並外れた物事に対して「〜もびっくり」という表現を使ったことはないですか?
あの表現は、とある昭和のCMに用いられたフレーズに由来しています。
本記事では、該当CMの紹介に加え、「インド人もびっくり」の使用例、また使用方法まで解説します。
1 「インド人もびっくり」の出元は、1964年放映のエスビー食品のカレーCM
「インド人もびっくり」は、1964年のエスビー食品のカレーCMで使用されたフレーズが出元
1964年といえば、東京オリンピックが行われた高度経済成長期の真っ只中という時代です。
この時期は、経済成長とともに世帯の家計も潤い、白黒テレビの普及率が右肩上がりに伸びていました。
この時期に、番組の間で盛んに放送されたのが、「5秒CM」と呼ばれる短期CMです。
その5秒CMの中のひとつに、「ヱスビー(エスビー、S&B)食品」の商品である「ヱスビーカレー新型」のCMがありました。
これが、今日なお使用される「インド人もびっくり」の出元です。
このCMに、芦屋雁之助さんが役者として登場します。
(「インド人もびっくり」の元祖的CM)
ヱスビーカレーを口にしたインド人扮する芦屋雁之助さんが、おどけた表情で両手足を広げを広げながら画面上部に飛び上がった後、「インド人もびっくり」という掛け声と共に商標が表示されるプロットになっています。
5秒間の描写ながら、シンプルかつコミカルにメッセージが伝わってくる構成ですね。
「インド人もびっくり」とやや表現は曖昧ですが、描写から読み取れるメッセージには2つの説が考えられるようです。
何事にも動じないインド人が驚くほど、カレーのクオリティが並外れている
どちらにせよ、インド人を驚かせるほどヱスビーカレーが旨いというわけですね。
「インド人もびっくり」というセンセーショナルなフレーズが流行した
このCMから一人歩きして流行し始めたのが「インド人もびっくり」というフレーズです。
「インド人もびっくり」というキャッチフレーズは、端的ながら高いメッセージの伝播性を持ち、かつコミカルで面白い特徴を持ちます。
そのことから、庶民の会話でも、並外れた物事などを表現するときに好んで使われるようになったようです。
張本勲氏など、「インド人もびっくり」を使う人は今日なお少なくない
2018年の日本プロ野球にて、4月29日の段階で、打撃成績の実績に乏しい小林誠司捕手が、一時的ながら首位打者に躍り出たことがありました。打撃の得意でない小林捕手の活躍について、サンデーモーニングのコメンテーターを務める張本勲氏が「インド人もびっくり」という表現を用いたようです。
「実力を評価していなかった小林捕手の活躍に大変驚いた」というニュアンスなのでしょう。
しかし、インドでは野球はほとんど馴染みのないスポーツなので、「インド人もびっくり」の本来的な意味からは外れているように思えます。
これはおそらく、張本氏の世代の言葉である「インド人もびっくり」という表現が、深く考えることなく、それらしいニュアンスとして口から出てしまったのだと考えられます。
張本氏は1940年の生まれなので、1964年の時点で24歳です。
当時から頻繁に「インド人もびっくり」のフレーズを耳にし、また本人も使用してきた可能性が高いです。
2 「インド人もびっくり」の用例
「インド人もびっくり」のフレーズは、今日なお人口に膾炙している
リアルタイムでCMを目の当たりにした人でもない限り、「インド人もびっくり」の表現を50年以上前のカレーCMに結びつける人はいないでしょう。
しかし、時と共にCM自体は忘れ去られても、そのフレーズは庶民の間に残り続け、くだけた表現として親しまれ続けています。
放映から55年経過した現在でさえ(2019年)、そのフレーズが忘れ去られることはありません。
「インド人もびっくり」というフレーズは、ネットに溢れている
例えば、ネットで検索をかけると「アメリカ人もびっくり」「中国人もびっくり」「イギリス人もびっくり」・・といった「〜人もびっくり」系のワードがヒットします。その国民性が代表する性格を凌ぐほど、対象となる事物の特徴が並外れているといった場合に使われています。
さらに飛躍して、並外れた特定の個人を引き合いに出すことも多いようです。
例えば、ネットだけでも「ゴジラ松井秀喜もびっくり」「ガンジーもびっくり」といったワードがネットの記事名や看板・広告など、あちこちに散らばっています。
3 「インド人もびっくり」の使い方
「インド人もびっくり」は、用途の広い表現
「インド人もびっくり」の使い方は、インド人に限らず、その道のプロが驚くほど並外れているような特徴に対してなら、何にでも使うことができるようです。
「その道のプロを驚愕させるほど並外れた特徴」に対する表現なので、何もインド人に限定する必要はないのです。
例えば、先ほどの「ゴジラ松井秀喜もびっくり」の場合、メイントピックは松井秀喜氏ではなく、2018年に行われた星稜高校が大量得点をあげた試合(22-0)について使用されていました。
この試合で活躍した2人の選手によって7本の本塁打が生み出され、その打力を賞賛する目的で松井秀喜氏が引き合いに出されたようです。
試合で活躍した2選手の打力は、かつて日本を代表した熟練の長距離打者が驚くほど優れているという賞賛の表現ですね。
試しに「〜もびっくり」系の表現を作ってみました。
彼の才能を、現代プロ野球No.1の逸材である大谷翔平選手を使って例えるなら、「佐々木選手の才能は”大谷翔平もびっくり”」といえるわけです。
「インド人もびっくり」は、幅広い年齢層に通じる表現
「インド人もびっくり」という表現は、若い人の間では既に死語になっているかもしれません。しかし、端的かつコミカルで便利な表現なので、年上の人と話をするときなどに「”〜もびっくり”ですね!」などと使ってみると親近感を持たれるかもしれませんよ。
(ただし、民族差別を助長するとみなす人もいるので、くだけた場面に限定した方が無難です。)