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東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の貿易構造 ASEAN

東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の構成国は、前記事でお伝えした日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドのほか

ASEAN10カ国を加えた計16カ国からなります。

ASEAN10カ国以外の国々は、日中韓・インドの工業国とオーストラリア、ニュージーランドの資源国という組み合わせで、

RCEPの構想が実現すればバランスのとれた連携を発揮できるでしょう。

本記事では、残りの加盟国であるASEAN10カ国の内情について調べていきたいと思います。



1 インドネシア(GDP : 9324.5億ドル[世界第16位])

主要産業 : 製造業(20.5%)、農林水産業(13.5%)、商業・ホテル・飲食業(16.1%)、鉱業(7.2%)、建設(10.4%)、運輸・通信(8.8%)
輸出 : 脂肪・油(13%)、鉱物燃料・油(11%)、電子機器(6%)
輸入 : 一般機械(18%)、電子機器(13%)、プラスチック・プラスチック製品(6%)

日本にとっては、天然ガスの輸入第一位の重要国です。

周辺に多くのプレートがせめぎ合っており、全土に多くの火山があることが世界一ともいわれる地震の多さにつながっています。

一方で噴火による火山灰は、大地の肥沃化に貢献する面もあり、インドネシアの活発な農業を下支えしています。

インドネシアの農産品の中でも、パームオイルは、洗剤・シャンプー・化粧品の原料として需要が見込まれ、世界の生産の35%ほどがインドネシア一国から生み出されています。

また鉱物資源にも恵まれており、多くの資源メジャーが進出しています。

輸出品目の主力は一次産品であり、そのため景気が資源価格に左右されやすい特徴を持ちます。

軽工業は確立しているものの、輸出向け製造業の発展においては、タイやマレーシアの後塵を拝しており、

現状は工業国というより一次産品輸出国という位置付けにとどまっています。

外資が安心して進出できるだけのインフラや法整備が整っていない状況であり、工業化を果たすためには欠かせない条件だとされます。

インドネシアの経済成長は、2億5000万人の人口を生かした内需主導型だといわれています。


2 タイ(GDP : 4069.5億ドル[世界第26位])

主要産業 : 農業(就業人口40% : GDP 12%)、製造業(就業人口15% : GDP34%)
輸出 : コンピューター・コンピューター部品、自動車・自動車部品、機械器具、農作物、食料加工品
輸入 : 機械器具、原油、電子部品

共産主義の防波堤」としてベトナム戦争の時代からアメリカの影響を強く受けてきたタイは、自由主義の受容も早く、ASEAN上位の豊かな経済が発展しています。

1945年以降の軍事クーデターの発生件数が19回にも上るなど、政治リスクが残るものの、貿易は堅調に経常黒字の傾向を維持しています。

1980年以降は外資受け入れを伴う規制緩和が進み、

ASEAN諸国への進出拠点を求める外資の呼び込みに成功した結果、

外資主導で工業化にも成功しました。

輸出品目には、自動車とその部品、コンピューター製品とその部品が並びます。

また農業も盛んで米や、芋、エビ、ゴムなどの食材品、及び食材に加工を加えた缶詰なども積極的に輸出されています。

輸入品目には、機械器具や電子部品など工業製品の原材料が並んでいます。

ASEANではAFTA”ASEAN Free Trade Area”と呼ばれる自由貿易協定が締結されており、域内での貿易をほぼ無関税で行うことができます。

したがって、ASEAN市場を取り込みたい外資企業にとっては、ASEAN内に軸となる拠点を作り、他ASEAN市場に進出することが望ましいわけです。

タイは、そうした外資の要望に応え、国を外資企業の活動拠点として開放することで、他ASEAN諸国に先駆けて外資誘致に成功したといってよいでしょう。

ASEAN域内の自由貿易協定であるAFTAもタイ政府から出された案でした。


3 フィリピン(GDP : 3047.0億ドル[世界第36位])

主要産業 : 農林水産業、コールセンターなどのビジネスプロセス・アウトソーシング(BPO)
輸出 : 電子・電気機器、輸送用機械、石油製品、ココナッツオイル、農産品、木材
輸入 : 原料・中間財(化学製品などの半加工品)、資本財(通信機器、電子機器)、原油など燃料、消費財

フィリピンは基本的には農業国だとされます。

熱帯に属することから様々な作物を作ることが可能で、就労人口の30%が農業に従事しています。(GDPの14%)

