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ユーラシア連合の貿易構造

ユーラシア連合の構想は、現在交渉段階であり、加盟が決定している国は3カ国に過ぎません。

今回の記事では、ユーラシア連合を構成するロシア、カザフスタン、ベルラーシの3カ国と

現時点の候補国であるキルギスタジキスタンアルメニアの貿易構造を見ていきたいと思います。


ロシア中心の地域ブロック「ユーラシア連合」は、EUを模範とした政治、経済、防衛、議会の統一を目指す構想です。

メンバーは、旧共産圏の国々から構成されていますが、事実上のCISの復古ですから、すべてのメンバーが合意を表明しているわけではありません。

ウクライナグルジアなどEU側への参加を希望している国もあります。

現時点ではまだ構想段階ですが、加盟が決定しているのは、カザフスタン、ベルラーシ、ロシアの3国だけです。

候補には、キルギスタジキスタンアルメニア中央アジア西アジア圏の国々が挙がっていますが、

キルギスタジキスタンは中国から目と鼻の先に位置しています。

実際、中国も中華圏を拡大させるべく、これら隣国と交渉の最中だとされます。

これに対してロシアは中国の「一帯一路」政策に賛同の意を示していますが、

それも工業力に乏しく、

反米の狼煙を上げても独力では歯が立たないことを理解しているためでしょう。

そのため、譲歩することで中国の国力を利用しつつ、中央アジアへの拡大を阻みたいのです。

しかしながら、ユーラシア連合の候補国から見ても、

先進国の支援によって工業国へ昇格した中国と半レンティア国家のロシアのどちらについた方が有利かは明らかでしょう。

ロシアには、資源以外に強い産業を持たない弱点があり、日本の工業力を継承した中国との国力の差は限りなく広いといえます。

またおそらく候補国が持つ属性もロシアと同じ資源国や農産国の類であり、連合のメリットも中国圏に比べると小さいです。

したがって私は、ユーラシア連合に肯定的なキルギスタジキスタンアルメニアの加盟にも懐疑的です。

強烈な反中意識でもない限り中国圏に加わるか、

あるいはインドの地域ブロック「南アジア地域協力連合」が回収していくのではないでしょうか。

とはいえ、まだまだ直感的な印象レベルの判断に過ぎないため、

とりあえずユーラシア連合の加盟国と候補国を合わせた6カ国の調査を行いたいと思います。

GDPは2016年のデータを採用

1 ロシア連邦(GDP : 1兆2807億ドル[世界第12位])

主要産業 : 鉱業、鉄鋼業、機械工業、化学工業、繊維工業
輸出 : 燃料、鉱物製品、鉄鋼、貴金属
輸入 : 機械類、医薬品、衣類

2014年には2兆2231億ドルを計上していたロシアのGDPは、2015年の原油価格の暴落をきっかけに2016年には1兆2800億円台まで下落しています。

このことが示すように、ロシアは資源依存に陥っており、資源の国際市場価格に景気が左右されやすい特徴を持ちます。

2015年の原油暴落の後もGDPの落ち幅を補うだけの産業力に乏しく、輸出に占める一次産品の割合は8割を超えます。

プーチン大統領は、資源輸出で獲得した外貨を設備投資に回して繁栄の基礎を築こうとしていますが、

ロシアは人口減少や貧困率の高さなど依然国内問題を抱えており

すでに発展局面に入った中国、成熟国家の米日、EUといった勢力に独力で対抗するのは若干の無理を感じざるをえません。

そうであれば、資源依存国ロシアが喉から手が出るほど欲しているのは、強力な工業力を備えた国といえるでしょう。


2 カザフスタン(GDP : 1337.6億ドル[世界第57位])

主要産業 : 鉱業、農業、冶金・金属加工
輸出 : 石油、石油製品、金属・金属製品、化学製品、食料品
輸入 : 機会設備、化学製品、食料品、金属・金属製品、鉱物製品、繊維製品

カザフスタンは、採掘量が世界10位以内に達する地下資源が9つも存在しているとされ、豊富な鉱物資源に恵まれています。

輸出品目も原油をはじめ天然ガス、精製銅、ウラン、合金鉄と地下資源に偏っており、資源依存型の経済となっています。

輸出の主力はロシア同様、原油であるため、原油価格の影響を受けやすい経済構造となっています。

カザフスタン政府は、原油依存型の経済構造から脱却するべく非石油部門の強化・拡大を図ることを重要課題の一つと位置付けています。

輸出の7割を占める石油・天然ガスウランなどのエネルギー資源を、原料のまま輸出するのではなく、

自国内で加工し付加価値を高めた状態で輸出することを目標とする工業化を目指しています。

農業も盛んな国で、国土の70%以上が穀物栽培や牧畜に使用されています。

これを背景に小麦を中心とする農産物の輸出も行われています。

輸入に関しては、資源開発に必要な機械設備などの生産材が中心であり、自動車を中心とする耐久消費財についても海外からの輸入に依存しています。


3 ベラルーシ共和国(GDP : 488.5億ドル[世界第81位])

