければなりません。


ちなみに、アフリカの経済統合が完成した場合、域内人口は11億8759万6,442人(2016年推計)。
国土面積30,312,248km2は暫定1位。
GDPは、推計で4兆9573億ドル。(2016年推計)とされています。


つまり、資本主義は新たな開発拠点を求めてアフリカに巨大市場を創設する意向です。

治安の問題もあり困難ではありますが、この計画が果たされると、アフリカに人口11億人8759億人を擁する巨大マーケットが出現することになります。

だとすれば、南アフリカ共和国BRICS加入も、来る地域統合を前提にしたものである可能性が高い。



実際、南アフリカ共和国の都市ヨハネスブルクには、アフリカ最大の証券取引所であるJSEが所在し、「アフリカ最大の金融センター」と評価されています。

鉄鋼やセメントを中心とした工業も盛んであり、南アフリカの経済の中心地であるため、テレビ局や新聞社、出版社も多く、文化の中心ともなっているそうです。

また南アフリカ共和国は、実質GDPはアフリカで一番です。

名目GDPのランキングではアフリカ第3位となっていますが、これは1位、2位と並ぶナイジェリアとエジプトに近年顕著な高インフレが影響しています。

これを考慮すれば、インフレ率1桁台に収まる南アフリカ共和国が優勢でしょう。

実際、実質GDPに直すと、南アフリカ共和国は世界27位と、アフリカ勢の中で最も高い順位となっています。


希望峰を抱える南アフリカ共和国は、東西の交接点に位置し、文明のゲートウェイの役割を果たしてきました。

その大航海における重要性から投資も盛んに行われ、近代的な金融や交易のシステムが備えた同国は、アフリカ開発の中心地となっています。

その経済力は、アフリカNO.1。

そうした貢献への評価とともに、来るべきアフリカ経済共同体創設への中心的な活躍が期待されているからこそ、南アフリカ共同体はBRICSの一員に加えられたのではないでしょうか?

つまり、アフリカの経済統合が叶った暁には、南アフリカ共和国は統合市場の中心都市になる可能性が高いということです。

body { font-size : 8px; }