工業部門は、就労人口の14%を占め、GDPの30%を計上しています。

部門としては、食品加工、製糖、繊維などの軽工業が盛んです。

フィリピンの工業化は、マルコス大統領の時代に米国に対して反共主義をとる見返りに工業化の支援を得たことに始まります。

しかしながら、その後の共産党系の新人民軍やイスラーム教が主流を占めるモロ族との内戦が激化すると、

国内の混乱が外国企業を呼び込む上での障害となり、

インフラの脆弱さも助けて工業化はいまなお停滞しています。

鉱業部門においては、かつてはインドネシアに次ぐ東南アジア有数の鉱産国でしたが、80年代以降、停滞しています。

しかしながら、各地で優良な金鉱や銅鉱が発見されており、鉱業のポテンシャルは高いとみられています。

なお、1日2ドル未満で暮らす貧困層の割合が国民の40%以上を占めており、貧困対策が求められています。


4 シンガポール(GDP 2969.7億ドル: [世界第37位])

主要産業 : 製造業(エレクトロニクス、科学関連、バイオメディカル、輸送機械、精密機械)、商業、ビジネスサービス、運輸・通信業、金融サービス業
輸出 : IT製品(34.1%)、石油製品(18.3%)、化学品(14.0%)
輸入 : 石油製品(32.5%)、IT製品(27.3%)、一般機械(13.3%)

人口560万7000人の都市国家ながら、1965年の独立以後の積極的な外資導入の結果、ASEAN屈指の工業国に成長しています。

工業化のため外資誘致に特化したため、独立当初より租税・ビジネス環境の優遇策が取られており、国際社会から高く評価されています。

シンガポールは香港と並ぶ金融セクターとして有名ですが、香港に比べると製造業の輸出の発達が進んでいます。

輸出に関しては、34.1%が半導体など電子製品を含むIT製品、石油製品の18.3%、化学製品と一般機械がそれぞれ14.0%と続きます。

全体的に先端技術と高度人材の獲得に成功している印象を受けます。

一方の輸入は、石油製品が32.5%でトップを占めています。2位はIT製品の27.3%、一般機械など資本財が13.3%と続きます。


5 マレーシア(GDP : 2963.6億ドル[世界第38位])

主要産業 : 製造業(電気機器)、農林業(天然ゴム、パーム油、木材)、鉱業(錫、原油LNG)
輸出 : 電気製品(32.9%)、パーム油(8.8%)、石油製品(8.5%)、化学製品、LNG、金属製品、化学工学設備、ゴム製品
輸入 : 電気製品(27.7%)、原油・石油製品(14.1%)、製造機器、化学製品、輸送機器、金属製品、鉄鋼製品、化学工学設備、食料品

マレーシアはタイと同様、外資誘致による輸出志向工業化路線の成功の結果、ASEAN屈指の経済成長を実現しています。

マレーシアはもともと天然ゴムやパーム油などの一次産品が主体でしたが、

1985年にコモディティ価格の急落により貿易赤字に陥ったことをきっかけに工業化に舵を切ることになります。

1980年時点において輸出に占める一次産品(ゴム、錫、材木、パーム油、原油)の割合は6割を超えていましたが、

1985年に行われた規制緩和を機に低下に向かいます。

これは、外資系製造業の誘致により輸出に占める工業製品の比重が上昇したためです。

1980年代以降、マレーシアの貿易品目は反転します。貿易に占める工業製品の比重は上昇を続け、

2005年には工業化の進展を反映して工業製品が輸出の半分を占めるようになりました。

電気製品を構成する品目の主力は、半導体集積回路などの電子部品です。

また錫や金、ボーキサイトなどの鉱物資源、また石炭、原油天然ガスなどの有機鉱物資源など、一次産品の生産も堅調です。

これはプラザ合意による円高に悩む日本の電子企業が、1985年のマレーシア政府の規制緩和に目をつけて進出を加速させた結果だとされています。


6 ベトナム(GDP : 2013.3億ドル[世界第48位])

主要産業 : 農林水産業、鉱業、工業
輸出 : スマホなど電話機(16.1%)、縫製品(13.6%)、コンピューター(8.0%)
輸入 : 機械設備(14.1%)、コンピューター(13.4%)、綿布、生地(6.4%)

ベトナム社会主義共和国」という名称からも分かる通り、社会主義国として出発したベトナムの工業化は遅れています。

冷戦が終結した1991年ごろに「資本主義の導入」を謳うドイモイ政策を本格化させると、2007年にはWTOに加盟。

このWTO加盟を契機にベトナムへの投資ブームが起こっています。

従来の輸出品目の主役は、付加価値の低い軽工業品や天然資源が占めていましたが、

徐々に付加価値の高い携帯電話や半導体などの電子機器にシフトしてきています。

それに合わせて、輸入も機械設備などの資本財が見られ始めています。


7 ミャンマー(GDP : 663.2億ドル[世界第72位])

主要産業 : 農業
輸出 : 天然ガス(43%)、豆類(17%)、木材(10.2%)、衣類(7.6%)、米()、
輸入 : 一般機械、石油製品、製造品、化学品、食品