主要産業 : 工業、商業、農林水産業、建築業、運輸・物流業、不動産業、情報通信業
輸出 : 鉱物、化学製品・ゴム、機械・輸送機械、食料・農産品
輸入 : 鉱物、機械・輸送機械、化学製品・ゴム、食料・農産品


ベラルーシの経済力は、旧ソ連構成国の中では、ロシア、カザフスタンに次いで3番目にあたります。

ベルラーシは、「社会志向型市場経済」と呼ばれるソ連時代からの社会主義を踏襲した経済システムを採用し、

ロシアから安価で原油を売却してもらうこと、自国製品をロシア市場に輸出できるなどの条件の下でロシアとの共生関係を深めてきました。

ベラルーシは、ロシアやカザフスタンと違って天然資源に乏しいため、工業化を進めています。

自動車や自動車部品を扱う製造業や繊維業や化学工業などの軽工業の輸出も盛んです。

原油は自国内の消費量の数割をまかなうことができる程度しか取れないので輸入に頼っています。

企業の大部分は国営だとされ、輸出入は政治動向も関係してロシアとの間で大部分が行われています。

最近のベルラーシは、ロシアへの経済依存を強めており、半ば掌握される形になりましたが、

ロシアから民主化の遅れを理由に補助金を打ち切られると、今度は中国への接近を強めています。

ベラルーシは、資源の乏しさから工業力を身につけた国として、ユーラシア連合の重要拠点となるでしょう。


4 アルメニア(GDP : 105.0億ドル[世界第133位])

主要産業 : 農業、宝石加工、IT産業
輸出 : 食料加工品、アルコール・ノンアルコール飲料、硫黄・土類、鉄鉱石、燃料
輸入 : 穀類、動物性・植物性食用油脂、タバコ類、製薬品、化粧品など日用品

国土の90%以上が高地にあるアルメニアは、GDPの40%を鉱物資源に支えられています。

農業セクターも大きく、GDPの25%ほどを占めているとされます。

しかし、鉱物部門も農業部門も資源価格や天候に左右されやすく安定性に欠けます。

鉱物を取り出すだけでなく、採掘した鉱物を加工して付加価値を加える鉱工業も発達しているようです。

また、軽工業ソ連時代からの伝統を持つIT産業も根付いています。

エネルギー資源には恵まれていないため、ユーラシア連合への加盟は、石油供給をロシアから有利な条件で獲得できるチャンスとなりそうです。


5 タジキスタン(GDP : 69.2億ドル[世界第142位])

主要産業 : 農業、アルミニウム生産、水力発電
輸出 : 繊維・繊維製品、電力、青果
輸入 : 石油製品、鉱物、小麦・小麦粉、動植物油、砂糖・菓子類

タジキスタンは山岳地帯に国土を持ち、その地理的条件を生かした水力発電や農業が盛んです。

GDPに占める農業の割合は、25%程度。工業は25%程度。残りがサービス業となります。

輸出の約半数はアルミニウムが占めますが、原料となるボーキサイトを他国からの輸入に依存する構造から

タジキスタンが利益の全てを吸収できているわけではありません。

タジキスタンもまたエネルギー資源に乏しいため、ユーラシア連合を通してロシアとの関係が深めることができれば、十分なメリットが得られるでしょう。


6 キルギス(GDP : 65.5億ドル[世界第145位])

主要産業 : 農業・牧畜業、鉱業
輸出 : 貴金属、鉱物製品、繊維製品、青果
輸入 : 鉱物製品、運輸関連製品、機会設備、化学製品


キルギスは、国土の40%が標高3000mを超える山岳地帯に位置しています。
地下エネルギー資源には乏しいものの、
隣国のタジキスタン同様、水資源には恵まれています。
そのため山岳の高低差を利用しての水力発電が盛んで、電力も輸出されています。

農業ではタバコ、綿花を盛んに輸出し、牧畜業や鉱業も活発です。

石油製品や天然ガスの輸入が欠かせないらしく、ロシアとの関係を切れないようです。



雑感
現時点でユーラシア連合への加盟が決定しているのは、ロシア、カザフ、ベラルーシの3国。

このうちロシアとカザフは、資源依存国です。そしてベラルーシは人口規模も小さく工業力の発展も限定的で、おまけに中国の手が伸びてきている。

仮に3カ国が無事に連携をとれても、他ブロックと比べて資源1点張りの感じが否めない。

また、加盟に前向きなタジキスタンキルギスも、カザフスタンの南、中国の西隣、インドブロックの北という3ブロック全員に手の届く位置です。

また、国民の大多数がイスラム教徒で占められることから、南のアフガニスタンとも相性がよい。

中国も地理的拡大を重視するため、獲得に乗り出すでしょう。そうなると、3ブロックでの奪い合いは避けられないのではないかと思います。


アルメニアに関しても、隣国で同じキリスト教国のグルジアのEU加盟と、隣国のイスラム教国のアゼルバイジャンとの不和を考えれば、

ユーラシア連合よりもEUの方が有利な立場にあるのではないでしょうか。

もしこの6カ国が結成しても、不完全な形でのソ連の再結成であり、肝心の工業力に乏しく頼りない感じは否めません。

プーチンが中国と共同しようと必死な背景が理解できた気がします。

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