カップ麺を食べた後に、謎の頭痛が起きて困ったことはありませんか?
本記事では、カップ麺の摂取後に発生しがちな頭痛の原因と対処法について解説します。
1. カップ麺を食べた後に起こる頭痛の原因
カップ麺を食べた後に起こる頭痛の原因として、グルタミン酸とナトリウム(塩)の2つを紹介します。カップ麺の摂取後に起こる頭痛の原因① グルタミン酸ナトリウム説
1960年代のアメリカで、アジア料理を食べた後に頭痛や体調不良を訴える人が続出し、「中華料理症候群」と呼ばれる社会問題に発展したことがあります。この事件で槍玉に挙げられたのが「グルタミン酸ナトリウム」です。
グルタミン酸ナトリウムは、5つの味覚のうち「うま味」を司るグルタミン酸(アミノ酸)にナトリウムを添加した物質です。
うま味の主成分であるグルタミン酸には酸味もあり水に溶けにくいという性質を持ちます。
この辺りの不都合を調整するために、1907年に日本の池田菊苗によってナトリウムが添加され調味料としてのグルタミン酸ナトリウムが完成しました。
グルタミン酸とナトリウムの結合は水に漬けるとすぐに分解されるほど緩やかで、摂取後すぐに体内でグルタミン酸とナトリウムに分解されます。
このうちグルタミン酸は、脳内で興奮性の神経伝達物質として働くアミノ酸です。
記憶に欠かせない役割を果たすアミノ酸ですが、過剰量を摂取すると、脳のグルタミン酸受容体が過剰に満たされ異常興奮を誘発します。
それが、頭痛や発汗、吐き気、疲労感、めまいといった健康不良から、さらには統合失調症や自閉症を引き起こすという仮説にまで発展し「中華料理店症候群」と呼ばれる病理が誕生したのです。
騒動から50年が経過した今日、アメリカ合衆国のFDA(Food and Drug Administration)はグルタミン酸ナトリウムに対して「適量なら無害」とする承認を下しています。
そもそも、血中のグルタミン酸ナトリウムは血液脳関門の働きによって脳の入口の部分で遮断されます。
摂取したグルタミン酸が脳に及べば神経毒として作用しかねませんが、閾値の範囲内であれば、脳まで届くことなく排出されるのです。
ただし1日3グラムの閾値を超えた場合は、「中華料理店症候群」に代表されるような健康被害が懸念されるとされています。
グルタミン酸ナトリウムの恐ろしいところは、味覚から「摂りすぎ」を検知できないことです。
塩や砂糖は、摂取量が増えすぎると、「塩辛すぎ」や「甘すぎ」といった過剰を味覚が感じとれます。
しかし、グルタミン酸ナトリウムは、摂取量が一定値を超えると味覚が飽和状態になります。
飽和状態に陥った味覚は、どれだけ摂取しても「同じような味」として知覚するので、ジャンクフードや飲食店の「入れすぎ」に気づけません。
知らないうちに1日3グラムの制限を超えてしまうことも起こりえるため、摂取量を意識的なコントロール下に置く心がけが大事です。
筆者の場合は、カップ麺1杯だけなら症状は出ませんが、2杯食べた翌日はまず頭痛を避けられないので、「カップ麺は1日1杯」というルールを守っています。
カップ麺の摂取後に起こる頭痛の原因② 塩分説?
「グルタミン酸ナトリウム」を構成する「ナトリウム」は、頭痛症状の直接的な原因ではありません。たしかに、血中ナトリウム濃度の上昇は高血圧を引き起こします。
濃くなった血中ナトリウムを薄めるために細胞から水分が流出し、増大した血液を循環させるために、心臓のポンプ機能を強化しなければならないからです。
高血圧に陥った血管は拡張するので、これが脳血管に及べば脳神経を圧迫して頭痛を引き起こす危険性は十分考えられます。
しかし、脳には血流を適正状態に維持する機構が備わっています。
血中ナトリウム濃度が多少濃くなったところで脳の血流に影響を及ぼすことはありません。
健康人であれば、よほど多量に摂取しない限り、ナトリウムが頭痛の原因となることはないでしょう。
もちろん、ナトリウムの過剰摂取が、高血圧によるめまい、痛痒感、肩こり、動悸、吐き気といった頭痛以外の症状を引き起こす可能性は考えられます。
塩分の摂取量の目安
厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2015年版)によると、塩分の適切な摂取量は、8g/日未満(12歳〜)。一方、WHO(世界保健機関)が掲げる目標値は5g/日未満です。
日本の基準が、WHOの基準よりも高い理由は、塩分量の多い伝統食(梅干し、魚の塩漬けなど)が好まれる点が考えられます。
塩分量の多い料理を好む日本人は、普通の食生活を送っていても塩分過多になりがちです。
したがって、摂取基準も若干高めの数値に設定してあるのだと考えられます。
そのような配慮にも関わらず、日本人男性(20才以上)の食塩摂取量の平均値はおおむね11gを上回ります。
(「成人の平均食塩摂取量は1日あたり男性11グラム・女性9グラム」)
この数値は、日本の摂取基準に比べて+3g、WHO策定の摂取基準に比べて+6gの過剰です。
特にWHO策定の5gとは2倍以上の開きがあることが示されています。
カップ麺に含まれる塩分は何グラム?