社会主義による事実上の鎖国政策と、その後の軍事政権の民主化抑圧の結果、発展から取り残された後発開発途上国に陥っています。

しかしながら、2011年の文民政権発足を契機にミャンマーの不安は取り除かれ、アジアのラストフロンティアとして脚光を浴び始めています。

現状は産業発展の遅れた農産国であり、輸出品目にも一次産品が目立ちますが、インフラ整備事業の始動や先進国企業の進出も開始しており、

開発の進展に合わせて貿易品目も変化していくことが予測されます。

宝石の産出量も多く、世界のルビーの9割、また品質の高いサファイヤが取れることでも有名ですが、国営の効率の悪い経営が問題視されており、

こうした体質の改善とともに一大産業化する可能性も期待できます。


8 カンボジア(GDP : 194.0億ドル[世界第111位])

主要産業 : 農業(30.5%)、工業(27.1%)、サービス業(42.4%)
輸出 : 衣類(50.3%)、印刷物(37%)、履き物 (3.9%)、穀物(2.1%)、ゴム(1.3%)
輸入 : 織物(35%)、機械(9%)、電気機器(5%)、石油製品(4%)、車輪(4%)

1970年から20年余りに及ぶ内戦で、国力は大幅に損なわれました。
ポルポトの理想とした原始社会主義では、原始的な農業共同体が理想とされたため、農業以外の産業は排斥の対象とされ壊滅状態となりました。

しかし1979年にベトナムの侵攻によってポルポトが倒されると1992年には議会が設立され、民主化に向けて大きく前進します。

1999年には、ASEAN加盟も果たし、復興に向けて外国企業の誘致も始め、年7%という高い経済成長率で発展を続けています。

カンボジアの復興を牽引するのは、カンボジアに進出した外資系企業です。

カンボジアは、教育水準も低いため、高度熟練業には適さない国です。

そのため、労働集約産業が中心となり、中国やタイの人件費高騰で新たな労働市場を求める縫製業などに対して優遇措置を与え、呼び込みを行いました。

ユニクロの傘下にあるジーユーのジーンズもカンボジア製です。


9 ラオス(GDP : 137.9億ドル[世界第121位])

主要産業 : 農業(22%)、工業(33%)、サービス業(36%)
輸出 : 銅製品、電力、銅鉱石
輸入 : 電気機器、一般機械、燃料

国土の7割近くは高原や山岳地帯です。

山岳地帯の斜面を利用した水力発電が盛んで、タイへの電気売却が貴重な外貨獲得源になっています。

国民の80%ほどが自給自足的な農業に従事しているとされています。

鉱業に関しては、山岳の地形や外洋と接しない内陸の条件から、製造業の発展は限定的なものにとどまっています。

上の「主要産業」の項目で工業比率が33%となっているのは、鉱業が第二次産業の分類に含まれるためです。

ラオスの産業の多くは、鉱物や木材などの一次産品であり、景気をコモディティ価格に左右されやすい産業構造になっています。

※近年、日本やアジア開発銀行の支援により、ラオスと隣接国を結ぶ交通網の整備が進み、ラオスの物流事情が大きく改善しつつあるようです。
これを受けて人件費の安いラオスに注目が集まり、タイの日本企業が生産工程の一部をラオスに移す動きも出てきているようです。


10 ブルネイ(GDP : 111.8億ドル[世界第128位])

主要産業 : 石油・天然ガス
輸出 : 液化天然ガス(55.7%)、石油(37.3%)、その他(7%)
輸入 : 機械・輸送機器(39.4%)、工業製品(21.4%)、食料品(13.7%)、雑工業品(8.6%)、化学製品(7.3%)

資源収入で大変潤っており、収入を社会資本の整備に回すことでインフラ面の整備も進んでいます。

輸出品目は、ほぼ地下資源に偏っています。

一方で、機械や食料品を含めた消費財は輸入に依存しています。



ASEAN加盟国は、

工業国であるタイ、マレーシア、シンガポール

農産国であるインドネシア、フィリピン、ベトナムミャンマーカンボジアラオス

更には世界38位ながら産油国ブルネイによって構成されています。

しかしながら、タイ、マレーシアの工業の発展も、人件費の安さを武器にした先進国企業の生産プロセスの移転に過ぎず、

人件費の高騰を受けてなお繁栄を継続するには、シンガポールのような先端技術の導入が欠かせません。

その意味では、人材の高度化が求められるタイ、マレーシアからすれば、RCEPにより先進国と地域ブロックを組むことは先端技術の集約に役立つでしょう。

また日本、中国から見ても、東南アジア地域は製品に必要な中間財の供給地として重要であり、現在も交流は活発ですが、

地域ブロックを組むことで、更なる経済活動の円滑化が期待できます。

しかしながら、やはりこの16カ国だけでは多くの国で共通する原油需要を賄うことができておらず、同盟を完璧なものにするには、やはりロシアの加入が必要に見えました。

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