Ossan's Oblige "オッサンズ・オブリージュ"

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埋蔵量と需要から見た、投資資産としての金、銀、プラチナの違い

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現物資産の利点。
それは、資源そのものに価値があるため、暴落のリスクが低いこと。
それに比べると、株式は企業の業績に左右されるため、常に株価崩落のリスクが伴います。

特に昨今は、度重なる量的金融緩和政策により、株高が顕著です。
しかし有史以来、弾けなかったバブルは存在せず、今後もそれは変わりません。

バブルの終焉によって投資家の熱狂が冷めたとき、慌てて動き始めたのでは避難が間に合いません。

逆に金融危機の前に避難が完了すれば、資産の保全だけでなく、先行投資者としての恩恵に預かることができます。
だからこそ、バブル崩壊時に資産逃避先の候補となる金・銀・プラチナの性格を知っておくことは重要なのです。

それでは現物資産の中で、資産保全の役割に最もふさわしい資産は何なのか?
今回は、金、銀、プラチナの「存在量」と「需要」という側面から探ってみました。

大不況の時に「資産を減らすのではなく倍増させたい」という方は是非最後まで読んでください。



1. 金・銀・プラチナの近代史

近現代において「普遍価値」を象徴する資源は金でした。
パクスブリタニカの時代から20世紀の金本位制まで、国家の経済政策は金を拠り所にしてきたのです。

しかし、金が「普遍的価値」と見なされる以前は、銀がその役割を担いました。
世界規模の貿易取引が活発化した大航海時代の決済代金も銀です。

ところが、銀のある弱点が地位の交代を促したのです。
それは、地球上の存在量が多いことです。
新大陸からの増産が相次ぐ中で、供給過剰で希少性を失った銀価は暴落。
以後、銀に代わって、金が「普遍的価値」の地位を獲得するに至ります。

一方プラチナは、18世紀中頃まで認知度が低く、採掘しても廃棄されるほどでした。
しかし、1748年にスペインの天文学者・アントニオ・デ・ウジョーアの報告を機にその資源的価値が広まります。
プラチナは、工業資源として優れた特性を示し希少性も高い。
しかし希少性が高すぎるが故に貿易決済に用いるには量が足らず、金に代替することはありませんでした。


2. 金・銀・プラチナの資源埋蔵量

(数値は検索結果による推計値)

3貴金属の存在量において、圧倒的に多いのが銀です。
対照的にプラチナの希少性が際立っており、金がそれに続く結果となりました。
この存在量は概ね価格と連動しており、希少性が貴金属の価格に大きな影響を与えている様子が伺えます。

《地球上の存在量》
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銀の採掘済み量は「100万トン超」となっており、正確な数値はわかりませんでした。
それでも、採掘競争が進んだ金やプラチナに比べると埋蔵量が多く、今後採掘が進めば価格にマイナスの圧力が加わるかもしれません。

《採掘量と埋蔵量の比率
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(埋蔵量 = 存在量 - 採掘済み量で計算)

(採掘済み量)
・金 18万3,600トン
・銀 100万トン超
・プラチナ 4200トン


3. 資源需要の側面から

各種資料(※)によると、各資源の需要は以下の通りです。

✔︎ 金需要
→工業需要21%、宝飾品需要52%、投資需要27%
✔︎ 銀需要
→工業需要75%、宝飾品需要20%、投資需要5%
✔︎ プラチナ需要
→工業需要61%、宝飾品需要32%、投資需要7%

◯ 金・プラチナ需要
→「セントラルマーケットコラム~経済金融・コモディティ~」2017年3月4日参照
◯ 銀需要
→THE WALL STREET JOURNAL 2011年1月18日参照

以上の分析から、3つの貴金属は工業需要が高いグループ(銀、プラチナ)と低いグループ(金)のグループに分けることができます。(銀75%、プラチナ61% | 金21%)
この特長は、資産保全に対する適性を考える上で重要なので深掘りします。

金の工業需要は21%。
しかし、工業資源として価値が低いわけではありません。
例えば、金の電気伝導率では、全金属の中で3番目に高い数値を誇り、1位の銀、2位の銅に続く順位です。
さらに、高い圧延性と腐食性を利用して金メッキへの加工も多く、一定の工業需要が見込めます。
しかしながら、その希少性と歴史的ブランドのため、需要の8割近くを宝飾需要と投資需要が占めています。

「需要の約8割を工業需要以外が占める」金の特徴は、経済不況時に強みを発揮します。
経済不況時は減産の煽りで、工業資源の価値が下がります。
これは工業需要がメインである銀やプラチナにとって致命的ですが、金に対する打撃は限定的です。

反対に「普遍価値」の歴史的ブランドもあり、逃避資産の大きな受け皿となるでしょう。
つまり、価格に上昇圧力が加わるということです。

以上のように、金は対経済不況に強い投資銘柄だといえます。
(米中貿易戦争が繰り広げられる2019年10月25日、1g=5,795円に到達。銀1g=71.17円、プラチナ1g=3,643円。この中で2014年比で伸びを示したのは、金だけです。)

銀の工業需要は75%。
この工業需要の高さを見てもわかる通り、工業資源として優れた性質を持つのが銀の特徴です。
電気伝導率は、あらゆる金属の中で最良。この特長を背景に、電子機器のケーブルから回路基板まで幅広い用途を持ちます。

充電効率が求められる自然エネルギー産業が活況を呈していることから、今後さらなる電池需要が見込めるでしょう。
ただし別の言い方をすれば、経済不況時の減産の影響を受けやすい資源だといえます。
株価暴落と経済不況は連動するので、株バブル末期の資産保全とは相性が良くありません。

プラチナ

プラチナといえば、その希少性が目を引きますよね。
しかしながら、その工業需要は、宝飾需要、投資需要を差し置いて61%。
その裏付けとなる高い腐食性を持ち、自動車の排気ガス浄化装置や制癌剤などで活躍しています。
需要の過半数を工業分野が占めることから、プラチナも経済不況に連動しやすい資源といえるでしょう。

さらに今後は、電気自動車化が進む中で、「ガソリン車の触媒」需要が段階的に抜け落ちていく見込みです。
このことは、「ガソリン車の触媒」が全需要の40%を占めるプラチナにとって大きな打撃となります。

しかしながら、工業資源としての価値は高く、また希少性の高さもあり、一時期落ち込んだところで、すぐに新たな需要が創出されるはずです。
株バブル末期の逃避先として有望かというと怪しいですが、低迷から回復までの時間は短く、利幅も大きなものになるでしょう。
その意味で、プラチナの下げはチャンスだといえます。

まとめ

現在こそ活況に沸いている株式市場ですが、史上弾けなかったバブルは存在しません。

株価暴落が起きた時、逃避資本の受け皿になるのは現物資産です。
そこで今回は、金、銀、プラチナを「存在量」と「需要」の観点から分析しました。
その中でも、最も経済不況に強いのが金でした。
なぜなら経済不況に伴う工業需要の落ち込みに対して、工業需要が21%しかない金は、最もダメージが少ないと思われたためです。
一方、銀の工業需要75%、プラチナの工業需要61%は、金に比べると好ましい選択肢ではないことを示しています。

結論として、経済不況に対する有望なリスクヘッジは、金一択とみて間違いないでしょう。