Ossan's Oblige "オッサンズ・オブリージュ"

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光栄の「蒼き狼と白き牝鹿」シリーズをオススメする理由

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蒼き狼と白き牝鹿シリーズは、1985年に光栄(現・コーエーテクモゲームス)から第1作が発売された歴史シミュレーションゲームです。

12~14世紀のユーラシア大陸を舞台とし、プレイヤーは、モンゴル帝国を中心とする勢力での統一を目指します。

史実において、いかなる大帝国もユーラシア統一は果たせませんでした。

その困難性はゲームにも反映されており、相次ぐ地方政権の独立や内乱など、度重なる分裂の危機を乗り越えなければ、クリアできない仕様になっています。

では、この歴史シミュレーションゲームを遊ぶ事で、いったい何が得られるのでしょうか。


1. 歴史学習のモチベーションが向上する

受験科目の一角を占める世界史。
多くの受験生が、何のために覚えているのかわからない単調な単純暗記に苦戦します。
しかも、学校で強いられる単純暗記短期記憶の担当領域のため長期記憶に定着せず記憶効率に劣ります。
受験生なら誰しも、覚えたはずの知識が一定時間後に思い出せなくなって記憶力を疑った経験があるでしょう。
それは、記憶力の問題ではなく、単純記憶という記憶の仕方に原因があります。
蒼き狼と白き牝鹿シリーズを遊んで以後に入ってくる知識は、長期記憶に蓄積されるよいうになります。
なぜなら、面白さというエピソード記憶の源泉が手に入るからです。

領土拡大が主題なので、国力増大(育成)、戦争(戦略)、オルド(エロ)といった要素を備えています。
1つの要素が苦手でも、別の要素で楽しめる作りになっているのです。

さらに、登場人物は、実在の人物が基本です。

登場人物全員に、固有の顔グラフィックス能力値が実装されているので、どんな人物だったか?という雰囲気が、プロ野球選手の能力をパワプロのSABCDEFで連想するように自然と入ってきます。
歴史上の位置付けも把握できます。

「好きこそ物の上手なれ」というように、好きになることは攻略への第一歩です。

ゲームによって楽しみながら覚えた記憶は、脳の長期記憶の領域に達し、必ず定着してくれます。
それだけでなく「もっと知りたい」という好奇心すら生み出すでしょう。
この好奇心が起きれば、自発的な知識欲求が湧いてきます。

次のような自分の行動に驚くことになるでしょう。

気がついていたら苦手なはずの歴史情報を調べていた。

受動的な状態で学習すれば、単純暗記の泥沼に嵌まります。
苦痛ですし、短期記憶のため覚えたはずの情報が思い出せない(すぐ忘れてしまう)という無駄を繰り返すことになるでしょう。

もし心当たりがあるなら、受動的な学習を能動的な学習に切り替えなければ、重大な時間的損失を負うことは確実です。

幅広い分野を攻略しなければいけない受験戦争において、それは悪手です。

その意味で、ゲームの中に楽しさと学習効果が散りばめられた「蒼き狼と白き牝鹿シリーズ」は、格好の題材といえます。

生きる上でメリットを感じられない歴史学習に意義を見出せない人は、楽しんでしまえば問題ありません。

ゲームをプレーすれば確実に歴史への苦手意識を減らしてくれるでしょう。

他の科目に疲れた時の息抜きに使うゲームとしても十分なほどの楽しさを発揮してくれます。

2. 史実に即した作り込みのレベルが高い(国・国力の数値化)

モンゴル帝国は、世界帝国を築くために世界中の勢力と戦を重ねました。

そのため、登場国はユーラシア全域。
12世紀~13世紀当時のユーラシア情勢がマップの中に再現されています。

題材のモンゴル帝国はもちろん、登場する全ての国に史実の人材と能力値が割り振られています。
当然ながら、元寇を戦った鎌倉期の日本も登場します。

史実の人物は、「政治」「武力」「指揮」「魅力」「体力」「年齢」のパラメータに、AからEまでの5段階のランクが用意され、能力が再現されます。
(例 : チンギスハーン 
→ 政治 : C 武力 : A 指揮 : A 魅力 : B 体力 : 15)
国力の数値化も試みられ、国特有の「気候」「経済力」「特産物」「民度」の違いもデータに反映されているので、地勢的重要性の違いが明確です。(当時、ヨーロッパがイスラム勢力に脅かされる辺境の貧しい地域で、いっぽう東方の中国が超大国だったことが分かる)

