Ossan's Oblige "オッサンズ・オブリージュ"

文化とは次世代に向けた記録であり、愛の集積物である。

貧乏フリーランスの北海道移住をお勧めしない理由【独特の賃貸契約のルールとは】 

フリーランス最大の障害は、邪魔をしてくる隣人や騒音の問題です。

自分ではコントロールできない他人の問題に頭を悩ませるフリーランスは多いですが、北海道移住を選択肢に入れている人も多いのではないでしょうか?

なぜなら、開拓者の寄せ集めで発展した土地の歴史から、古くからの因習や相互監視が少ないイメージがあるからです。
さらに人口密度の低さで、北海道は全国NO.1。
68.6人/1km2という数字は、東京都の6168.7人/1km2はもちろん、全国平均の340.8人/1km2をも下回ります。
広大な土地にまばらに人が住み、土地余りの多さから賃貸価格も2万円代からと安い。
自由度・価格の面で有利に生活できるのなら、ミニマリストと親和性の高いフリーランスにとって正に最高の仕事環境です。

この度、田舎の隣人トラブル(過干渉)に頭を抱えた末に北海道に渡り、札幌・帯広でフリーランスの仕事場としての適性を調査してきた私が、見えてきた状況を報告します。
結論として、北海道は貧乏フリーランスの移住先にはあまり適さないかもしれません。


1. 北海道の民度は素晴らしい

自然の条件が変われば価値観も変化するので、グチグチと文句を言うのはやめましょう。

私が北海道移住に賛成しない理由は、地元民の質が低いためではありません。
むしろ、メンタル的に日本で最もヨーロッパに近い県ではないかとリスペクトしており、フリーランスとの相性も良いと評価します。

ではなぜ、私は北海道にヨーロッパに通じるものを感じたのか?美形の多さでしょうか?
たしかに、北海道は男女とも美形が多く、街を歩いていると容姿の平均値の高さに驚かされます。

しかし、私が感じたヨーロッパを彷彿とさせる雰囲気は精神の領域においてでした。

北海道の男性は冷静で何を考えているか分からない反面、すれ違いざまなどに相手をわざと不快にするようなスパイト行為をしてくることがほぼなく、良い意味で他人に関心がない。この辺りはよそ者の寄せ集めで都市が形成された歴史の影響かもしれません。

北海道の女性は自立心が高く、相手が男性でも思ったことをハッキリ伝えます。
人によっては、ズバズバ物申す女性に苦手意識を感じるかもしれませんが、適切なフィードバックを与えてくれることから自己認識と現実の乖離が生まれにくいと私は好意的に評価しています。
この辺りの好き嫌いは人によるでしょうね。

では、なぜ北海道人にヨーロッパを感じさせる雰囲気が身についたのか?
それは自然に由来している可能性が高いです。
明治時代・・、新天地を求めて北海道に渡った人々を待っていたのは、広大で寒冷な北海道の自然でした。
この大地に都市を築くには女性の協力が欠かせず、女性は家事洗濯、雪かきをこなすだけでなく、率先して労働力として働きました。
スタートアップの時代に若くして犠牲になった女性も多くいたはずです。
しかし、社会の発展のために尽くした結果として、北海道の女性は男性を上回るほどの市民権と発言権を獲得していきました。
その独立心に裏付けされた女性の発言権の強さは、北海道に来た誰もが驚くことでしょう。

もちろん、良いことばかりではなく残念だなと感じることは少なからずあります。
例えば、女尊男卑の押し付けがある女性が少なくないことですね。(男尊女尊が理想ですが、「上の立場」以外を認めない女性も多いです)
インターネットの書き込みでも、「北海道人は陰口が多い」、「うまくいっている人への嫉妬が激しい」、「利己的で性格が悪い」といったネガティブな北海道民評は少なくありません。

しかし陰湿な攻撃を好む性質は、日本語と日本文化のお約束であり、この辺りは日本人としての限界といえるでしょう。
ヨーロッパに近い性質を有しながらも、彼らも日本人だということを忘れてはなりません。

