欧米人から人気の高いルアンパバーン。
1995年に旧市街がユネスコ世界遺産に登録されて以来、観光客経済で賑わっています。
今回は、水と緑に恵まれた山岳地帯の秘境、ルアンパバーンに訪れてみました。
現地の物価、料理、自分が感じた問題点などについても、報告したいと思います。
1、入国まで
ハノイからルアンパバーンに向かう飛行機は、欧米人でごった返していました。アジア人旅行客は、完全に少数派の部類です。(年末のせいか日本人旅行客が多かった)
機内にて配られる入国カードを入国ゲート前で埋め、ゆるい入国審査を受けます。
簡単なチェックだけで出国用チケットも必要なく、入国することができました。
2019年1月現在、観光目的でのラオス滞在は、15日以内ならノービザで入国可能です。
これを30日に延長するには、入国ゲートで現地ビザを取得しなければなりません。(費用30ドル)
空港を出ると降車場を挟んで道路に面します。
観光地まで歩く場合、空港を背に右手側に進みましょう。
左手側に進むと、道路も舗装されていないローカルの住宅地に入るので注意してください。(砂埃がひどい)
2、物価
ルアンパバーンは、観光地物価です。現地人向けの商品は低額に抑えられていますが、旅行客が消費しがちな高級品の価格は先進国と同じかそれ以上。
具体例をあげます。
- タピオカミルクティー →( 1万~1.5万₭ = 127円~190円)
- 市販のアクエリアス →(9,000₭ = 114円)
- 酒類275ml →(1.9万₭ = 241円)
こうした奢侈品は観光地物価が適用されます。
一方で、現地人向けの生活必需品の価格は、安く抑えられています。
- タバコ1箱 → 7,000₭(88円)
- 缶ジュース → 5,000₭(63円)
- 水1.5L → 5,000₭(63円)
- 風邪薬 → 5,000₭(63円)
旅行者として1日ルアンパバーンで過ごすには、
ドミトリーでギリギリまで切り詰めて700円、
日本と同じ環境を求めると2,000円程度必要という雑感です。
[物価表]
(レート : 1ドル109円、1万キープ = 127円)※2019年1月時点
商品名 | 価格(キープ:₭) | 日本円換算 |
---|---|---|
安ホテル | 8万~12万₭/泊〜 | 1,016円~1,524円/泊 |
中級ホテル | 20万₭/泊 | 2,540円/泊 |
水1.5L | 5,000₭ | 64円 |
缶ジュース | 5,000₭ | 64円 |
アクエリアス | 9,000₭ | 114円 |
露店のパン | 4,000₭ | 51円 |
露店の袋入りラスク | 4,000₭ | 51円 |
みかん1kg | 8,000₭ | 102円 |
ベトナム風うどん | 1万₭ | 127円 |
激辛冷やしパスタ | 1万₭ | 127円 |
ミートスパゲティ | 1.5万₭ | 191円 |
焼き飯 | 2万₭ | 254円 |
屋台のやきそば | 1.5万₭ | 191円 |
ローカルピザ | 1万~5万₭ | 127~635円 |
鶏串(小) | 2,000₭/本 | 25円 |
骨付きスペアリブ焼き | 1万₭/本 | 127円 |
焼いた肉 | 1万₭/個 | 127円 |
風邪薬 | 5,000₭ | 64円 |
観光地のピザ、パスタ | 6万₭ | 672円 |
タピオカミルクティー | 1万~1.5万₭ | 127~191円 |
外国の酒類(275ml) | 1.9万₭ | 241円 |
安宿やゲストハウスは、観光地(旧市街)だけでなく、郊外にも林立しています。
観光客の多い観光地を一歩出ると、現地人の姿が目立つようになります。
こうした郊外では、宿泊者の数が少ないので、予約なしでも宿を見つけることは容易でした。