プレイできる時代は、3~4種類が用意されています。
例えば、第2作「元朝秘史」の場合、「1185年」「1206年」「1274年」が用意されています。
「12〇〇年の時点におけるA国の君主がB」といった設定も緻密です。
登場する全ての国が史実を再現しているので当時の世界情勢を俯瞰できます。

例えば、「元朝の成立(1274年)」では、フランスの在野にトマス・アクィナスという人物が控えています。

この人物は、キリスト教に十字軍で獲得したアリストテレス哲学の要素を加え、スコラ学の方法論を大成した思想家です。
つまり、「元朝の成立」と「スコラ学の成立」が同時期のものだったことが理解できるのです。

この要領で、13世紀に起きた十字軍や、世界各地での王朝交代の動きを一手に把握することができます。

世界史科目の難点は、学んだ知識の単元が散発しやすいことであることです。

特定の年代・地域を扱って、また別の時代に移ります。
両者の結び付けがおろそかになりやすいのです。

そのくせテストでは、俯瞰的な見方ができないと解答できない問題が頻出します。

この難点も「蒼き狼と白き牝鹿シリーズ」によって解決を期待することができます。

主体性を持って吸収する知識は相互の繋がりを重視するからです。


2. 史実に即した作り込みのレベルが高い(当時の各国の文明水準)

いつの時代も国力を代弁するのは軍事力です。

ヨーロッパは 、産業革命の扉を開くことのできた唯一の文明です。
しかし、「蒼き狼と白き牝鹿」の舞台である13世紀の時点において、ユーラシア大陸辺境の弱小勢力にすぎませんでした。

大航海時代のキーとなった火薬、羅針盤、活版印刷からは程遠く、戦闘は騎士の腕力と勇気、そして装備力に任されていました。

後にパクス・ブリタニアを実現するイギリスも正直いって弱いです。(ヨーロッパ諸国で団結してイスラムへの十字軍遠征をしていたころ)

ヨーロッパの勢力が外の世界で戦うには、モンゴルやイスラムの騎馬兵、中国の火器、日本武士を傭兵として得なければ、まず太刀打ちできません


また、登場人物もいかにも騎士!といった格好の人が多く、時代性を反映しています。

一方、中国やイスラム圏の国は、地域に応じた騎馬隊だけでなく、投石機や初期の火器、歩兵など様々の部隊を駆使します。

火器や投石機は、正直実用レベルに達しておらず、騎馬隊が最強なのですが、それも13世紀の軍事技術を反映した結果と言えるでしょう。

鉄砲に取って代わられるまで世界最強の軍事部隊は騎馬兵だったことがゲームの中で如実に反映されています。

なお、中国の軍隊に見られる原初的な火器(爆発物)は、モンゴル遠征を通してロシアからヨーロッパにもたらされ、科学(キリスト教+ギリシャ哲学)の力によって改良を果たし、近代火器としての銃に革新されていくことになります。

3. 光栄の歴史三部作と言われた蒼き狼と白き牝鹿シリーズ

もう完全に忘れ去られている感がありますが、青き狼と白き牝鹿シリーズは、信長の野望、三国志に並ぶ、光栄の3大傑作に位置づけられています。
企業の生き残りのために、あのドラゴンボールでさえ掘り起こされて同人化されています。

おそらく光栄も、どこかで行き詰まった時点で「青き狼と白き牝鹿シリーズ」を復刻させる日が訪れるでしょう。

グローバルな時代性にも適合し流行る可能性も高いですから、ブームが始まる前に手をつけておいて損はありません。


4. さいごに

デュポンといえば、アメリカを代表するバイオ化学メーカーです。
フランス革命戦争期のフランス将校にデュポンという名の将校がいたことを教えてくれたのが光栄のランペルールでした。

調べていると、デュポン一族の祖先は、ナポレオン時代のフランス軍に所属していた軍人であり、後に一族の一人が海を渡りアメリカに礎を築いたようです。

そうした幅広い教養を潜ませてくれるのが、光栄のゲームの特徴です。

ゲーム的な面白さも比肩するものがないほど高く、ハマれます。

プレイしないのは人生の損、いや先人に対する無礼と言うことにします。

光栄の「蒼き狼と白き牝鹿」をプレーして一人でも多くの方が歴史を学ぶ喜びに目覚めてくれると嬉しいです。