Ossan's Oblige "オッサンズ・オブリージュ"

文化とは次世代に向けた記録であり、愛の集積物である。

【徹底主観】毒親育ちの男が語る、毒親の定義と毒親化を防ぐ方法

「親のせいにするな」と言われると、「子供のせいにするな」と返したくなるのは私だけでしょうか?

確かに社会は大きく変わりました。
労働者が汗水垂らして重工業を支えなければならない昭和の時代と、インターネットの普及と金融緩和でお金の溢れかえる令和の時代とでは、まったく条件が違います。
親世代にとっては常識的の「親の決定が絶対に正しい」という価値観は、現代に効力を発揮しません。

特に大きな変化が、20世紀にはないインターネットを手に入れたことです。
問題に直面した時、身近な誰かに相談するよりも、インターネットで検索をかける方が解決への近道となることが多くなりました。
だからこそ、「何もかも自分が悪い」と内罰的になるのではなく、自分たちが受けた痛みの原因と対処法をネットに遺すことが被害の連鎖を止めることに繋がります。

私は「毒親」への漫然とした不満から教育学部へと進学し、毒親教育の弊害で社会不適合者になることの痛みも知りました。
そんな体験に基づき、将来「毒親になりたくない」という人に向けて、自分なりの毒親の定義と特徴、毒親にならないための方法を解説します。


1. 毒親とは、子供を社会不適合者にする親のこと

どんな親が毒親かは感覚的で曖昧ですよね。しかし毒親の定義は単純です。
家庭教育を受けた子供が社会不適合者になったなら、社会不適合者を育てた親は毒親です。

確かに「お金がない」「進路を否定する」「干渉が多い」といったダメな親は大勢います。でも彼らは「毒親」とは限りません。
なぜなら、人間は社会の中に居場所を見つける能力さえあれば、いくらでも価値観や能力を高めていけるからです。
貧乏だったり過干渉でも、育てられた子供が社交的な大人に育ちさえすれば、親の教育的義務は果たせています。
もちろん、どんな社会にも適応できる社交能力を与えるには、高卒はもちろん、大卒資格まで与えることが好ましいでしょう。

ただし、豊かなインターネット時代に巡り合わせた現代人は、たとえ一文無しの高卒者でも実力があれば生活を成り立たせることは可能ですし、失敗しない生き方をYoutubeで学習することも可能です。
飛び込んだ環境が劣悪でも、望ましい社会環境に巡り合うまでマッチングを繰り返せます。
つまり、ダメな親だと確信した時、逃げ込める社会があって、そこへ適応する対人関係力さえあれば、いくらでも望みどおりの人生に修正できるのです。
生まれつきのエリートで大豪邸で暮らすような高望みは無理でも、対人関係力さえあれば、中流以上の生活を掴むことは可能です。

一方、家庭で社会関係能力を破壊された子供は、家庭以外に逃げ込める共同体がありません。
人間は社会的動物なので、社会関係なしに大きな価値を生産したり真の幸福を得ることは不可能です。
ところが、毒親の元で育った子供は、特異的な親との関係の取り方が常識化しているせいで、他人との関わり方が分からない。
自分にとって普通と思える関係性を発揮すると、周囲が無言で離れていく。
結果、ずっと独りぼっちで、クリアすべき人生の課題を満たせないまま年だけ取っていく大人になります。

いつかは子供も家から離れますが、家族以外の他人と関われずに、自宅に舞い戻って引きこもる例があるでしょう。これは社会不適合の典型例です。

子供が家庭外の社会に溶け込めなくなるのは、「社会で求められる価値観や作法」と「家庭で親の言動を通して学んだ常識」にズレがあるからです。
この乖離差が大きければ大きいほど、子供の社会不適合リスクは増大する上、成人した子供から受ける恨みの量も比例して強くなります。

2. 毒親になりやすい大人の特徴3つ

世の中にはさまざまな毒親がいるのでしょうが、私にとっての毒親のシンボルは実父です。
ここでは私の父親を例に、毒親が備えていた特徴を紹介します。

1. 自分の才能が垂直に遺伝すると過信している

親が高知能で学歴が高くても、子供に遺伝するとは限りません。
妻や祖父母に似て生まれてくる可能性だってあるのです。

同質性の高い環境で育ってきた視野の狭い親だと、子供は自分に似て当然だと勘違いすることがあります。

私の父親も、貧乏家庭の出身ながら国立大学で医師免許を取ったことから、自身のことを天才だと思っていたようです(笑)
父親なりに努力もしたのでしょうから、ここまでは問題ありません。

問題なのは、「天才の子供なのだからお前も天才だ。だから自信を持て。」
このような価値観の刷り込みを行ったことです。


教育学において、子供の才能を誉めることは絶対に避けるべきだと考えられています。
なぜなら、才能を誉められた子供は失敗を恐れてチャレンジをしなくなるからです。

天才といって育てられた私も、実力を高めるためのお勉強といった簡単な努力はすれど、人生に必要な大胆な決断や愛の告白といったチャレンジは回避しながら生きてきました。
理由は、失敗が怖いからです。