安宿の相場(1人部屋)は、8万~12万キープ(1,016円~1,524円)。
観光地付近にあるドミトリーなら350円から泊まれるらしいですが、ネットでメリットばかり並べられるホテルは、アフィリエイト目的の誘導が多いです。
Googleレビューでは、問題が報告されていることが多いので、宿泊を検討する際は、あらかじめレビューを調べることをお勧めします。
ホテルのコスパに関しては、ハノイには劣るが及第点というレベル。
(ドミトリーは、当たり外れが大きいので使ってません。)
1人部屋は、畳6畳程のスペースと必要最低限の設備が備わっています。
宿泊した4つの宿で、南京虫を見かけることもなく、ゆっくりと落ち着いた時間を過ごすことができました。
とはいえ、郊外の安宿は、何らかのマイナス点を抱えている印象です。
- 弱過ぎる防音
- 破損した窓から侵入する蚊
- 安定しないwifi
- 動かないエアコン
- 細かなところに足りない清潔感
- 時々温水が出なくなるシャワー
- 水道管の隙間から漏れて足場を水浸しにする水道
水回りの問題が多いですね。
また、冷蔵庫のない宿が多いですが、深夜に営業している店が少ないため意外と厄介です。(1泊2,500円代の中級ホテルにはついていた)
とはいえ、1泊1,000円~1,500円の安宿なら、値段相応でしょう。
3、ルアンパバーンの食べ物
多民族国家だけあって、食文化も多様です。
ベトナム料理、中華料理、フランス料理の影響が強く、店舗ごとに種々雑多な料理を楽しむことができます。
- 中華風の焼き飯・焼き麺
- パクチーの効いたベトナム風うどん
- 激辛冷やしパスタ
- ラオスのご当地ラーメン
- マレーシアを感じさせる甘いカオマンガイ
こうした料理を、1食1万キープ~2万キープ(127円~254円)程で味わうことができます。
味のクオリティは、そこまで高くはなく、価格相応といったところ。
米も麺も食べられますが、味と食感に物足りなさを感じたのは、馴染みの薄いインディカ米のせいだったのかもしれません。
(店舗によっては、パサパサしたインディカ米を油の具合でふっくらとした食感に仕上げてくるところもあります。)
やはり満足度を上げるには、観光地にある外国人経営のお店に入って奮発する必要があるかもしれません。
郊外に10日もいると、本気で日本食が恋しくなってきます。
また、郊外では野菜や果物の露店販売を行っている人たちがいます。
ここの果物は確かに安い(ミカン1kg = 1万キープ [127円])のですが、排気ガスでスス汚れていることが多く、見るからに体に悪そうです。
個人的には、「後で高くつく」ことになりそうだったので購入は控えました。
夜になるとオープンする屋台もあり、串刺しにされた様々な具をその場で焼いてくれるところが多かったです。
4、街の風景
ルアンパバーン郡は、世界遺産にも登録された観光地ですが、人口は9万人弱に過ぎません。山奥の狭い居住可能エリアに人々がひしめいており、都市というよりかは、田舎の村に近いイメージ。
日本の地方都市にも、寂れた山間部の都市がありますが、あのイメージが近いかもしれません。
とはいえ、観光地としての魅力は抜群です。
世界遺産に指定されただけあり、メコン川沿いの旧市街地の美しさは圧巻。
道に沿って並ぶフランス建築をメインに、現地の文化、地形や自然が調和する形で織り込まれています。
隣接するメコン川の上から、ボートに乗って周囲の雄大な自然を眺めることもできます。
郊外は、また違った都市設計になっています。
郊外に出ると、東南アジアの国ならどこでも見られる、舗装されていない道路に商店街という光景。
しかし、そうした風景の中にも、所々にラオス独自の建築デザインが見られ、独自性を確認できます。
古くからの仏教的な佇まいを残した建築物から普通の民家、王宮式の豪邸・・。