では、問題のカップ麺に含有する塩分の量は、何gなのでしょうか?実際に、スーパーで調べてみました。
1日の適切な塩分摂取量は8gでした。
これを超えると高血圧を招く恐れがある中で、カップ麺に含まれる食塩の量は、g。
カップ麺1つでWHOの摂取基準量である5gを超えてしまいます。
このことからも、カップ麺が、いかに塩分濃度の高い食べ物であるか分かると思います。
2. カップ麺の摂取後に起こる頭痛の解消方法
2-1. 水分摂取を心がける
カップ麺を食べた後に起こる頭痛は、グルタミン酸の過剰摂取が原因です。グルタミン酸はアミノ酸ですから、不必分は尿と一緒に排出されます。
つまり、利尿を意識的に促すことが排出をコントロールする上で効果的です。
したがって、最も効果的な行動は、水分補給です。
グルタミン酸だけでなく、余分なナトリウムも一緒に排出してくれるので一石二鳥です。
2リットルペットボトルの水を大量に飲んで利尿を促しましょう。
2-2. カップ麺のスープは捨てる
グルタミン酸ナトリウムの摂取量を減らす最も手っ取り早い方法は、カップ麺のスープを捨てることです。食塩の場合、麺とスープで含有量はそれぞれGのようです。
つまり、汁を捨てれば、カップ麺に含まれるg~gもの食塩を減らすことができます。
(もちろん、麺に付着するので完全には0には減らせませんが。)
グルタミン酸ナトリウムも同様に、スープに含まれる分をカットすれば、カップ麺一食あたりの摂取量を減らすことができます。
「中華料理店症候群」を防ぎたい人は、カップ麺の汁は捨てるように心がけましょう。
2-3. カップ麺を食べる前にビタミンB6を摂取する
ビタミンB6の摂取が、グルタミン酸による頭痛の予防になります。ビタミンB6は、アミノ酸の分解反応を促す補酵素の役割を持ちます。
グルタミン酸はアミノ酸の一種なので、ビタミンB6の摂取によって分解能力を高めれば、消費の速度を早めることができます。
ビタミンB6は、かつお、まぐろなどの魚類、レバー、バナナなどから摂取できるビタミンです。
水溶性で失われやすく、生活習慣によっては厚生労働省の示す推奨量を下回りがちです。
摂取量に自信がないときは、サプリメントで補いましょう。
2-4. ミネラルを摂取してナトリウムを排出する
上昇した血中ナトリウムを排出する上で有効な方法が、カリウム、マグネシウム、リン、カルシウムといったミネラルを摂取する事です。特にカリウムは、ナトリウムと共に体内の浸透圧バランスの調整を司り、排尿時にカリウムと同量のナトリウム を排出してくれます。
カリウムは、野菜や果物、いも類や海藻などに豊富に含まれているので、普通の食生活を送っていれば、まず欠乏することはありません。
それでも塩分過多の不安があるときは、野菜、果実類を意識的に多く摂るようにすると、効率よく排出できるでしょう。
3. カップ麺を摂取した後に起こる頭痛の原因まとめ
カップ麺を食べた後に起こりがちな頭痛は、グルタミン酸の過剰が直接の原因です。脳内で興奮性の神経伝達物質として働くグルタミン酸が過剰になることで(3g/日)、脳の異常興奮を起こしてしまうからです。
また、グルタミン酸と結合しているナトリウムも高血圧を引き起こし、様々な健康不良を引き起こします。
特に、グルタミン酸ナトリウムは味覚を混乱させるため、味覚が「同じ味」と感じて過剰に気づきにくいことに注意しましょう。
知らないうちに過剰量を摂取しがちなので対策が必要です。
まず、カップ麺を過剰に摂取することを避けるべきです。
そして、できるならグルタミン酸ナトリウムを多く含むスープを捨てましょう。
それでも過剰摂取が気になるときは、アミノ酸の分解を促すビタミンB6、ナトリウムを輩出してくれるミネラル(カリウム、マグネシウム、リン)の摂取が効果的です。
◯ミネラル・・・野菜や果実
また、症状が出たときは意識的に水分補給を行い、排尿によるデトックスを促すことが大事です。