また車の運転マナーも粗暴で、「煽られる奴が悪い」と言わんばかりに、一部地域では煽り運転が文化レベルで横行していることも事実です。
しかし、広大な大地を迅速に移動しなければならない都合上、スピードを出すのは仕方ないですし、それが当たり前になると運転マナーが発達しづらくなるのは仕方がないことなのではないでしょうか。
地平線の彼方まで遠く長く一本道が伸びる北海道の道路では、東京のようなお上品な運転をしていたのでは、いつまで経っても目的地に到着できないのです。
なので、スピードを出さなければならないことや、結果として運転マナーが荒れることも、ある程度は仕方がありません。

本州との違いを感じた北海道移住者の中には、住みづらさを感じてしまう人が珍しくないようです。
しかし、自然条件の違いは常識の在り方に影響するのだから、「郷に入れば郷に従え」の姿勢が求められます。
北海道の大地を基礎とする価値観に、本州の価値観を絶対基準として文句を言うのは筋違いですし、転勤族なら多少のストレスはあっても現地ルールに則るべきです。

しかしフリーランスなら、地元民と付かず離れずの関係を保てますよね。
北海道人はいい意味でドライで他人を気にしないので、自分のことに集中したいフリーランスにとって親しみやすい民度だといえます。(小樽は漁港の町のせいなのか、意地の悪い干渉を感じることが多かった)


では、民度的にフリーランスと相性のよさそうな北海道が、なぜ移住先に適さないという結論に至ったのか。
それはコスト面の問題に他なりません。


2. 北海道生活が安くない理由6つ

結論として、潤沢な資産があるフリーランスが北海道を避暑地や仕事場に選ぶのは悪い選択肢ではありません。
夏も涼しく人の干渉が少ない北海道は仕事のしやすい環境となるはずです。
しかし資金的にギリギリの綱渡りをしているフリーランスに北海道移住をお勧めできない理由は、以下のような高コストをもたらす条件に由来します。

1. 家賃の最低2年契約ルールで最終出費がかさむ

北海道の賃貸物件はマンション・アパートで2万円代から、一軒家は約4万円代から探すことができます。
とても安いですよね。しかし盲点になりやすいのが、最低2年の契約が前提となり、満期前の解約は違約金が発生することです。
(1年未満の解約 : 家賃2か月分、1年2年未満の解約 : 家賃1か月分)

調べたところ、この慣習は全国共通ではないにせよ、一部地域で行われています。
賃貸会社の指定ではなく、あくまで大家側の要望だそうです。

なぜこのような仕組みがあるのか。
北海道においては、避暑シーズンだけ都合よく部屋を借りて、寒くなると出ていく都合のいい移住者を抑制する効果があります。
全国的には、家主にとって短期の賃貸は赤字の原因になりやすく、利益の取りこぼしを封じるための慣習です。

私が見積もりを貰った、札幌の木造一軒家の例で居住費の総額を確認してみましょう。

・家賃5万円
礼金、家賃1か月分
・初期費用、礼金含め約20万円

札幌では平均気温が10℃を上回るのは5月~10月の6か月間だけで、それ以外は激しい降雪を伴う寒さとの闘いになります。
なので、5月~10月の6か月間の滞在を考えるとします。

すると、

家賃5万円×6か月=30万円
初期費用20万円
途中解約の違約金として家賃2か月分=10万円(1年未満の退去)
退去時の清掃費2万円
合計62万円

額面上は家賃5万円ですが、月換算の居住費は月10.3万円です。
これに食費、電気、水、ガスの費用が加わると、短期滞在での月間の生活費は15万円は求められます。
最安価の物件のため、物件にボロがあったり治安の悪いエリアだったりする可能性もあり、外からの音も伝わりやすい木造なので、万が一近所から嫌がらせを受けたなら被害は甚大でしょう。
そんな高リスク物件に1日あたり5,000円の経費をかけるなら、安全な中級ホテルに連泊した方がお得ですよね。

一部の人は、安さを求めて月2万円代の物件を物色します。
しかし誓って言いますが、木造やプレハブ構造の音漏れが激しい部屋で、籠って在宅ワークできるような環境では絶対にありません。

2. 野菜が高い

北海道といえば酪農王国。
広大な土地を活用した畑作も活発なはずで、北海道に足を踏み入れる前の私も食品の安さをイメージしていました。
正反対に野菜の価格は高かったです。