こうした建築物群は、観光地のフランス式のコロニアル様式とは違い、ラオスの伝統的な美的感覚が凝縮されていたように思います。
つまり、ルアンパバーンの美的景観は、旧市街地とローカルとで二面性があるのです。
個人的には、思わず息を飲むほど美しいラオス様式、自然と調和した景観を眺められただけでも、訪れた甲斐がありました。
交通状況については、山奥の都市なので、ベトナムに比べると車の比率が高いです。
とはいえ、輸入車を購入できるのはごく一部に限られ、日本ほど車社会なわけでもありません。
現地の主な移動手段はバイクです。
ベトナムのように、バイク4人乗りで車代わりに使う家族の姿も確認できます。
しかしながら、ベトナムでは激しい渋滞もクラクションもなかったので、ストレスに感じることはありませんでした。
都市の清掃も、観光地ということもあり、比較的行き届いている方でした。(ローカル空間は局所的に散らかっているところがある)
悪臭もしません。
しかし、古いバイクや車を乗り回しているので、排気ガスの被害は深刻です。
なにせ山間部の都市なので、沿岸や平野部とは違って気流の循環がやや乏しいです。
排出された排気ガスが都市に留まりやすく、山がちな道を歩いくと頭痛やめまいを感じるほどでした。
これは、バイク移動の激しいベトナムでも中々起こらなかった症状です。
近年の開発によって、舗装された道も増えていますが、郊外では石の突出したデコボコの激しい道がほとんどを占めます。
硬い石が突出して足裏が痛いし、砂埃で靴は汚れるしで意外なストレスでした。(靴の劣化は避けられない)
川道への防波堤がなかったり、突然穴開きになっているような場所も見受けられます。
こうした道路状況のみならず、突然の停電(3日に1回くらい?)も頻繁に起こります。
周囲が急に真っ暗くなることもあるので、夜歩きは普通に危険です。
郊外にはコンビニもほぼないので、23:00を過ぎて商店街が閉まる頃になると、食べ物や飲料が手に入りづらくなります。(飲食店は割と遅くまで開いている)
治安の問題は全く感じませんでしたが、深夜の出歩きはなるべく避けた方が無難でしょう。
5、ルアンパバーンの人
先進国から人気を集めるルアンパバーン。背景にあるのは、建築や自然などの観光資源です。
しかし、人の影響も大きいのではないかと私は推測します。
人々は、優等生タイプ(?)の穏やかな人が多く、対人間でのストレスはほぼありません。
高度先進化を迎えた先進国民は、日々競争を強いられます。
その鬱屈したストレスは、時に攻撃性として周囲に向けられ、イジメや治安悪化といった社会問題に発展することさえあります。
一方、ここルアンパバーンでは、牧歌的な空気が流れ、人々がのんびりと過ごし、都市の雰囲気は平和そのもの。
道ゆくバイクや車でさえのんびり過ぎていきます。
仏教的な観念も影響しているのでしょう。
自然や建築物といった観光資源だけでなく、そうした先進国民にはない人々の穏やかさ、純朴さ、無欲さなどを見たくて、ルアンパバーンに足を運ぶ観光客も多いのではないでしょうか。
つまり、穏やかで平和的なルアンパバーンは、日々競争を強いられる先進国民にとって、癒しのある落ち着ける場所なのだと思います。
6、インドと違うところ
東南アジア東南部地域は、「インドシナ(Indochina)」と言われるだけあって、古くからインドと中国を結ぶ交易路として繁栄してきました。そのため、インドの影響が深く浸透しています。
ラオスの国教は、古くはヒンドゥー教(クメール朝の版図として)、14世紀に独立してからは仏教(上座部)ですが、どちらもインド原産の宗教です。
そのため、文化面においてもインドの影響が多々、確認できます。
例えば、象の神聖視です。
インドにおける象は、商売繁盛の神「ガネーシャ」に見られる通り、聖なる生き物として扱われています。
ルアンパバーンを含む東南アジアでも同様に、象は聖なる対象として見做されています。