才能を誉められた子供は、チャレンジを恐れるようになります。
人生には勇気を伴った決断が求められる場面が必ずあり、そこで挑戦を避けるといつまで経っても人生のステージが上がらず社会不適合に陥ります。
どうすればチャレンジを恐れない子供に育つか?に対する教育学の回答は、才能ではなく努力を誉めることです。
「誰の子供として生まれたか」ではなく、いま子供が何に取り組んでいて、以前に比べてどれだけ成長できているかを言語でモニターしながら改善策などを混ぜつつ教えてあげてください。

2. 子供に可愛さを求め、「可愛い」という誉め言葉を多用する

Youtuberのひろゆき氏いわく、良い親とダメな親の違いは、将来自分を超えていくように子供を育てるか、自分の下に置き続けるように育てるかの違いだそうです。
自分の毒親は完全に「子供を下に置き続ける」タイプでした。象徴的な誉め言葉が「可愛い」です。

子供は親に褒められることに報酬を感じ、誉められた原因の行動を強化するように学習を進めます。
努力を誉められた子供はますます努力して高みに上り、失敗から教訓を導いたことを誉められた子供は成長効率の高め方を学習していくでしょう。

ところが、親の中には子供を「可愛い」と誉める者が一定数います。
可愛いとは、子供の状態、自分より下の状態を誉めていることになるので、子供は子供らしい無力さを強化していきます。
そのまま修正されないと、自身の無能さをひけらかして注目を浴びようとしたり無力さで責任回避したりしようとする「子供のような大人」に育ちかねません。

「子供のような大人」は社会で役に立たないタイプの社会不適合者ですね。

ひろゆき氏の言う通り、いつか子供が親を超えるように力を与えるかどうかは、毒親と良親を隔てる基準になります。
特に日ごろから女性などに「可愛い」という誉め言葉を使いがちで、しかし自分の子供を「子供のような大人に育てたくない」という人は、できるだけ「可愛い」という誉め言葉を使わないことを推奨します。

3. 子供を説得するだけのコミュニケーション能力がない

私の毒親は、犬が大好きな動物以外と関われない男で、取得した医師免許も獣医師でした。

成熟した親と生まれたばかりの子供の関係は、人間とペットのようなものです。
動物同然の赤子に対して世話を焼くことは楽しく、ペットに対して感じるような支配欲が満たされる関係性でしょう。

しかし、その関係性が親子関係の基本になると、動物に行動を強いるときのような暴力性を介したコミュニケーションが当然のものとなってしまいます。
例えば、命令や威圧で親の要求を強制的に飲ませるような関係の取り方です。

私は高校受験の時、中学教師に2ランク下の高校を受験しろと言われて、内心嫌だと思いながらも拒否できませんでした。
それは家庭でのコミュニケーションで、親の命令を一方的に受け入れなければならなかったからです。
親の命令に対する返答は「はい」か「いいえ」の二択ですが、「いいえ」を選ぶと怒号が飛んでくるので、怖くて「はい」と答えるしかない。
無力な赤子に強いる関係性が、成長後も当たり前のように続いていたので、言語を介する反論の能力が育ちませんでした。

今でも私は、他人の主張に対して反論をぶつけることに苦手意識を感じます。

幼い子供は大人の言葉を完全には理解できなくとも、理解するための脳機能は働かせています。
相手の理解が未熟だからと言って、大人に都合よく子供の反論を認めないと、「他人の意見に反論ができない」タイプの社会不適合者に育つリスクが高まります。子供が幼いころから意識して反論の練習をさせるよう、気を付けてください。

3. 毒親にならないためにすべきこと

毒親に育てられた子供は、社会不適合者になります。
裏返せば、子供が社会不適合者に育たなければ、あなたは毒親ではありません。

つまり、どうすれば子供が社会不適合者にならないか?を攻略することが毒親化を予防するアプローチとなります。

一番の方法は、子供の自発的な発話を認めることです。
幼いうちは、言葉の運用が下手で意味不明な言葉をしゃべるかもしれません。

しかし、言葉はエラーと修正を繰り返しながら上達していくものなので、最初の意味不明な発話を否定すると、子供は言葉の運用が下手糞なまま大人になってしまいます。

言葉は社会交流のツールなので、言語能力なしに満足な対人関係は築けません。

まずは自分の意思を言葉で表現できるレベルまで高めて、そこから社会のルール・マナーに沿った形で言葉のキャッチボールを繰り返しましょう。
当然のことながら、社会的なルール・マナーを、親であるあなたが十分に理解していることが前提です。

外に出しても問題なく友達を作れる社交レベルにまで高められたなら、子供は自発的に外の社会環境へと巣立っていくことでしょう。


以上、自分の体験から、かなり主観的に毒親について述べさせていただきました。
もちろん、社会適合者でも親にトラウマを負わされたのが辛いと反論する人はいるでしょう。
でもパーフェクトの追求が無意味なように、社会適応に成功しているあなたは、少なくとも毒親の影響で引きニートになった人に比べればだいぶ幸せなのだと思います。