スーパーに並んでいた商品で一例をあげましょう。
キャベツ1玉398円、大根1本398円。(5月)

私が住んでいた田舎ではキャベツも大根も丸ごと1つ100円でした(笑)
単価4倍と考えると、手に取る気にすらならず、野菜不足に陥りそうで良くありません。
(逆に道内で穫れるのか、ピーマンや春菊の値段は安かった)

ウクライナ危機に端を発する輸送費の高騰で、本州から取り寄せの野菜が高騰している可能性が高いですね。

3. 冬の電気代が高い

ウクライナには産油国ロシアからのパイプラインが通り、同国での紛争は原油価格を高騰させました。
その影響は原油の火力発電に依存する日本の電気代にも影響を及ぼし、電気代の高騰が激しさを増しています。
電力会社が設定できる上限価格をも超える勢いで、今年の冬の北海道は電気代に苦しむ人が大勢出てくるでしょう。
夏季限定の短期滞在は賃料が高コストなうえ、長期滞在を試みると冬の電気代で疲弊します。
短期滞在と長期滞在のどちらを選んでも、高コストは避けられないことを理解しましょう。

4. 車なしに生活できない

広大な北海道では、車なしには満足な生活を送れません。
ただし、土地の広さから移動距離も長くなるので、価格高騰の真っただ中にあるガソリンを激しく消費することになります。
ガソリン代にかかるコストも生活費を押し上げる要因になります。

5. 雪かきの時間コストで収入が目減りする

冬の北海道はすさまじい量の降雪に包まれます。
その状況で一軒家暮らしをすると、「雪かき」をすることが当たり前になります。
むしろ市民の義務とみなされている向きもあるそうで、拒否権はありません。
1日のエネルギーは有限ですから、労働時間から雪かきに費やさなければならない時間コストが差し引かれることになります。
これは、収入を目減りさせる原因になるので、冬の雪かきコストも考慮しなければなりません。

6. 避暑シーズン(6月~9月)のホテルやウィークリーマンションの値上げ

「北海道は地価が安いので、賃貸物件だけでなくホテル料金も安い」

たしかに、札幌の中心街近郊にも2500円で泊まれるハイクオリティの安ホテルもあるにはあります。(金~日は値上げ)
しかし、北海道全体が観光地なだけあって、繁忙期(6月~9月)の値上げは避けられません。

ウィークリーマンション(6畳1間)の価格で一例をあげましょう。

料金表によると、10月から5月までの料金が1泊2,640円なのに対し、避暑シーズンである6月~9月の料金は泊3,310円ですね。
避暑シーズンの1か月あたりの居住費は約10万円します。(10月から5月までの寒いシーズンの居住費は約8万円)
(部屋の作りも頑丈とはいえず、内見した時に壁をノックすると向こう側は空洞のようなたたき具合だったので、防音機能にも劣る可能性が高いです。)

またアパマン系のウィークリーマンションで見積もりを取った際も、担当者の方から繁忙期は1泊につき1,000円の値上げがあるとの話を伺いました。(6~9月の月間の総額は最安価の部屋で10万円とのこと)


3. 結論 : 北海道での生活費は安くない

結論になりますが、観光地である北海道での生活費は安くありません。
最安価の部屋で月10万円を高いと思うフリーランスなら、光熱費、食費込みで最低15万円は必要になるので、仕事目的での北海道移住はお勧めできません。
月2万円代の安い部屋を借りられることは事実ですが、作りの単純な壁の薄い構造で、在宅ワークに適した環境では絶対にありません。
また月2万円の家賃でも、賃貸の初期費用や途中解約の違約金が加わり、最終出費は数倍規模に膨らみます。

もちろん、非シーズンのウィークリーマンションなら月8万円(1泊2,640円)で居住費をまかなえますが、それ以外だと最低月10万円は用意しなければなりません。
月10万円のコストなら、本州と比べても価格面のメリットは特別大きくありません。
資金に余裕のある人でなければ、家賃2万円をイメージして海を渡ると後悔する可能性が高いです。
北海道に住みたいという特別なこだわりでもなければ(美男美女は本当に多いです)、海外での巣ごもり生活の方がコスパが良いかもしれませんね。