これは、インドから根付いた仏教の伝説が基となっており、「仏陀の母親が妊娠を自覚した時に、白い象が体の中に入っていく夢を見た」という伝説に由来しているようです。
もちろん、移動、輸送、兵器(戦象)などの実用的価値が、象の神聖視へと発展していった面もあるでしょう。
実際に、ルアンパバーンは「ラーンサーン王国(1353年建国)」の王都として栄えた都市ですが、この国名は「100万頭の象」という意味です。
インド〜東南アジアの軍事行動において、像は戦車のような役割を担っていました。(戦象)
そのため、「100万頭の象」の名は、周辺地域にラーンサーン王国の武力を知らしめる意味を持っていたのです。
今日でも、ルアンパバーンを歩くと、豪邸の玄関や大銀行の入り口などに、象の石像を眺めることができます。
街路を闊歩するインドほどではないですが、「ルアンパバーンの象徴」として、今日においても象信仰は根付いているようです。
また、14世紀に取り入れられた仏教も、どちらかというとインド式の原型を留めており、街の隅々に置かれている神像や銅像も、日本で見られるような中国化された仏教様式ではなくヒンドゥー色を残したままの直線的なデザインが多かったです。
ただし、寺院の中にある仏像は、中国式の目を細めたスタイルだったので、一概には言えないのかもしれません。
音楽についても、多国籍化が進む中、郊外の地域では、かっこよさよりも意味と音の響きを重視するような、マントラ(お経?)チックなものがよく耳にはいってきました。
7、直して欲しいところ、注意点
異国ですから、文化の違いに起因するストレスは避けられません。
特にサービス面において、それは顕著だったと思います。
まず、麺類をテイクアウトすると、熱々のスープごとビニールに入れて渡してくる東南アジア特有の風景。
これは、ここルアンパバーンでも見られます。
ダイオキシンの問題があるので直ちに修正して欲しいと思います。
またホテルの清掃員が、こちらの許可を得ることなく無断でマスターキーを使って部屋に入り込み、清掃を行ってきます。
今の所、盗難被害は受けていませんが、何があるかわかりません。
また予知していないことから、プライバシー上の問題に繋がりかねません。
この点も先進国基準に改めて欲しい文化傾向に感じました。
何があるかわかりませんから、外出する際は、念の為、貴重品は持ち歩き、ラップトップは閉じてから出た方が良いと思います。
8、総評
ルアンパバーンは、観光客の多い旧市街地(世界遺産)とローカル空間の郊外とで異なる顔を持っています。共通点は、どちらもルアンパバーンが重ねてきた独自の文化様式が保存されていることです。
ローカル空間では、仏教をベースにしたラーオ族の文化様式が保存されています。
フランス統治の拠点となった旧市街においても例外ではなく、
多くの古い仏教寺院が取り壊されるなく、新しく建築されたコロニアル様式の建物と融合して独自の文化性を形成しています。
付近に流れる雄大なメコン川も昔からのもので、これを保存する意識があるのか、メコン川支流の川は橋の上から地底まで見通せるほどの透明感を保っていました。
一方で、どの国でも抱えがちな「外国人から見て嫌な国民性」といったものを感じなかった(旅行客として)ことも旅の充実感を高めてくれた要因の一つです。
詐欺、ぼったくりといった類とも無縁でした。
また、「ラオス人は働かない」とするネット評が多いですが、私個人としては、ここルアンパバーンに限っては、真面目に仕事をする人の姿が多く目に入ってきたように感じています。(ベトナム人だった可能性もあるが・・)
そんな文化、景観、穏やかさと真面目さを備えた人が溢れるルアンパバーン旅行を終えて、残っているのは高い充実感です。
日々ストレスに追われがちな日本であるからこそ、もっと多くの人に訪れて欲しい都市だと感じました。